小峰 裕子

(株)大洋不動産

相続マインズ福岡

小峰 裕子

平成元年より不動産業に従事。不動産におけるすべての判断はオーナーご家族の幸せや将来設計に多大な影響を及ぼすことを実感する。1999年にCFP®資格取得、2000年にNPO法人相続アドバイザー協議会養成講座1期生として研修を受け、相続に強い不動産の専門家として不動産管理運営の相談業務を中心に、セミナー講師や不動産相続のサポート業務を行っている。大洋不動産常務取締役・相続マインズ福岡代表

この執筆者の過去のコラム一覧

2018/09/10

平成の終わりがもたらすこと

開放感あるオープンキッチン、意図して梁を見せるデザインされた天井、シックな壁紙に無垢のナチュラルなフローリング、アクセントにはコンクリート…
平成生まれの世代は引っ越し先もまずスマホで検索、するとおしゃれなカフェさながらの、見ているだけでも楽しくなるような特徴ある賃貸物件がたくさん並んでいます。

エレベーターなし4階建最上階に引っ越した息子

都内に住む25才の息子さんを訪ねて、この夏、上京した斉藤さん(仮名)夫婦からお聴きした話です。
情報誌のライターとして忙しく働く息子さんは、まとまった休暇も取れず帰省もままならないとか。そこで最近、職場の近くに引っ越したので様子を見に行くことにしたそうです。
品川区内のとある駅で降り炎天下のなかそれぞれキャリーケースを引きながら歩いて行くと、こぢんまりとした佇まいの建物が見えてきました。4階建てエレベーターなしの最上階、あらかじめ預かっていたカギで玄関のドアを開けるとコンクリート打ちっ放しのがらんとした空間が目前に現れました。
息子さんが借りたマンションは、2DKの壁を取っ払った天井の配管むき出しのリノベーション物件だったのでした。

リノベーションのタイミング

リノベーションとは、骨格(構造)だけを残して用途や機能を変更し、性能を向上させたり価値を高めたりするリフォームよりも大規模な改修工事のことをいいます。
築年数が経つにつれ時代に合わなくなったり使い勝手が悪くなったりした場合に、その賃貸物件を「再生」させる効果があります。
「立地は悪くないのに空室が目立つようになった」「家賃を下げるしか方法がないのだろうか」とお悩みなら、あなたもリノベーションを検討すべきタイミングです。

新築の時は最先端でフルスペックだったはずの賃貸物件も、やがて社会的に要求される水準から見劣りするようになるのは仕方のないことです。
建て替えという選択肢が可能ならそれに越したことはありませんが、簡単なことではありません。それでリノベーションという再投資が必要となるのです。
壁、床、天井、水回りと、予算に合わせて行いますが、ひとつだけご注意頂きたいことがあります。金融機関からの借入れをすべきか否かです。

自己資金?借入れ?

借入れには、「良い借入れ」と「悪い借入れ」があります。
例えば200万円の借入れをして、元本を含む年間の返済額が20万円だとします。これは200万円という資金を調達するためのコストが、10%かかるということです。
金融機関の立場に置き換えるなら「200万円貸付けたお金の10%が1年間に戻ってくる」という計算が成り立ちますから、金融機関側の利回りだと考えたら分かりやすいでしょう。
では家賃6万5,000円(年間78万円)、管理手数料などの諸経費が年8万円必要な賃貸物件が1,000万円で売り出し中です。この場合、利回りは7%です。

78万円-諸経費8万円=純収益70万円
70万円÷1,000万円=7%

このとき全額自己資金で投資するか借入れをする方が良いか、判断したいときは資金調達コストを考えてみることです。
利回りが資金調達コストより高ければ良い借入れ、資金調達コストを下回ってしまうと収益を圧迫してしまうため、悪い借入れとなります。あなたではなく、金融機関を儲けさせることになるからです。

昭和から平成、そして

さて、斉藤さん夫妻はリノベーションで生まれ変わった部屋を見上げてみたりのぞき込んだりと、落ち着かない面持ちで帰りを待ちました。
実は引っ越し費用60万円は社会人としてまだまだの息子を慮り、親持ちだったそうです。
一応、貸したことになっているらしいのですが、今のところ返す気配はないのだとか。
熱中症寸前の奥様を気遣い、昼食は通りがかりの一杯320円の蕎麦だったと笑いながら、平成生まれのお子さんを持つ親ならではの微笑ましいエピソードです。

昭和生まれの賃貸物件があふれかえる中、築年が平成だとつい築浅物件と勘違いしてしまいます。
ただ、その平成ももう30年。考えを改めるべき時が来たようです。

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