2019/08/10
投資への関心が高まっているものの、厳しい投資環境が続く見通し
老後のお金の不安解消アドバイザーの久保逸郎です。
IMF(国際通貨基金)が7月23日に最新の経済成長見通し(WEO)を発表しました。
それによると今年(2019年)の世界経済全体の成長率は3.2%で、来年(2020年)は3.5%になっており、成長率が上がることが見込まれています。
その理由としては、新興国が先進国を大きく上回る成長が見込まれており、今後は先進国と新興国の成長率の差が拡大していくことになりそうです。
<IMF世界経済成長見通し(2019.7発表)>
米国経済の先行き
この中でとくに注目する点は、世界経済に大きな影響を与える米国の経済成長率が下がってきていることです。
米国は近年の段階的な政策金利の引き上げが終了して、これから利下げの方向に進んでいく可能性が高まってきていますが、実際に経済が悪化してきているから利下げにシフトするのであって、今後についてはけっして楽観視できる状況ではありません。
また、過去に起きた事実として、利下げが始まってからしばらくしてからITバブルの崩壊やリーマン・ショックが起きています。それに加えてニューヨーク連銀が算出する12ヵ月後の米国景気後退確率指数が急上昇しており、33%にまで達しています。
確率自体は低く見えますが、この確率が過去30%を超えた時点から12ヵ月後に景気後退入りしているケースが多く、米国経済の先行きについては警戒しておく必要があるでしょう。
それでは日本はどうかというと、消費増税の影響等もあって、経済成長見通しは今年(2019年)の0.9%から、来年(2020年)は0.4%にまで落ち込む見通しになっています。
潜在的成長率程度に戻る見通しと言ってしまえばそれまでですが、政府と日本銀行が一体となって推し進めてきた金融緩和の効果が薄れてきており、今後は企業決算発表のニュースなどにおいて、「減益」や「下方修正」といった言葉が目に付くようになると思います。
資産運用ポートフォリオの中心が日本株になってしまっている投資家は多いので、そのような人は注意をしたほうがよさそうですね。
厳しい投資環境がしばらく続くのでは
このように厳しくなりつつある投資環境の中で、今後私達はどのように投資を行っていけばいいのでしょうか?
長期の資産形成(最低10年以上を想定)を行っている人の場合は別ですが、まとまった資金の運用を行っている方など、そうでない方々の場合は「株ダメ」「債券はお話しにならないレベルでダメ」といった状況なので、当面(5年程度)は厳しい状況が続きそうです。リーマン・ショック以降の世界的な金融緩和の反動もあって、大きな下落調整が入る場面もありそうです。
このような状況にもかかわらず、最近は「老後資金2000万円不足」がニュースやワイドショーなどで取り上げられたこともあって、株式投資セミナーなどが賑わってきています。しかし、近年の値動きなどを見て日本株や米国株・世界株などに投資をしても、期待するような投資成果は得られない可能性が高いのではないでしょうか。
せっかく株式投資に関心が集まっているので個人的には喜んでいますが、始めたのはいいけどいきなり値下がりして、それに耐えきれず止めてしまい、投資に悪いイメージを持ってしまう方々が増えてしまうのではないかと懸念しています。
新興国の成長に期待するなら債券より株式に
一方、債券に至っては、日本国債、ドイツなどはすでに長期金利がマイナスの状況で、今年春以降米国の長期金利も急低下しています。そのため株式以上に厳しいというか、5年程度の投資期間で考えればほとんど収益を見込めない状況にあると思います。
某運用会社のレポートによれば、今後5年間で世界国債から得られるリターンは1.4%(年率)、米国債は1.1%(年率)程度しか見込めないそうです。ほとんど収益が見込めないのにリスクだけは残りますから、これから購入しようとする方はこのような債券への投資を控えたほうがいいでしょうね。
もちろんすでに長期金利がマイナスになっている日本国債も同様です。
足元では新興国の現地通貨建て債券や米ドル建て債券については割安感が強い状況にあると考えていますが、そもそも新興国の成長に期待をするのであれば、債券ではなく株式のほうに投資を行うべきだと思いますし、為替変動が大きいので少なくとも投資初心者が選ぶ投資先ではないと思います。
それではこれから私達はどのように投資を行っていけばよいのでしょうか?
