ツアーディレクター(添乗員)

ツーリストエキスパーツ

寺田 多実子

1961年生まれの博多っ子1987年より近畿日本ツーリストの国内・海外旅行のツアーディレクターとして世界中を飛び回る。渡航歴は400回を超え、訪れた国は約70ヶ国。目指しているのは、他を喜ばせる人になること。趣味は描画と写真撮影で「どこでもスマイル」と「とっておき」の二冊の写真集を自費出版した。還暦を機にシニアのチアダンスと好きな曲をピアノで弾くことに挑戦中。地元でタレントもしている。好きな言葉は創意工夫と笑顔は世界の共通語。

この執筆者の過去のコラム一覧

2023/06/10

祭り、通常開催!2023

「今年の○○祭りは○年ぶりの通常開催となります」と、最近ニュースで耳にすることが多くなりました。
2020年~新型コロナウイルスの影響で日本だけでなく世界中のたくさんの祭りが中止になり、2021年、2022年も中止または規模縮小が続きました。
私のふるさと、博多を代表する祭り「博多どんたく」と「博多祇園山笠」が2年連続中止になった時には気持ちが凹みました・・・

祭りで季節を感じてきた私にとって、博多どんたくの歌「♪ぼんちかわいや、ねんねしな~♪」に合わせて叩くしゃもじの音が聞こえないと5月の連休じゃないような、さらには7月15日の早朝に櫛田神社の境内で「祝いめでた」を鳥肌立てながら唱和しないと夏が来ないような気がしたのです。
このコラムをご覧の皆さんにとっても、それぞれ胸が高鳴る祭りがあることでしょう。

では、そもそも祭りとは?
改めて考えたことがない方も、今回は一緒に探っていきましょう。

祭りの起源は神様への感謝

古来より日本人は森羅万象すべてに宿る八百万(やおよろず)の神様を崇拝してきました。
「祭り」の語源は「祀る」で神様に供え物をするという意味があり、神様に祈り感謝することが祭りの目的です。

日本各地には土着の神様、神道、仏教など様々な信仰から生まれた祭事・神事が今も大切に守り伝えられています。
また祭事・神事などの非日常を「ハレ」の日、普段通りの日常を「ケ」の日と呼び、この「ハレとケ」の両方が暮らしにメリハリをつけ、地域共同体の基盤となり人々の心のよりどころとなっています。
そして祭りに参加することによって共に思いを分かち合ってきました。

神輿(みこし)や山車(だし)は神様の乗りもの

神様がお乗りになった神輿や山車が地域内を回り、人々は家内安全・疫病退散五穀豊穣などを祈ります。
おもてなしの意味で山車には花や人形が飾られることが多いようです。
山車もその地方・祭りによって呼び名が異なります。
2016年、山車が登場する全国33の祭り「山・鉾・屋台行事」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。
うれしいことに博多祇園山笠も含まれています。

世界各国の祭りも宗教により様々なスタイルで

カトリックの祭り・カーニバル「謝肉祭」の由来は、キリストの復活祭(イースター)前に40日間の断食(四旬節)があり、その前に思いきりごちそうを食べておこう!というのが始まりです。
ラテン語で謝肉祭は「カルネ(肉)+バル(去る)」で、つまり「お肉よ、さらばじゃ!」ってことですね。


会場は一晩中熱気ムンムン    山車の高さは10mほど

世界最大級のサンバの祭典、ブラジル「リオのカーニバル」

今年は2月17日~20日の4日間、通常開催されました。
開催日は陰暦を使用しているため毎年変わり、だいたい2月~3月初めの金曜日~火曜日の朝方までです。
この時期、南半球にあるブラジルは夏。しかも雨季に当たるのでスコール対策のカッパは必須です。

(随分前ですが)幸運にも添乗で行くことになり、一生に一度は生で見たかったので張り切って出かけました。
地球の反対側にあるブラジルまで福岡を出発して飛行機を何度も乗り継ぎ30時間以上かかりましたが、街中が熱気に包まれ、カリオカ(リオの地元っ子)はもちろん世界各国から来たおよそ100万人の観光客で大賑わいの様子に圧倒されました。

 

リオのカーニバル最大の見どころは、選りすぐりのスペシャルグループ12チームによるパレード・コンテストです。
日曜日と月曜日の2日間、各日6チームずつに分かれて夜9時頃からスタートして翌朝まで一晩中パレードは続きます。
会場は「サンボドロモ」で、ここは長さ700mのステージ(大通り)の両側に約8万人収容の観覧席があるメイン会場です。
各チーム総勢2,500~4,000人、打楽器隊は200人以上、巨大な山車はおよそ10台、制限時間は1チーム80分と決まっています。
一年の集大成を競い合うコンテストの採点基準は全体の調和(歌・踊り・衣装・演奏・山車と装飾)、テーマに沿ったストーリー性など10項目ほど。
どのチームも1年かけて、この日のために準備に情熱をそそぐのです。

とにもかくにもパレードの規模の大きさと派手さと迫力に度肝を抜かれます。
サンバの強烈なツービートのリズムに合わせ、弾けるように踊るピチピチした女性たちや、極彩色の華麗な衣装の男女が歌いながら踊りながら列をなして流れていく様子に、まるで観客もパレードに参加しているように熱くなり、会場全体の熱気も最高潮に達します。

 
「私たちは、この日のために生きている!」
この一言がピッタリの「一年分のエネルギーが爆発する祭り」と言えるでしょう。

そしてカーニバルが終わると、まさに「つわものどもがゆめのあと」。
熱く盛り上がった後の静けさは、山笠が終わった後の博多の町の静けさを思わせました。

歴史の中で育まれてきた伝統行事や祭りが、時代に合わせ変化しながら後世に継承される大切さ。
コロナ渦で祭りの中止という経験を通して、私たちは多くを学んだと感じます。
色々あって今がある…地元や各地の祭りを、今年はより深く味わってみませんか。

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