ツアーディレクター(添乗員)

株式会社近鉄HRパートナーズ

寺田 多実子

1961年生まれの博多っ子1987年より近畿日本ツーリストの国内・海外旅行のツアーディレクターとして世界中を飛び回る。渡航歴は450回を超え、訪れた国は約70ヶ国。目指しているのは、他を喜ばせる人になること。趣味は描画と写真撮影で「どこでもスマイル」と「とっておき」の二冊の写真集を自費出版した。還暦を機にシニアのチアダンスと好きな曲をピアノで弾くことに挑戦中。地元でタレントもしている。好きな言葉は創意工夫と笑顔は世界の共通語。

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2025/03/10

酸素がほしい、酸素をください

いつも酸素を十分に吸って当たり前に呼吸をしている私たち。
もし体が必要とするだけの酸素を取り込めない状態(酸欠)になったら、いったいどうなるでしょうか…想像してごらん。

高山病(高度障害)は全身症状のこと

標高3,000mを越えると気圧が低下するため酸素の濃度が薄くなり、酸欠が原因で頭痛、吐き気、めまいがすることがあります。
このような症状を総称して最近は高度障害と言うらしい。高地への急な移動で、体が低酸素状態に適応するのに十分な時間がない場合に発症します。

私は登山ツアーに添乗した経験はありませんが、通常の観光ツアーで高地へ数回行きました。
中国の黄龍(3,100~3,500m)、チベットのラサ(3,650m)、ペルーのクスコ(3,400m)やチチカカ湖(3,800m)など。

 黄龍の乳白色の石灰華段

 チチカカ湖のトトラ葦(あし)で作られた浮島

標高の低い所から高い所へ、ゆっくり時間をかけて移動するのが理想ですが、時間的制約もあり飛行機を利用して急に高地に着くことになります。
それゆえ体が高所順応できずに発症します。

高地で過ごす注意事項は、ゆっくり動く、適度な休憩、深呼吸、水分補給、アルコールを控える、など。クスコ(3,400m)に宿泊して苦しい思いをしても、車と列車を利用してマチュピチュ遺跡(2,400m)に行けば、低地に降りるので一時的に症状が軽くなることもあります。

 夜のアルマス広場(クスコ)
 アンデスの空中都市マチュピチュ遺跡

チベットの古都ラサから、さらに高い峠を越えて

高地のホテルで眠っていると苦しくなり1時間おきに目が覚め、金魚のように口をパクパクさせていました。
ラサのポタラ宮殿を見学した時は、ホテルから借りた酸素袋(枕ほどの大きさで、貸出番号が書いてある)を抱え、苦しくなるとチューブから酸素を吸入しヒーヒー言いながら宮殿の階段を上り下りしました。
あいにくその姿を写した写真がないので、私がイラストを描いて合成したイメージ写真をご覧ください。

 酸素袋をかかえてポタラ宮殿観光

今は手軽に持ち運べる携帯用の酸素ボンベがあるので便利になりました。
他に多発したことはツアー参加者の嘔吐で、飛行機内から持ってきたエチケット袋が大活躍しました。これらの教訓から私は今でもエチケット袋をバッグに必ず入れています。

そういう訳で添乗員が発症しては仕事ができないので何とか乗り切ってきました。
さすがにチベットのカロ峠(5,000m)をバスで越えた時は気が遠のいていたものの、大自然の中で咲くメコノプシス(ヒマラヤの青いケシ)を見た時は感動しました。

高地だけじゃなく、低地でもありうる

多分、酸欠という点で共通しているのでしょうか、パリで同じような症状になったことがあります。
私は福岡とパリの二重生活をしているので、パリ滞在中に公共交通機関を頻繁に利用します。

公共交通機関はストライキもよく起こり、間引き運行も当たり前。
朝と夕方の通勤時間帯しか列車が運行しない時がありました。
乗車率200%以上の超満員列車に乗り込んでしまい、映画に出てくるようなギュウギュウに詰め込まれた劣悪な車内環境で25分間耐えました。
人と人の間のわずかな隙間から空気を吸い、ここで死んではならぬと自分に強く言い聞かせ、目的の駅まで耐えきった!タミコよ、よく頑張った!…
ところが帰宅後、頭痛と吐き気とめまいグルグル、「酸素がほしい、酸素をください」の状態になり、高度障害で苦しんでいたツアー参加者の気持ちが今更ながらよく解りました。

もうひとつ、先日パリのカフェでひとりで休憩していたところ床下から煙がモクモク、あっという間に店内は白い煙に包まれてしまいました。
床下には厨房があり、そこから地上に煙が上がってきたようです。

何が起こったのか店のスタッフに尋ねたところ「火事だけど問題ない」と言うので私は支払いを済ませ、すぐさまその場を離れました。
他の来店客はそのまま座って煙の中で食事していたけれど、その後どうなったかなぁ。
どうやら消防車が来る前に火は消し止められ、小火(ぼや)で済んだようです。

それから1時間後、吸い込んだ煙のせいか私は頭痛と吐き気とめまいグルグル、またもや「酸素が欲しい、酸素をください」の状態になり、酸素のあり難さが身に染みた出来事でした。

 民族衣装の子供たちとリャマと私(クスコ)
 「カミソリの刃一枚通さない」と言われる石壁のある通り(クスコ)

もうすぐ、年に一度のチアダンス発表会

話は変わって、4年前に始めたシニアのチアダンスを今も続けています。
発表会や見てもらう機会があると気分も上がりますが、張り切り過ぎに注意しないとダンスでも酸欠になるそうなので、ほどほどに踊るように心がけようっと♪
念のため酸素ボンベを用意しておこうかな。

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