【まごころ通信】 第30話 土地の神様のこと by小峰裕子

不動産の仕事をしていると、時々神様にご挨拶をする機会をいただくことがあります。地鎮祭もそのひとつです。「じちんさい」または「とこしづめのまつり」と読みます。

マンションやマイホームなど建物を建てる際に行われる儀式で、着工する前にご神職様をお呼びして祈祷してもらうのですが、施主さんや建築関係者が参列して工事の無事や安全を祈り、家の繁栄を祈願する儀式です。

なぜ地鎮祭を行うのか、理由はふたつあると思います。ひとつは「土地は神様のもので、神様から土地を借りるための儀式」という意味です。私たち人間は勝手に所有権だとか何だとか言って取引をしますが、神様にとっては身勝手ともいえる振る舞いなのです。なので「この土地を私は使わせていただきます。これからよろしくお願いします」と神様へのご報告と許しを得る必要があるのです。

もうひとつは「土地を浄め(清め)悪いものを封じ込める」と言う意味です。私たちは古来、都合が悪くなるととりあえず土に「埋める」ということをして来ました。つまり「土地」を掘り起こせば、悪いもの穢れたものがたくさん出てくると古代の人は考えたわけです。

地鎮祭は建築の場となるこの土地の霊を鎮めて穢れを浄め祓い、「禍」が永遠に及びませんようにという祈願です。他にも古井戸を埋めるときの「水神上祭」など、不動産業者のみならず建設業者などはとても大切にしています。それは

自然に対する作法だと思うのです。自然の理に逆らうと矛盾が生じます。私たちは「土地の神さま」に喜んで頂けるような仕事をしましょう。それにはまず「お天道さまが見てるよ」と心がけることです。