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久保 逸郎

老後のお金の不安を解消する、ライフプランと資産運用&資産管理の専門家
「90歳まで安心のライフプラン」を合言葉にして、豊かな人生の実現に向けたライフプラン作りの支援を行っている。
独立から約15年にわたり相談業務を中心に実務派ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて年間100回近い講演や、マネー雑誌やコラム等の原稿執筆を行うなど幅広く活動中。

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2017/10/10

積立NISAスタート!個人型確定拠出年金(イデコ)とどちらを使えばいいの?

老後のお金の不安解消アドバイザーの久保逸郎です。
最近は暑さがだいぶ和らいできて、朝晩などは肌寒く感じられるようになってきましたね。

昨年の今頃は2017年1月から公務員や専業主婦なども個人型確定拠出年金(イデコ)に加入できるようになるということで、金融機関などでイデコの説明をして回る機会が多かったのですが、それが今年は2018年1月から始まる積立NISAに変わっています。

このように政府が税制優遇のある制度を次々と打ち出してくる背景には、公的年金制度だけでは老後資金を賄うには不十分なので、なんとか国民の自助努力での老後資金準備を促そうという政府の狙いがあります。
情報感度が高い人は早速積立NISAに関する情報を集められているようですが、その中でよく聞かれるのが「イデコと積立NISAのどちらを使ったほうがいいの?」ということです。

そのため今回はイデコと積立NISAの制度の違いと、その使い方のポイントについて書こうと思います。

イデコは原則60歳になるまで引き出せない

まず、イデコの大きな特徴としては下記の3点が挙げられます。

  1. 掛金が全額所得控除の対象
  2. 運用益が非課税で再投資される
  3. 受取時の税制優遇措置(一時金での受取は「退職所得控除」、年金形式での受取は「公的年金等控除」の対象)

掛金の全額所得控除については課税の繰り延べでしかないという論点もありますが、制度を上手に活用すれば税負担の軽減に繋げることは可能でしょう。
しかし、原則60歳まで引き出すことができないという点を甘く考えてはいけません。

奨学金を借りている学生が過半数を超えているという現実を踏まえて、しっかりとライフプランを作って将来に向けた資金計画を立て、60歳までに引き出すことができなくても資金的に問題がないことを確認してからイデコを活用するようにしたいものです。

また、運営管理機関等に支払うコスト負担についても注意をしないといけません。
例えば福岡銀行でイデコを使って積立を行う場合、毎月の管理・事務手数料は599円(税込)かかりますが、ネット証券等を使えばそのコストは3分の1以下に抑えることができます。

このように金融機関の選択によってコストに大きな差がありますので、できるだけ負担の少ない金融機関を選びたいものです。

教育資金に不安がある場合はイデコよりもつみたてNISA

積立NISAは来年(2018年1月)から始まります。

年間の非課税投資枠は40万円で、すでに始まっている通常のNISA(120万)やジュニアNISA(80万)と比べると小さいですが、最長20年の非課税期間があるので、現役世代がこつこつと老後に向けた資産形成を行うことに適した制度であるといえます。
イデコのように掛金の所得控除を受けられるわけではありませんが、運用益が非課税である点は同じ。
積立期間中に払い出すことができるので、ライフプランで子どもの教育資金準備等に不安がある場合は、イデコよりも積立NISAを優先的に活用したほうがいいかもしれませんね。

積立NISAのデメリットは、同制度で購入できる商品が一定の条件等を満たす投資信託等に限られることです。
8月末の金融庁の発表では、積立NISAの条件を満たす商品は120本しかないそうで、今後の条件見直しが望まれているところです。

20年の長期間の積立ができるにもかかわらず、新興国株式などの成長力の高い分野への投資の選択肢が限られそうなことは、個人的にとても残念に感じています。

イデコとつみたてNISAの併用は可能

ちなみにNISAと積立NISAの併用はできませんが、イデコと積立NISAの併用は可能です。
例えば企業年金等に加入していない会社員が毎月5万円を積み立てるような場合、イデコで毎月23000円、積立NISAで毎月27000円ずつ積み立てていくといったような形で併用ができます。

その時に途中で払い出すことができる積立NISAでは、値動きが比較的小さい投資対象を選択して不意の支出に備えておき、その一方で、原則60歳まで引き出すことができないイデコでは、値動きは大きいものの高成長が見込まれる新興国株式等を積極的に組み入れながら投資を行うなど、それぞれの制度の特徴を踏まえて活用を行うとよいでしょう。

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