(株)大洋不動産

相続マインズ福岡

小峰 裕子

平成元年より不動産業に従事。不動産におけるすべての判断はオーナーご家族の幸せや将来設計に多大な影響を及ぼすことを実感する。1999年にCFP®資格取得、2000年にNPO法人相続アドバイザー協議会養成講座1期生として研修を受け、相続に強い不動産の専門家として不動産管理運営の相談業務を中心に、セミナー講師や不動産相続のサポート業務を行っている。
大洋不動産常務取締役・相続マインズ福岡代表
CFP®(1級ファイナンシャルプラン技能士)
CPM®(米国公認不動産経営管理士)

この執筆者の過去のコラム一覧

2019/11/10

「私の分は?」相続と子どもの幸せ

昭和23年、新しい民法が施行され、相続制度が家督相続から均分相続に変わりました。
とは言っても日本人の考え方が急激に変わるようなことはありません。
30年たち高度経済成長期に突入しても、相続で兄弟姉妹が争うなんてことはほとんどなかったように思います。
遺産分けについては家督相続的な考えが根強く、長男が何の問題もなく承継。特に他家に嫁いだ娘が、親の相続で発言権を持つようなことは考えにくい時代がずっと続いていたのです。
それが71年たった今、とうとう相続は何もしないで済まされる時代ではなくなりました。

均分相続71年の相続事情

長男にマイホームを贈与しようと思っているご夫婦がいました。
そのことを長女に話すと「私の分は?」と聞かれてびっくりしたそうです。
「長男には先祖のお墓を見たり祭祀も任せることになるから」と言っても、釈然としない様子だったとか。まだ60代のご夫婦ですが、思いがけない長女さんの反応に「相続のこと、考えないといけないのかな?」と思案の表情です。

別なご相談では、相続の話をし出すと決まって夫婦げんかになるそうです。
こちらは賃貸不動産を数棟所有する70代のご夫婦です。
お子さん達に等しく分けてあげたくても、築年数や収益の多少もバラバラで思うようにならず、夫婦げんかになってしまって何も進まないと言います。

平等と公平

相続は「均分相続」の時代です。
年長だとか男だ女だという考え方はなく、兄弟姉妹は平等です。とはいっても、親としてどのお子さんも同じで良いのか、と言えば答えはNOということもあるでしょう。
例えば離婚してお孫さんを連れてひとり頑張っている娘さんと、大学に行って留学もして、今は会社員の息子さんが一律に平等で良いのか。娘さんとお孫さんの生活が将来に渡って不安のないように、と思うのが心情だと思うのです。
相続の平等にあえて不平等の考えを持ち込む、それは「公平性」という観点です。

老後の2,000万円問題で明らかになったように、今の30~40代の世代は、年金だけで暮らしていけるとは考えておらず、お金の不安がつきまといます。
やがて時がたち親の相続を迎える頃、自分や家庭の事情で「より多くもらいたい」「良い財産をもらいたい」と、兄弟姉妹で争いになってしまうことは大いに考えておきたいことです。

その不動産、もらいたい?

もちろん、遺言書を作成しておくことは有効な手立てとなりますが、対「相続」という策だけでは十分と言えない世の中になると考えます。
権利意識の高まりを思えば、現金や生命保険金などで補完するなど少なくもらうお子さんへの配慮も必要でしょう。
特に不動産の場合は「もらいたい不動産」にしておくことは、お子さん達の立場となれば当然です。入居率が悪い、大規模修繕をしていない、隣地との境界が確定していない、遠すぎて行ったことない等々、「もらいたくない不動産」にしてしまっていませんか?
これでは、相続は公平どころか不公平なものになってしまいます。

「もらいたい不動産」にしておくことは、その不動産の価値の上昇につながることでもあります。
リスクを嫌い「何もしない」という選択は、相続の最大のリスクです。
「節税」「納税」はもちろん大切ですが、税金に負けない収入を得て不動産を含む資産全体の価値を上げ成長させることこそ、次世代の豊かさに繋がると考えています。
たったひとつ、必要なことはリスクを知り、管理することです。大洋不動産はそのために存在します。

ゴールは「ありがとう」

昭和23年の民法改正から71年、相続はすっかり様変わりしました。
ただ、何もしないで争いになるケースを知ったからこそ、考えて工夫し、乗り越えようとしているのです。
それはお子さんの代だけでなくお孫さんの代まで豊かさを繋いでいくこと、ご家族にとっての発展であると考えています。
ゴールは「お父さん、お母さん、ありがとう」。
しあわせ倍増プランニング、共にコツコツ取り組んで行けたら管理会社冥利です。

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