2026/08/10
“良いはずのもの”が認知症リスクを高める。食とサプリをめぐる新知見
関節痛のサプリメントとして高齢者に広く使われているグルコサミンが、認知症の進行を加速させるかもしれない。
6月にNature Metabolismに掲載されたフロリダ大学の研究が、そう警鐘を鳴らした。
人気の関節サプリが認知症を悪化?フロリダ大が鳴らす警鐘
研究グループは空間的メタボロミクスやグライコミクスを統合し、アルツハイマー病の脳で「過剰グリコシル化(hyperglycosylation)」が病態を駆動していることを示した。
グリコシル化酵素の発現を抑制したマウスでは認知機能が改善し、逆にグルコサミンを経口投与すると悪化した。
65,000人超の電子カルテを12年分解析した後ろ向き研究では、軽度認知障害(MCI)患者でグルコサミンを服用していた群は非服用群と比べて認知症への進行リスクが25%高かった。

「体に良い」が真逆に?飲む人の“状態”で変わるサプリの明暗
ただし誤解してほしくない点がある。
認知機能が正常な健常者ではグルコサミンが認知症リスクを下げるとする先行研究もあり、今回の知見はそれを否定するものではない。
すでに認知機能低下が始まっている段階では、グルコサミンが脳内の糖タグ付け経路を過活性化し、病態を加速させる可能性がある。
“健常者に有益”と”認知機能低下者に有害”は、両立しうるということだ。
同じ物質でも、投与する対象によって影響が逆転する。
その論理は、硝酸塩の研究にもそのまま当てはまる。

ほうれん草とハムの違いとは?「何を摂るか」ではなく「何から摂るか」
デンマークの大規模コホート研究(54,804人・約27年追跡)では、植物由来の硝酸塩摂取が多いほど認知症発症率が低下した一方、動物由来・食肉添加物由来・水道水由来の硝酸塩ではリスクが上昇した。
植物由来の硝酸塩は一酸化窒素(NO)を介して血管・神経系を保護するが、食肉添加物由来では神経変性を招くN-ニトロソアミンが生成されやすい。
ほうれん草や小松菜の硝酸塩と、ハム・ソーセージに添加された亜硝酸塩は、同じ「硝酸塩」でも体内での振る舞いがまったく違う。
「何を摂るか」より「何から摂るか」が問われている。

WHOの警告は正しかった?医療者が知っておくべき「サプリの盲点」
こうした知見の積み重ねを踏まえると、WHOが2019年の認知症リスク低減ガイドラインで、ビタミンB・E・多価不飽和脂肪酸・複合サプリメントについて推奨しないと明記していた立場は、今なお的を射ている。
在宅診療の現場でもサプリを複数種類飲んでいる患者に出会うことは珍しくない。
“良いはずのもの”が状態次第で害に転じる。
この認識を持ったうえで服用歴を確認することが、今の臨床家には求められているかもしれない。
関節痛のサプリメントとして高齢者に広く使われているグルコサミンが、認知症の進行を加速させるかもしれない。
6月にNature Metabolismに掲載されたフロリダ大学の研究が、そう警鐘を鳴らした。
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研究グループは空間的メタボロミクスやグライコミクスを統合し、アルツハイマー病の脳で「過剰グリコシル化(hyperglycosylation)」が病態を駆動していることを示した。
グリコシル化酵素の発現を抑制したマウスでは認知機能が改善し、逆にグルコサミンを経口投与すると悪化した。
65,000人超の電子カルテを12年分解析した後ろ向き研究では、軽度認知障害(MCI)患者でグルコサミンを服用していた群は非服用群と比べて認知症への進行リスクが25%高かった。

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ただし誤解してほしくない点がある。
認知機能が正常な健常者ではグルコサミンが認知症リスクを下げるとする先行研究もあり、今回の知見はそれを否定するものではない。
すでに認知機能低下が始まっている段階では、グルコサミンが脳内の糖タグ付け経路を過活性化し、病態を加速させる可能性がある。
“健常者に有益”と”認知機能低下者に有害”は、両立しうるということだ。
同じ物質でも、投与する対象によって影響が逆転する。
その論理は、硝酸塩の研究にもそのまま当てはまる。

ほうれん草とハムの違いとは?「何を摂るか」ではなく「何から摂るか」
デンマークの大規模コホート研究(54,804人・約27年追跡)では、植物由来の硝酸塩摂取が多いほど認知症発症率が低下した一方、動物由来・食肉添加物由来・水道水由来の硝酸塩ではリスクが上昇した。
植物由来の硝酸塩は一酸化窒素(NO)を介して血管・神経系を保護するが、食肉添加物由来では神経変性を招くN-ニトロソアミンが生成されやすい。
ほうれん草や小松菜の硝酸塩と、ハム・ソーセージに添加された亜硝酸塩は、同じ「硝酸塩」でも体内での振る舞いがまったく違う。
「何を摂るか」より「何から摂るか」が問われている。

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こうした知見の積み重ねを踏まえると、WHOが2019年の認知症リスク低減ガイドラインで、ビタミンB・E・多価不飽和脂肪酸・複合サプリメントについて推奨しないと明記していた立場は、今なお的を射ている。
在宅診療の現場でもサプリを複数種類飲んでいる患者に出会うことは珍しくない。
“良いはずのもの”が状態次第で害に転じる。
この認識を持ったうえで服用歴を確認することが、今の臨床家には求められているかもしれない。
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