マーケット環境が厳しい時にはそれに対応する資産運用の方法がありますので、次回のコラムで紹介したいと思います。
老後のお金の不安解消アドバイザーの久保逸郎です。
IMF(国際通貨基金)が7月23日に最新の経済成長見通し(WEO)を発表しました。
それによると今年(2019年)の世界経済全体の成長率は3.2%で、来年(2020年)は3.5%になっており、成長率が上がることが見込まれています。
その理由としては、新興国が先進国を大きく上回る成長が見込まれており、今後は先進国と新興国の成長率の差が拡大していくことになりそうです。
<IMF世界経済成長見通し(2019.7発表)>
米国経済の先行き
この中でとくに注目する点は、世界経済に大きな影響を与える米国の経済成長率が下がってきていることです。
米国は近年の段階的な政策金利の引き上げが終了して、これから利下げの方向に進んでいく可能性が高まってきていますが、実際に経済が悪化してきているから利下げにシフトするのであって、今後についてはけっして楽観視できる状況ではありません。
また、過去に起きた事実として、利下げが始まってからしばらくしてからITバブルの崩壊やリーマン・ショックが起きています。それに加えてニューヨーク連銀が算出する12ヵ月後の米国景気後退確率指数が急上昇しており、33%にまで達しています。
確率自体は低く見えますが、この確率が過去30%を超えた時点から12ヵ月後に景気後退入りしているケースが多く、米国経済の先行きについては警戒しておく必要があるでしょう。
それでは日本はどうかというと、消費増税の影響等もあって、経済成長見通しは今年(2019年)の0.9%から、来年(2020年)は0.4%にまで落ち込む見通しになっています。
潜在的成長率程度に戻る見通しと言ってしまえばそれまでですが、政府と日本銀行が一体となって推し進めてきた金融緩和の効果が薄れてきており、今後は企業決算発表のニュースなどにおいて、「減益」や「下方修正」といった言葉が目に付くようになると思います。
資産運用ポートフォリオの中心が日本株になってしまっている投資家は多いので、そのような人は注意をしたほうがよさそうですね。
厳しい投資環境がしばらく続くのでは
このように厳しくなりつつある投資環境の中で、今後私達はどのように投資を行っていけばいいのでしょうか?
長期の資産形成(最低10年以上を想定)を行っている人の場合は別ですが、まとまった資金の運用を行っている方など、そうでない方々の場合は「株ダメ」「債券はお話しにならないレベルでダメ」といった状況なので、当面(5年程度)は厳しい状況が続きそうです。リーマン・ショック以降の世界的な金融緩和の反動もあって、大きな下落調整が入る場面もありそうです。
このような状況にもかかわらず、最近は「老後資金2000万円不足」がニュースやワイドショーなどで取り上げられたこともあって、株式投資セミナーなどが賑わってきています。しかし、近年の値動きなどを見て日本株や米国株・世界株などに投資をしても、期待するような投資成果は得られない可能性が高いのではないでしょうか。
せっかく株式投資に関心が集まっているので個人的には喜んでいますが、始めたのはいいけどいきなり値下がりして、それに耐えきれず止めてしまい、投資に悪いイメージを持ってしまう方々が増えてしまうのではないかと懸念しています。
新興国の成長に期待するなら債券より株式に
一方、債券に至っては、日本国債、ドイツなどはすでに長期金利がマイナスの状況で、今年春以降米国の長期金利も急低下しています。そのため株式以上に厳しいというか、5年程度の投資期間で考えればほとんど収益を見込めない状況にあると思います。
某運用会社のレポートによれば、今後5年間で世界国債から得られるリターンは1.4%(年率)、米国債は1.1%(年率)程度しか見込めないそうです。ほとんど収益が見込めないのにリスクだけは残りますから、これから購入しようとする方はこのような債券への投資を控えたほうがいいでしょうね。
もちろんすでに長期金利がマイナスになっている日本国債も同様です。
足元では新興国の現地通貨建て債券や米ドル建て債券については割安感が強い状況にあると考えていますが、そもそも新興国の成長に期待をするのであれば、債券ではなく株式のほうに投資を行うべきだと思いますし、為替変動が大きいので少なくとも投資初心者が選ぶ投資先ではないと思います。
それではこれから私達はどのように投資を行っていけばよいのでしょうか?
マーケット環境が厳しい時にはそれに対応する資産運用の方法がありますので、次回のコラムで紹介したいと思います。
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