税理士

あんしん税理士法人

鹿田 幸子

福岡県出身。大学卒業後、大阪の会計事務所にて勤務。帰福後は、福岡の大手会計事務所に勤務し、幅広い業務に携わる。2007年税理士登録。2013年 12月安藤税理士事務所入所。2016年12月法人成(あんしん税理士法人)。社員税理士となる。かかりつけ医のような税理士を目指し日々研鑽中。
資格:税理士

この執筆者の過去のコラム一覧

2019/07/10

祝:令和元年 ―“三種の神器”の贈与―

平成31 年4 月30 日をもって平成が終わり、翌5 月1 日は令和元年の最初の日でした。
10 連休GW の最中でしたから、4 月30 日に行われた「退位礼正殿の儀」や5 月1 日に行わ
れた「剣璽等承継の儀」「即位後朝見の儀」などをテレビでご覧になった方も多いのでは
ないでしょうか?
私も、このような儀式を観ることができるのは最初で最後かもしれない、と思い、テレビでずっと見入っていました。

「剣璽等承継の儀」を「あの中に勾玉が!」や「神鏡はご神体だから動かないんですね!」と、感動を覚えながらも学びながら見つつ、上皇様がご退位なされるということで、しばしば話題になっていた“三種の神器”の贈与にまつわる税務について、職業柄気になっていましたので少しまとめてみました。

税理士が生前退位に想うこと

税理士試験用の学校で相続税法を学んでいたときに、相続税法の条文を必死で覚えたものでした。
その中でも、「相続税の非課税財産」という条文は基本中の基本で、割と初期に覚える条文の一つでした。以下です。

(相続税の非課税財産)
第十二条 次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
一 皇室経済法(昭和二十二年法律第四号)第七条(行為に伴う由緒ある者)の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物

「皇位とともに皇嗣が受けた物(三種の神器も含まれます)」というフレーズは、相続税法を学んだ税理士でしたら一生忘れないフレーズです。このように、こと「相続」に関してはちゃんと相続税法で「非課税ですよ」と定められています。

生きているうちの財産承継は贈与

ここで問題なのは、「相続」というのは「亡くなられてから発生する」ということです。「亡くなった人の財産を配偶者や子供たちがもらう」という事なのです。
しかしこれまでにも、複数のお客様に「自分が生きているうちに息子に相続したいんだけど」「父が生きているうちに相続したい」という相談を受けたことがあります。
そういった場合まず、「生きてらっしゃる間の財産の承継は贈与なんです」というご説明を差し上げます。

日本においては、義務教育の期間やその後の教育を受ける期間においても、こういった基礎知識をほとんど教えてくれる機会がありません。
相続税がかかる、かからない、は別として、身内を亡くす、という機会はほとんどの人に訪れます。
相続、ということに、ほとんどの国民が遭遇するということなので、社会科の授業などでもっと扱われると良いのにな、と思います。

生前退位ということは?

それはさておき、今回のご退位は生前退位です。つまり、生前退位にともなって承継される財産があれば、それは相続ではなく贈与、です。
しかし、「贈与税の非課税財産」の条文には、さきほどの「相続税の非課税財産」のなかの「皇位とともに皇嗣が受けた物」のような条文はありません。
生前退位、という事が想定されていなかったためです。
これを普通に考えたら、贈与税がかかってしまいます。

「草薙の剣って、いったいいくらの評価額なんだろう?」「勾玉は?」・・・歴史や文化的価値などを考えたらプライスレスですね、難しい問題です。
そこで、皇室典範特例法の規定を設けて、今回の皇位継承についてのみ、贈与税の非課税措置をとることとなりました。

ただ、気になるのは、この措置が今回限りの特例、とされている点です。
これからもその時代にあった税処理を都度都度考えていく、という事なのでしょうか。
何はともあれ、令和の時代が、その語源である万葉集の一文のようにそこはかとなく美しい時代になることを願ってやみません。

すべての著作権は(株)大洋不動産に帰属しています。無断転載は固くお断りいたします。