2019/12/10
「伝家の宝刀」抜かれる!路線価否定判決と相続対策
先月、日経新聞に取り上げられた記事に驚かれた方も多いことでしょう。
それは相続税の算定で土地の価格を路線価にもとづいて評価したことを不適切とした判決で、国税庁側が主張する価格を東京地裁が認めるという内容でした。
不動産の圧縮効果と節税
一般的に相続税の計算における土地の価格の評価は、国税庁が発表する「路線価」を使って算出するとされています。
路線価は時価(実際の取引価格)の80%程度と言われています。つまり、1億円の現金を持つよりそのお金で1億円の土地を購入したほうが80%に圧縮されて相続税が安くなります。
そのため節税目的での不動産購入はよく行われますが、それ自体が問題なのではありません。
ではなぜ、国税局の主張は認められたのでしょうか。事案となった節税スキームはこうです。
相続税の支払い回避と認定
相続財産である東京都内と川崎市内の2棟のマンション。
相続人は路線価から「3億3,000万円」と評価し、また銀行から借り入れもしていたので相続税額はゼロと申告しました。
ただ実際の購入金額は2棟で13億8,700万円、路線価とは4倍以上の開きがあり、あまりにもかけ離れているため「路線価による評価は不適切」であるとして、国税側は相続税の申告漏れを指摘。
3億円の追徴課税処分を行いました。
相続人側は取り消しを求めて提訴したものの、2棟の購入が相続発生のわずか3年前だったことから、相続税の支払いを回避するための購入であると認定されてしまいました。
国税庁側が主張する鑑定価格12億7,300万円が妥当と認め、路線価にもとづいた相続財産の評価は「不適切」であるとした判決が出たのです。
過度で露骨な節税対策に警鐘!
財産評価基本通達6項、いわゆる「伝家の宝刀」と呼ばれる通達があります。
それは「財産評価基本通達の定めによって評価することが著しく不適当」な場合は「国税庁長官の指示で」評価を見直すことができるとするもので、今回の事案はまさにこれです。
2017年にも同じように、中古の賃貸物件を借入で購入し相続発生後わずか9ヶ月で売却、税務調査が入り、相続財産の評価を「不適切」として課税処分が行われたこともありました。
過度で露骨な節税対策は租税回避が目的だとして、問題視されるのです。
では、相続税対策はどのように検討すれば良いのでしょうか。3つにまとめてみました。
相続対策の基本
1.相続対策は時間的な余裕が必要
ひとはいつ亡くなるかわかりません。
東京地裁の事案での被相続人の年齢は90歳代だったそうです。高齢となってからの「その場しのぎ」ではなく、対策は余裕を持って計画的に行うことがますます大切になります。
2.相続対策の目的をはっきりさせる
不動産購入の目的は、節税のみならず資産全体の収益性の改善ではないでしょうか。利回りが期待できれば、節税できたら用済みとばかりの売却はないはずでした。
目先だけの相続対策はやめておきましょう。
3.節税ファーストは盲点だらけ
都心の地価が上昇傾向にある今、時価(購入額)と路線価で計算した相続税評価額の差額が大きいときは注意が必要です。
ただ、事案は明らかな節税対策での不動産購入という背景を考慮した判決であって、評価額だけの問題ではないと思います。
節税に偏った相続対策は盲点だらけです。
相続対策の本質は家族の幸せのため
相続税を納税する人は2014年には4.4%でしたが、基礎控除が縮小された後では8.3%まで増えており増加傾向は続くと思われます。
それだけに相続税対策に注目が集まりがちですが要注意、相続対策の本質は節税対策ではありません。
ご自身と、お子さんやお孫さんの幸せを守ることが一番であり、そのための相続対策であるはずです。
「しあわせ倍増をプランする」。大洋不動産では相続の不安や疑問をゆっくり聴かせて頂き、問題に気が付いたら適切な専門家と連携して対策を考え、効果やリスクをわかりやすくご説明しています。
お気軽にご相談頂ければ幸いです。
先月、日経新聞に取り上げられた記事に驚かれた方も多いことでしょう。
それは相続税の算定で土地の価格を路線価にもとづいて評価したことを不適切とした判決で、国税庁側が主張する価格を東京地裁が認めるという内容でした。
不動産の圧縮効果と節税
一般的に相続税の計算における土地の価格の評価は、国税庁が発表する「路線価」を使って算出するとされています。
路線価は時価(実際の取引価格)の80%程度と言われています。つまり、1億円の現金を持つよりそのお金で1億円の土地を購入したほうが80%に圧縮されて相続税が安くなります。
そのため節税目的での不動産購入はよく行われますが、それ自体が問題なのではありません。
ではなぜ、国税局の主張は認められたのでしょうか。事案となった節税スキームはこうです。
相続税の支払い回避と認定
相続財産である東京都内と川崎市内の2棟のマンション。
相続人は路線価から「3億3,000万円」と評価し、また銀行から借り入れもしていたので相続税額はゼロと申告しました。
ただ実際の購入金額は2棟で13億8,700万円、路線価とは4倍以上の開きがあり、あまりにもかけ離れているため「路線価による評価は不適切」であるとして、国税側は相続税の申告漏れを指摘。
3億円の追徴課税処分を行いました。
相続人側は取り消しを求めて提訴したものの、2棟の購入が相続発生のわずか3年前だったことから、相続税の支払いを回避するための購入であると認定されてしまいました。
国税庁側が主張する鑑定価格12億7,300万円が妥当と認め、路線価にもとづいた相続財産の評価は「不適切」であるとした判決が出たのです。
過度で露骨な節税対策に警鐘!
財産評価基本通達6項、いわゆる「伝家の宝刀」と呼ばれる通達があります。
それは「財産評価基本通達の定めによって評価することが著しく不適当」な場合は「国税庁長官の指示で」評価を見直すことができるとするもので、今回の事案はまさにこれです。
2017年にも同じように、中古の賃貸物件を借入で購入し相続発生後わずか9ヶ月で売却、税務調査が入り、相続財産の評価を「不適切」として課税処分が行われたこともありました。
過度で露骨な節税対策は租税回避が目的だとして、問題視されるのです。
では、相続税対策はどのように検討すれば良いのでしょうか。3つにまとめてみました。
相続対策の基本
1.相続対策は時間的な余裕が必要
ひとはいつ亡くなるかわかりません。
東京地裁の事案での被相続人の年齢は90歳代だったそうです。高齢となってからの「その場しのぎ」ではなく、対策は余裕を持って計画的に行うことがますます大切になります。
2.相続対策の目的をはっきりさせる
不動産購入の目的は、節税のみならず資産全体の収益性の改善ではないでしょうか。利回りが期待できれば、節税できたら用済みとばかりの売却はないはずでした。
目先だけの相続対策はやめておきましょう。
3.節税ファーストは盲点だらけ
都心の地価が上昇傾向にある今、時価(購入額)と路線価で計算した相続税評価額の差額が大きいときは注意が必要です。
ただ、事案は明らかな節税対策での不動産購入という背景を考慮した判決であって、評価額だけの問題ではないと思います。
節税に偏った相続対策は盲点だらけです。
相続対策の本質は家族の幸せのため
相続税を納税する人は2014年には4.4%でしたが、基礎控除が縮小された後では8.3%まで増えており増加傾向は続くと思われます。
それだけに相続税対策に注目が集まりがちですが要注意、相続対策の本質は節税対策ではありません。
ご自身と、お子さんやお孫さんの幸せを守ることが一番であり、そのための相続対策であるはずです。
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