2025/04/10
養子の子は代襲相続人になれるのか?
Q 私Aは父Xと母と3人で暮らしておりましたが、その後、両親はYという老齢の女性の養子となり、その後に弟のBが生まれ、私と弟と両親は父の養母である祖母Yと5人で暮らしておりました。
私たち5人が暮らしていた自宅の土地建物は、祖母Yの所有でした。
その後、母が亡くなりましたが、弟のBも交通事故で若くして子もないまま無くなり、父と私と祖母の3人で暮らしておりました。
その後、父もウィルス感染により亡くなってしまい、その後は、私一人で祖母Yの面倒を見てきました。
祖母とは20年以上一緒に暮らしてきましたが、先日、祖母が亡くなりました。
そうしたところ、祖母の兄弟だという高齢の男性と女性が自宅を訪ねてきて、祖母が亡くなったので、祖母と私が暮らしてきた自宅の土地建物は自分たちが相続したので、売却したい。
ついては、私に自宅から速やかに出て行ってほしいと言われました。
私は、祖母の養子である父の子です。
父は祖母の養子ですから、祖母の遺産の相続権があります。
その父の子である私は、祖母の財産である自宅の相続権は認められないのでしょうか。

1 民法の定める相続の原則
まず、民法では、ある方が亡くなられた場合に、一体、誰が相続人となると定められているのか、を確認しておきましょう。
(1)相続人の原則的規定
民法887条1項は、「被相続人の子は、相続人となる。」と定めています。
相続人となるのは「被相続人の子」ですから、祖母の実子は相続人となります。
また祖母の養子も「被相続人の子」ですから、父親のX氏も、本来ならば祖母の相続人としての権利を行使できるはずですが、祖母が死亡した時点では既に死亡していますで、亡Xが相続人としての権利を行使することができません(死者は権利を行使することができませんから。)。
それでは、被相続人祖母の養子である父Xが、祖母より先に死亡していた場合には、誰が祖母の相続人となるのでしょうか。
(2)子が被相続人よりも先に死亡していた場合の民法の定め
民法887条2項は「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき…は、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りではない。」と定めています。
この規定によると、「被相続人の子」である父Xが、祖母Yよりも先に亡くなっていた場合は、父Xの子が父を代襲して相続人となる、とされています。
A氏は父Xの子ですから、A氏が祖母の代襲相続人となってもおかしくないように見えます。
代襲相続とは、本来の法定相続人(本件では父X)が死亡等の事由によって遺産を相続できなかった場合、代わりに「本来の法定相続人の子(代襲相続人)」が遺産を相続する制度のことです。

2 A氏は祖母の代襲相続人であるといえるか
一見するとA氏は祖母の相続人である父Xの子ですから、長年同居してきた祖母の代襲相続人であるようにみえますが、問題は民法887条2項の最後に「ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りではない。」と定められていることです。
(1)被相続人の直系卑属
「被相続人の直系卑属」とは、子や孫、ひ孫などのように、自分より後の世代で、「直系」(血筋が一直線につながること)となる、直通する系統の親族のことをいいます。
それでは、祖母とA氏は直系卑属の関係にあるでしょうか。
問題は祖母の相続人である父Xが養子であることです。
父Xは、祖母の養子ですから、「被相続人の子」であることは間違いありませんが、民法第727条は、「養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。」と定めています。
しかし、父Xと祖母Yが養子縁組をする前にA氏は生まれています。
つまり、祖母との関係では、祖母Yと父Xが養子縁組をした日から「血族間におけるのと同一の親族関係(これを「法定血族」といいます。)」が生じますので、養子縁組をする前に既に生まれていたA氏と祖母との間には血族関係が生じません。
これに対し、弟のB氏は養子縁組の後に生まれていますから、Bは祖母と父が血族関係を生じた後に生まれていることになり、Bは祖母Yの直系卑属になります。

