2018/10/10
相続財産である自宅の土地建物への配偶者の居住
Q 先日、夫が亡くなりました。
亡主人の遺産は、妻である私と既に結婚してそれぞれ家を構えている長男、次男、長女の3人の子たちで相続することになります。遺産は、自宅の土地建物のほか、銀行の定期預金と普通預金と若干の株式があります。
四十九日が経過し、遺産分割についての3人の子らの意見を聞いたのですが、次男も長女も、自宅の土地建物と預金の一部を私が相続して、私の死後に、兄弟姉妹で仲良く分ければよいとの意見なのですが、長男が生活に困っているらしく、中々分割協議がまとまりません。
そうしているうちに、長男が、現在、私が住んでいる自宅の土地建物は、私は法定相続分は2分の1なのだから、法定相続分を超えた部分は不当利得として、その分の賃料相当額を支払ってほしいといってきました。
私は相続分を超える範囲について賃料を支払わなければならないのでしょうか。
相続開始時の遺産に対する権利関係
民法第898条では、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」と定めています。
御主人が亡くなられ相続が開始した場合には、相続財産は、原則として、各相続人の相続分の割合で共有することになります。
従って、これまで配偶者の居住されてきた自宅の土地建物も、預金や株式も全て遺産分割協議が成立するまでの間は、各相続人の相続分の割合で共有の状態になります。民法上、配偶者と第一順位の血族相続人である子らが相続人である場合は、配偶者の法定相続分は2分の1ですので、配偶者の方は、自宅の土地建物についても2分の1の共有持分を有していることになります。
つまり、配偶者の方は、相続開始後、自宅の土地建物に何らの権利もなく居住しているわけではなく、共有持分権に基づいて居住していることになります。
相続分を超えた使用は許されないのか。
それでは、2分の1の共有持分を有する配偶者が、自宅の土地建物の全部を使用することは認められないのでしょうか。
この点が争われた事件について最高裁の平成8年12月17日の判例があります。
この判例の事案は、被相続人と同居していた相続人が、相続開始後も同居していた土地建物の居住を続けた場合に、他の共同相続人から、持分を超えて土地建物を全部使用するのは不法行為である、持分を超えて土地建物を使用していることは不当利得をしていることになり、賃料相当額を不当利得として返還すべきだと主張して訴えを提起しました。
第一審と第二審の裁判所は、いずれも、共有持分権は持分に基づき共有物全体を使用する権利があるので不法行為にはならないとの判断を示しましたが、不当利得については持分を超えて使用することは不当利得になると認めました。
しかし、これに対し、最高裁は、「共同相続人の一人が、相続開始時前から被相続人の許諾を得て被相続人の所有する建物に居住し同居していた場合には、特段の事情のない限り、被相続人と共同相続人との間で、相続開始時を始期とし遺産分割時を終期とする使用貸借契約(契約締結時期は相続開始前、不確定期限付契約)が成立したものと推認される。」との判断を示しました。
この最高裁判例によれば、同居の配偶者は遺産分割協議が成立するまでの間は無償で土地建物への居住を継続できることになります。
以 上
Q 先日、夫が亡くなりました。
亡主人の遺産は、妻である私と既に結婚してそれぞれ家を構えている長男、次男、長女の3人の子たちで相続することになります。遺産は、自宅の土地建物のほか、銀行の定期預金と普通預金と若干の株式があります。
四十九日が経過し、遺産分割についての3人の子らの意見を聞いたのですが、次男も長女も、自宅の土地建物と預金の一部を私が相続して、私の死後に、兄弟姉妹で仲良く分ければよいとの意見なのですが、長男が生活に困っているらしく、中々分割協議がまとまりません。
そうしているうちに、長男が、現在、私が住んでいる自宅の土地建物は、私は法定相続分は2分の1なのだから、法定相続分を超えた部分は不当利得として、その分の賃料相当額を支払ってほしいといってきました。
私は相続分を超える範囲について賃料を支払わなければならないのでしょうか。
相続開始時の遺産に対する権利関係
民法第898条では、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」と定めています。
御主人が亡くなられ相続が開始した場合には、相続財産は、原則として、各相続人の相続分の割合で共有することになります。
従って、これまで配偶者の居住されてきた自宅の土地建物も、預金や株式も全て遺産分割協議が成立するまでの間は、各相続人の相続分の割合で共有の状態になります。民法上、配偶者と第一順位の血族相続人である子らが相続人である場合は、配偶者の法定相続分は2分の1ですので、配偶者の方は、自宅の土地建物についても2分の1の共有持分を有していることになります。
つまり、配偶者の方は、相続開始後、自宅の土地建物に何らの権利もなく居住しているわけではなく、共有持分権に基づいて居住していることになります。
相続分を超えた使用は許されないのか。
それでは、2分の1の共有持分を有する配偶者が、自宅の土地建物の全部を使用することは認められないのでしょうか。
この点が争われた事件について最高裁の平成8年12月17日の判例があります。
この判例の事案は、被相続人と同居していた相続人が、相続開始後も同居していた土地建物の居住を続けた場合に、他の共同相続人から、持分を超えて土地建物を全部使用するのは不法行為である、持分を超えて土地建物を使用していることは不当利得をしていることになり、賃料相当額を不当利得として返還すべきだと主張して訴えを提起しました。
第一審と第二審の裁判所は、いずれも、共有持分権は持分に基づき共有物全体を使用する権利があるので不法行為にはならないとの判断を示しましたが、不当利得については持分を超えて使用することは不当利得になると認めました。
しかし、これに対し、最高裁は、「共同相続人の一人が、相続開始時前から被相続人の許諾を得て被相続人の所有する建物に居住し同居していた場合には、特段の事情のない限り、被相続人と共同相続人との間で、相続開始時を始期とし遺産分割時を終期とする使用貸借契約(契約締結時期は相続開始前、不確定期限付契約)が成立したものと推認される。」との判断を示しました。
この最高裁判例によれば、同居の配偶者は遺産分割協議が成立するまでの間は無償で土地建物への居住を継続できることになります。
以 上
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