小峰 裕子

(株)大洋不動産

相続マインズ福岡

小峰 裕子

平成元年より不動産業に従事。不動産におけるすべての判断はオーナーご家族の幸せや将来設計に多大な影響を及ぼすことを実感する。1999年にCFP®資格取得、2000年にNPO法人相続アドバイザー協議会養成講座1期生として研修を受け、相続に強い不動産の専門家として不動産管理運営の相談業務を中心に、セミナー講師や不動産相続のサポート業務を行っている。大洋不動産常務取締役・相続マインズ福岡代表

この執筆者の過去のコラム一覧

2018/02/10

女性と相続

相続アドバイザー養成講座が開講しました。
全20講座、時間にして40時間です。「相続の勉強会なんて珍しくも何ともないよ」と、おっしゃるかもしれませんが、当講座は18年前わたしが東京まで毎週通い詰め、懸命に学んだ講座なのでした。

まさか福岡で開講するなんて、感無量の心地です。

相続手続のお手伝いをしながら

1期生として晴れて相続アドバイザーとなり、やがて口コミなどでご相談を受けるようになりました。問題解決に至ったその後もお付き合いが続く方もいます。早坂豊子さん(仮名 72歳)もそのおひとりでした。

1年前にご主人の信之さん(仮名)を亡くされれ、ご主人名義のご自宅の相続について相談を受けました。
お嬢様が3人いましたが仲が良く、同居の末娘の名義にしてあげたいという豊子さんの想いを姉たちに告げると、すぐに納得してくれました。
もめることもなく、ご自宅は末のお嬢様の名義となりました。

実は、早坂家の相続のお手伝いをしたのはこれが2度目でした。
初めてお目にかかったのは、信之さんの母、つまり義母の相続相談が最初でした。86歳でお亡くなりになった義母は30代後半で初婚、義父50歳半ばでの再婚という年の差婚でした。親戚中が後妻に厳しい家風で、とても苦労したそうです。
義父が亡くなると、財産のほとんどを先妻の長男が相続しました。ところが長男は仕事を辞めた上に外車やヨットを購入するなど贅沢三昧、義母にお金を無心することもあったと言います。
その義母がお亡くなりになりました。

突如として現れた遺産の話

遺品整理は先妻の息子夫婦が取り仕切っており、信之さんは遠慮もあって口を挟まないようにしていました。
そんな折、先妻の息子の代理を名乗る司法書士から、手紙が郵送されてきたのです。
「遺産を譲って欲しい」。
書かれていた内容に信之さんは戸惑いました。実は結婚前に働いて貯めていたお金を数千万円に増やし、定期預金にして大切に持っていたのです。
考えてもみなかった遺産の出現です。

義母の相続人は、信之さんひとりです。法律では後妻と先妻の子は「養子縁組」をしない限り、法律上の親子にはなりません。つまり、法律上の親子でないということは先妻の息子さんは今回の相続においては無関係なのですが、もらえると勘違いしていたようです。

信之さんは兄とも疎遠で、まして苦労した母親を思えば「譲ってくれ」など、とんでもないという気持ちです。
ただ、早坂さんご夫婦は共に「母がお世話になった」という気持ちだけはありました。
「自分には母の遺産をもらう理由があるのだろうか」と、信之さんだけでなく豊子さんも浮かない顔です。
法律と人の気持ちは同じ方向を向いているとは限りません。お二人の様子が正にそうでした。

相続を法律問題にしない

「法律で決められたとおり、取れるものは取りましょう」と、背中を押すのが相続を学んだ者として出すべき答えかもしれません。
ただ、家族内部に噴き出した財産の問題を法律で解決し、崩壊した家族をたくさん目にしてきました。
わたしは相続アドバイザーです。早坂さんから持ちかけられた話は「相続の相談」であって「法律(相続法)の相談」ではないのです。
「どうすれば相続を法律問題にしないで済むか」わたしが18年前に相続アドバイザー養成講座で教えて頂き、以来、挑み続けているのはこれです。
お二人からゆっくりお話を伺った後、「少し時間をかけて考えてみてはいかがですか」そうアドバイスしてお帰り頂きました。

3ヶ月がたち、信之さんが出した答えは「1円もいらない」というものでした。
信之さんの横で、豊子さんはにこにこ微笑んでいらっしゃいます。
女性は娘、嫁、妻、母と計6回相続を体験すると言われています。もし、円満相続の糸というのがあるのなら、切るのも繋ぐのも女性の力かもしれないと考えてみたりします。
「母」としての相続の場に当の本人である豊子さんはいませんが、お嬢様達の心の中には、豊子さん自身の相続体験がしっかり受け継がれていくことでしょう。

優しさとは何か、強さとはどうあるべきか。
わたしは相続を学びましたと言いつつも、実は相続を通じていつも人の素晴らしさを教えてもらっているのでした。

NPO法人 相続アドバイザー協議会
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