(2)養子の子は、祖母との養子縁組の前に生まれたか、後に生まれたかで結論が異なる。
つまり、父Xと祖母Yとの養子縁組前に生まれたA氏は、祖母とは直系卑属の関係にはありませんが、父Xと祖母Yとの養子縁組の後に生まれた弟のB氏は、祖母とは直系卑属の関係にあるので、弟のB氏は生きていれば代襲相続人であったはずです。
従って、弟のBが生きていれば、Bは祖母の代襲相続人(第一順位)ですから、祖母の兄弟(第三順位)は祖母の相続人ではなく、自宅の明渡を求められることもなかったはずです。
しかし、祖母が死亡した時点では、弟のB氏は既に亡くなっていますので、結局、代襲相続人はいないことになり、祖母の第一順位の子または直系卑属がいませんので、第三順位の被相続人の兄弟姉妹に相続権があるということになります。
Q 私Aは父Xと母と3人で暮らしておりましたが、その後、両親はYという老齢の女性の養子となり、その後に弟のBが生まれ、私と弟と両親は父の養母である祖母Yと5人で暮らしておりました。
私たち5人が暮らしていた自宅の土地建物は、祖母Yの所有でした。
その後、母が亡くなりましたが、弟のBも交通事故で若くして子もないまま無くなり、父と私と祖母の3人で暮らしておりました。
その後、父もウィルス感染により亡くなってしまい、その後は、私一人で祖母Yの面倒を見てきました。
祖母とは20年以上一緒に暮らしてきましたが、先日、祖母が亡くなりました。
そうしたところ、祖母の兄弟だという高齢の男性と女性が自宅を訪ねてきて、祖母が亡くなったので、祖母と私が暮らしてきた自宅の土地建物は自分たちが相続したので、売却したい。
ついては、私に自宅から速やかに出て行ってほしいと言われました。
私は、祖母の養子である父の子です。
父は祖母の養子ですから、祖母の遺産の相続権があります。
その父の子である私は、祖母の財産である自宅の相続権は認められないのでしょうか。
1 民法の定める相続の原則
まず、民法では、ある方が亡くなられた場合に、一体、誰が相続人となると定められているのか、を確認しておきましょう。
(1)相続人の原則的規定
民法887条1項は、「被相続人の子は、相続人となる。」と定めています。
相続人となるのは「被相続人の子」ですから、祖母の実子は相続人となります。
また祖母の養子も「被相続人の子」ですから、父親のX氏も、本来ならば祖母の相続人としての権利を行使できるはずですが、祖母が死亡した時点では既に死亡していますで、亡Xが相続人としての権利を行使することができません(死者は権利を行使することができませんから。)。
それでは、被相続人祖母の養子である父Xが、祖母より先に死亡していた場合には、誰が祖母の相続人となるのでしょうか。
(2)子が被相続人よりも先に死亡していた場合の民法の定め
民法887条2項は「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき…は、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りではない。」と定めています。
この規定によると、「被相続人の子」である父Xが、祖母Yよりも先に亡くなっていた場合は、父Xの子が父を代襲して相続人となる、とされています。
A氏は父Xの子ですから、A氏が祖母の代襲相続人となってもおかしくないように見えます。
代襲相続とは、本来の法定相続人(本件では父X)が死亡等の事由によって遺産を相続できなかった場合、代わりに「本来の法定相続人の子(代襲相続人)」が遺産を相続する制度のことです。
2 A氏は祖母の代襲相続人であるといえるか
一見するとA氏は祖母の相続人である父Xの子ですから、長年同居してきた祖母の代襲相続人であるようにみえますが、問題は民法887条2項の最後に「ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りではない。」と定められていることです。
(1)被相続人の直系卑属
「被相続人の直系卑属」とは、子や孫、ひ孫などのように、自分より後の世代で、「直系」(血筋が一直線につながること)となる、直通する系統の親族のことをいいます。
それでは、祖母とA氏は直系卑属の関係にあるでしょうか。
問題は祖母の相続人である父Xが養子であることです。
父Xは、祖母の養子ですから、「被相続人の子」であることは間違いありませんが、民法第727条は、「養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。」と定めています。
しかし、父Xと祖母Yが養子縁組をする前にA氏は生まれています。
つまり、祖母との関係では、祖母Yと父Xが養子縁組をした日から「血族間におけるのと同一の親族関係(これを「法定血族」といいます。)」が生じますので、養子縁組をする前に既に生まれていたA氏と祖母との間には血族関係が生じません。
これに対し、弟のB氏は養子縁組の後に生まれていますから、Bは祖母と父が血族関係を生じた後に生まれていることになり、Bは祖母Yの直系卑属になります。
(2)養子の子は、祖母との養子縁組の前に生まれたか、後に生まれたかで結論が異なる。
つまり、父Xと祖母Yとの養子縁組前に生まれたA氏は、祖母とは直系卑属の関係にはありませんが、父Xと祖母Yとの養子縁組の後に生まれた弟のB氏は、祖母とは直系卑属の関係にあるので、弟のB氏は生きていれば代襲相続人であったはずです。
従って、弟のBが生きていれば、Bは祖母の代襲相続人(第一順位)ですから、祖母の兄弟(第三順位)は祖母の相続人ではなく、自宅の明渡を求められることもなかったはずです。
しかし、祖母が死亡した時点では、弟のB氏は既に亡くなっていますので、結局、代襲相続人はいないことになり、祖母の第一順位の子または直系卑属がいませんので、第三順位の被相続人の兄弟姉妹に相続権があるということになります。
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