久保 逸郎

ファイナンシャルプランナー

FPオフィス クライアントサイド

久保 逸郎

老後のお金の不安を解消する、ライフプランと資産運用&資産管理の専門家
「90歳まで安心のライフプラン」を合言葉にして、豊かな人生の実現に向けたライフプラン作りの支援を行っている。
独立から約15年にわたり相談業務を中心に実務派ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて年間100回近い講演や、マネー雑誌やコラム等の原稿執筆を行うなど幅広く活動中。

この執筆者の過去のコラム一覧

2019/04/10

景気後退局面でのインフレに陥る可能性

今年(2019年)1月21日に国際通貨基金(IMF)が最新の世界経済見通しを発表しました。
IMFは年に4回(1月・4月・7月・10月)に世界経済の成長見通しを発表していますが、今回の発表は前回10月発表に比べて、成長率の見通しは引き下げられています。

経済成長率の見通しが引き下げられた理由としては、世界全体ではとくに米中の貿易摩擦が予測を困難なものにさせており、大きなリスク要因になっていることがあります。
また、政府債務と民間債務が高水準にあり、金融環境がタイト化していること。それに英国の「協定無し」でのEU離脱の可能性や、中国経済の減速なども理由になっているようです。

<IMF世界経済見通し>


IMFの世界経済見通し(2019年1月)を使って筆者作成

新興国と先進国の成長率の差が拡大

しかし、現時点では過度に悲観をする必要はないかもしれません。
というのも上記のグラフにあるように、2020年は今年よりも成長率は高くなる見通しだからです。
とくに注目するべきポイントとしては、先進国は2%(2019年)→1.7%(2020年)と減速傾向にあるのに対して、新興国が4.5%(2019年)→4.9%(2020年)というように成長率が高くなっている点です。
これから先進国と新興国の成長率の差が拡大するということであり、これまで同様に新興国が世界経済の成長をリードしていくことが期待できそうです。

現在リーマン・ショック時と大して変わらないような水準にある新興国株式や新興国通貨は、「バーゲンセール状態」といっていいほどなので、これから新興国株式や新興国通貨などへの投資の魅力が高まってくる可能性がありますね。
長期投資家にとっては絶好の買い場になるかもしれません。(新興国の株式や通貨に投資を行う場合は、投資タイミングの分散を含めて、分散投資を徹底してください。)

日本には厳しい視線

それでは日本経済の見通しはどうなっているのでしょうか?
下記の図表は主要国の経済成長見通しです。


IMF 2019年1月発表

日本経済は大きく失速する見通し

残念ながら日本の経済成長見通しは1.1%(2019年)→0.5%(2020年)で、来年には大きく下がってしまう見通しになっています。これは他の主要国と比較しても大変厳しい見方になっています。

IMFは今年の1.1%の経済成長率のうち、0.2%分は消費税引き上げの緩和策として今年追加される財政刺激策によるもので、来年にはその効果が失われてしまうと予想しています。
これは裏を返せば、財政刺激策が無ければ2019年は実質的には0.9%の経済成長率ということですし、また、この数字も消費税増税前の駆け込み需要があってのものなので、それだけ日本に対しては厳しい見方をしているということでしょう。
近年の日本の潜在的経済成長率は0.5%前後と言われていますので、来年(2020年)の経済成長率0.5%というのは実力通りというか、妥当な数字ともいえます。

 

株式というのは将来を見通して買われるものなので、通常は株式市場というのは実体経済の動きよりも先に動く傾向があります。
来年以降の日本の経済見通しが芳しくないということは、早ければ今年後半あたりから株式市場が調整局面を迎える可能性があるともいえます。
「東京オリンピックを控えているから大丈夫」などとあまり楽観視をしないで、しっかりと足元のマーケット環境を見ていくようにしなければいけません。

景気後退局面でのインフレになってしまう恐れ

このように経済が減速傾向にある中で、注意をしておかなくてはいけないのが物価の動向です。
足元では世界的にインフレ圧力が高まってきています。


データ出所:世界経済のネタ帳

米中貿易戦争の影響で関税増加とブロック経済化が進んでおり、また、労働市場タイト化による賃金上昇圧力の高まりなどもあり、景気後退局面でのインフレになる可能性が高まってきています。
しかし、日本の場合は政府債務残高が大きいため、インフレ率が高くなっても、そう簡単に金利を上げることはできません。そのため株価等の資産価格下落、超低金利が継続する中でのインフレという、生活者にとっては大変厳しい状況に陥る可能性が高いので、しっかりとインフレへの備えを行うようにしましょう。

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