ファイナンシャルプランナー

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久保 逸郎

老後のお金の不安を解消する、ライフプランと資産運用&資産管理の専門家
「90歳まで安心のライフプラン」を合言葉にして、豊かな人生の実現に向けたライフプラン作りの支援を行っている。
独立から約15年にわたり相談業務を中心に実務派ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて年間100回近い講演や、マネー雑誌やコラム等の原稿執筆を行うなど幅広く活動中。

この執筆者の過去のコラム一覧

2019/06/10

自助努力による老後資金準備が当然の時代に

老後のお金の不安解消アドバイザーの久保逸郎です。
2019年5月22日に金融庁の金融市場ワーキング・グループが「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)を発表しました。

私達ファイナンシャルプランナー(FP)にとっては既知の情報ですし、日頃から講演の機会等で話していることでもあるため、とくに発表された内容について目新しいものはありませんでしたが、一般の方にとっては大変なニュースだったようで、テレビのニュースでも大々的に報道されていました。
朝日新聞などの新聞社各社は一面トップにこのニュースを持ってきて報じていましたし、YAHOO!ニュースなどでもコメント数第1位になっていたので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。

その中で私が最も驚いたのは、YAHOO!ニュースのコメントで国を非難するようなコメントがたくさん書かれていたことです。
近年個人型確定拠出年金の対象者拡大や、NISA・つみたてNISA等の非課税制度の創設等が行われましたが、なぜ国がこのような制度を次々と打ち出していくのか、その背景まで考えれば、今更騒ぐほどのことでもなんでもないと思うからです。

それでは「高齢社会における試案形成・管理」報告書(案)にはどういったことが書かれているのでしょうか?
ざっくりと簡潔にまとめてしまうと、このような内容です。

【高齢社会における試案形成・管理」の内容】

これまでのような年金はもう期待できない

「公的年金だけでは望む生活水準に届かないリスク」の部分で、少子高齢化が進む現状では、今までと同等の年金の給付水準を維持することは期待できないことが示されています。

元気なうちは働いて稼いでください

日本の高齢者は元気で、思考レベルが高いそうです。
体力レベルは過去の高齢者と比べると高い水準にあり、2016年のデータでは65歳から69歳の男性の55%、女性の34%が働いていているとのこと。また、60歳から69歳でインターネットを使っている人が全体の4分の3いて、これはOECD諸国の40代後半のレベルと変わらないそうです。
つまり日本の高齢者は体力的に元気で、しかも思考レベルも衰えていないのだから、70歳程度までしっかりと働いてくださいということです。

退職金もあまり期待できない

退職金給付制度がある企業の割合は年々減っており、2018年で約80%。また、定年退職者の退職給付額は平均1,700万円~2,000万円程度で、ピーク時から3~4割減少。

長期・積立・分散投資が好ましい

投資の基本である「長期投資」「積立投資」「分散投資」の有効性について、データに基づいて紹介されており、長期・積立・分散投資は「リスクをコントロールし、一定のリターンをもたらしやすい点で、多くの人にとって好ましい資産形成のやり方である」としています。

金融リテラシーの向上

金融リテラシーとは、社会人として金融に関する知識や情報を正しく理解し、自らが主体的に判断することのできる能力のことです。簡単に言えば「お金の知識」ということになりますね。

社会人として正しいお金の知識を身に付けて、確定拠出年金やNISA・つみたてNISAの制度等を活用しながら、自分で老後資金を準備していくことが基本で、もし、自分で行うことが難しい場合は、信頼のできるアドバイザーを見つけて、アドバイスをもらいながら投資を行って準備をしてくださいということが書かれています。

このように公的年金はこれまでのようには期待できないし、退職金も減っているから、なるべく長く働いて稼ぐことと、ライフプランに合わせて上手に資産運用を行って、国民の皆様の自助努力でなんとかしてくださいというのが、今回のレポートの内容です。

これはお金の知識を持っている方にとっては、目新しい情報でもなんでもないですね。

そのような内容の発表にもかかわらず、国に対して批判的なコメントが多いのは私自身驚きでしたし、また、それと同時に日頃からFPとして情報発信をしていることが全然足りていなかったことを痛感しました。
ライフプランと資産運用&資産管理の専門家として数多くの講演の機会をいただいたり、メディアに原稿を書かせていただいたり、金融機関の職員に対する教育の機会をいただいているにもかかわらず、世間に対して十分に伝えられていないことを残念に思い、今後の課題としてどのように取り組んでいくかを考えているところです。

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