(株)大洋不動産

相続マインズ福岡

小峰 裕子

平成元年より不動産業に従事。不動産におけるすべての判断はオーナーご家族の幸せや将来設計に多大な影響を及ぼすことを実感する。1999年にCFP®資格取得、2000年にNPO法人相続アドバイザー協議会養成講座1期生として研修を受け、相続に強い不動産の専門家として不動産管理運営の相談業務を中心に、セミナー講師や不動産相続のサポート業務を行っている。
大洋不動産常務取締役・相続マインズ福岡代表
CFP®(1級ファイナンシャルプラン技能士)
CPM®(米国公認不動産経営管理士)

この執筆者の過去のコラム一覧

2018/12/10

対策は・済ませたはずの・相続税

相続税対策は済ませていたはず...それが

不動産と相続のアドバイザー、小峰裕子です。
「このままだと概算ですが相続税が1000万円ほどかかりそうです」。そう告げると、日高さん(仮名/男性57才)は驚きを隠せない様子でした。
父はすでに他界し、現在は母親と長男である自分、そして結婚した妹がひとりいます。母親は相続税対策として5年ほど前から子ども達に生前贈与をしていました。
それなのに、また相続税の心配をしなければならないとは何ごとか、と首をかしげて苦笑いです。

土地の価格上昇がもたらすこと

ご存じの方も多いように、ここ数年、土地の価格は上昇が続いています。
特に福岡は全国的に見ても若い年代の人口が増え続ける将来有望な地域として人気が高く、不動産投資熱は上がる一方です。
旺盛な需要に押されるように価格も上昇、今年3年に一度の価格見直し(評価替え)が行われた固定資産税の金額が上がっていて、びっくりした方もいらっしゃると思います。

不動産の価格は一物四価とも一物五価とも言われ、「時価」以外に目的に従って「公示価格」「基準地標準価格」「路線価」「固定資産税評価額」といくつもの公的な価格があります。(表参照)

代表的な公示価格は、国土交通省の依頼を受けた不動産鑑定士や鑑定士補が不動産会社から取引事例などを集めるなどして鑑定を行い公表する価格で、実際の取引の指標とされている価格です。
いわゆる国が発表してくれる「時価」との位置づけで良いでしょう。
それぞれの割合は公示価格を100とすると、路線価はその80%、固定資産税評価額は70%程度とされています。つまり値上がりしたのは固定資産税評価額だけではありません。
相続税算定の基準となる路線価も、同じように上昇していることを認識しましょう。

相続税の計算をしてみたら

日高さんのお母様は路線価20万円の土地に300㎡ほどの駐車場をお持ちでした。

路線価20万円×300㎡=相続税評価額6,000万円

実際には宅地の特徴に合わせて、不整形地補正率や間口狭小補正率、奥行長大補正率など各種補正を加えて評価額を算出しますが、いずれにせよ駐車場の路線価は5年前の1.4倍まで上昇していることがわかりました。
お母様の財産は駐車場とご自宅、生命保険が300万円、金融資産は5,000万円ほどと伺っていましたので、気になって今現在の相続税額を大まかにですが試算した結果、1,000万円を上回るかも知れないという結果が出たというわけです。

もう一度、相続対策の見直しを

日高さんは相続税は出来るだけ押さえて資産の承継をしたいというお考えをお持ちでした。
ただ、新たな借り入れをしたくないとのお母様のご意向もあり、不動産を小口化した商品を取り扱う会社をご紹介することにしました。不動産の小口化商品とは、実物不動産を投資家が出資金を出し合いシェアして所有するもので、不動産特定共同事業法に基づく商品です。種別で言うと金融商品ですが、対象は不動産なので現金出資後は資産の圧縮効果が見込めます。つまり不動産の性質と金融商品の手軽さを組み合わせたハイブリッド商品です。個人では購入が難しい好立地な高額不動産でも一口100万円(ご紹介した会社の商品例)と投資しやすく、不動産では難しい分散投資や生前贈与もしやすいため、富裕層を始めに浸透しつつある商品です。

路線価は地主オーナーにとって関心を集める大事な価格であることに違いありません。
天神~博多駅周辺の路線価は昨年に比べて20%近い上昇率です。
不動産投資が消極姿勢に転じたことや融資態勢の変化などから歯止めがかかる可能性もありますが、大型開発案件が相次ぐ福岡は上昇傾向が続くと言われています。
過去、相続税も遺産分割対策も済ませたからといって安心とは言えなくなりました。


不動産の専門家としては市況の変化をお伝えしないわけにはいきません。
先延ばしにしていた大規模修繕、エントランスの改装や新たな設備の導入など、大胆な対策を講じるオーナーも少なくありません。
よかったら声に出して読んでみてください。「たいさくは すませたはずの そうぞくぜい」
「対策は・済ませたはずの・相続税」

果たしてこのままで大丈夫ですか?
ぜひ注意を払って頂きたい状況にあるのが地主オーナーの今なのです。
相続は親の問題ではなく子どもの問題です。再度の相続対策をするべきかどうか、お子様とこの機会に話し合い、検討してみることをおすすめします。

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