江口 正夫

弁護士

江口 正夫

1952 年生まれ、広島県出身。東京大学法学部卒業。弁護士(東京弁護士会所属)。最高裁判所司法研修所弁護教官室所付、日本弁護士連合会代議員、東京弁護士会常議員、民事訴訟法改正問題特別委員会副委員長、NHK文化センター専任講師、不動産流通促進協議会講師、東京商工会議所講師等を歴任。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会理事。

〒100-0006
東京都千代田区有楽町1丁目10番1号 有楽町ビル4階424区

海谷・江口・池田法律事務所
TEL03-3211-8086 
メール

この執筆者の過去のコラム一覧

2019/10/10

特別寄与者による特別寄与料の請求

Q 私は、夫と結婚した後すぐに夫の両親と同居しました。
夫は長男であり、次男、三男との3人兄弟ですが、長男である夫が両親の面倒を見るということで、結婚後は私も両親と同居してきました。
25年前に夫の母が亡くなり、20年前に夫が亡くなりましたが、夫が亡くなった後も、家を出ることなく、現在まで年老いた義父の療養看護に努めてきました。
この度、義父が亡くなりました。義父の遺産には、私が20年以上にわたり療養看護をしてきたことによって維持された財産も含まれていると思いますが、次男と三男は私の貢献は無視して、義父の遺産は次男と三男で分けると言っています。

長年にわたり、義父の療養看護をしてきたことに対しては、何も報われることはないのでしょうか。


遺産の相続方法の原則

(1)均分相続の原則
民法は、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」(民法第898条) と定めています。
その上で、「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。」(民法第899条)と定めています。

つまり、被相続人が死亡した場合、子が複数いる場合は子らの相続分は同一とされているのです。これは均分相続の原則と言われます。
しかし、両親の世話を全くしていない相続人と、長年にわたり両親の面倒を見てきた相続人の相続する財産が全く同じ割合だということになりますが、それは余りに不公平ではないか、ということが問題になります。

 

(2)寄与分制度
こうした不公平を是正するために、昭和55年に寄与分制度が創設されました。
寄与分とは「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるとき」(民法第904条の2)には、その寄与貢献をした相続人が相続する財産を増やすという制度をいいます。

この規定により、亡くなられた長男の妻に寄与分が認められるかというと、寄与分は、「共同相続人の中に、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるとき」に認められるものとされています。
つまり、寄与分は相続人にしか認められません。
長男は相続人ですが、長男の妻は相続人ではありませんから、寄与分は認められないことになります。

改正民法による特別寄与者の特別寄与料請求制度の創設

そこで、令和元年7月1日から施行される改正民法(相続法)では、改正民法が施行される令和元年7月1日以降に発生した相続については、被相続人の親族(相続人でない者)が被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(この親族を「特別寄与者」といいます。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(これを「特別寄与料」といいます。)の支払を請求することができると定められました。
ただし、寄与分の場合とは異なり、財産上の給付をしたとしても、特別寄与者とは認められません。

【改正民法による特別寄与者制度】


もし、相続人が、特別寄与者である奥様の特別寄与料を支払えとの請求に応じない場合は、特別寄与者は家庭裁判所に特別寄与料の支払いを求めることができます。
ただし、その期間は、特別寄与者が、相続開始の事実と、相続人を知った時から6ケ月以内、相続開始の時から1年以内に請求しなければ、特別寄与料の請求権は認められなくなります。

 

従って、長男の妻は相続人ではありませんが、被相続人の親族に当たりますので、改正民法のもとでは、次男と三男の方に特別寄与料を請求できることになりました。

 

すべての著作権は(株)大洋不動産に帰属しています。無断転載は固くお断りいたします。