2019/12/10
不透明なマーケットだからこそ覚えておきたい、マーケットの10のルール
11月4日(2019年)のニューヨーク株式市場は、米中の貿易摩擦緩和への期待感などから、NYダウ平均株価は2万7,517ドル余りまで上げ、取引時間中としては過去最高値を更新しました。
最高値更新は7月中旬以来、およそ3カ月半ぶりになります。
大変好調といっていいマーケットですが、あまりにも市場は楽観視し過ぎなのではないでしょうか?
下がり続ける世界経済成長予想
その理由は足元の経済状況は着実に減速し始めているためです。
国際通貨基金(IMF)が10月15日に発表した最新の世界経済見通し(WEO)では、成長率貿易摩擦で経済成長が減速する中、19年の世界経済成長率を3.0%と、7月時点の予測の3.2%から下方修正しました。
2019年の世界経済成長率予想は、これで5回連続引き下げられたことになります。
また、来年(2020年)の成長率予想も3.4%で、7月時点の3.5%から下方修正されました。
株式市場は先行指標といわれ、将来の経済状況が明るい見通しがあれば、実体経済よりも先に上昇する傾向がありますが、肝心の経済環境の見通しはけっして良くありません。
長短金利差がもたらす景気後退
むしろ世界経済の中心である米国が景気後退局面を迎える可能性が高まっている状況です。今春に長短金利差が逆転するという場面がありましたが、JPモルガン・アセット・マネジメントMARKET INSIGHTSによれば、このような長短金利差の逆転は過去50年で8回起きており、そのうち7回は景気後退に陥っているとのこと。
一般的に長短金利差が縮小すると、銀行の利ザヤが減って経営体力が奪われるため、リスクを取れなくなった銀行がマネーの供給を減らすことで景気後退が起きてしまうといわれていますが、87.5%というのは相当高い確率ですよね。
本来このような先行不透明な局面では、投資家は過度な楽観視をするのではなく、慎重なスタンスを保つべきだと思います。
マーケットの10のルール
そこで今回はウォール街の元ストラテジストであるボブ・ファレル氏が考案した「マーケットの10のルール」をご紹介します。
この10のルールを頭に入れておくことで、今回のような「根拠なき熱狂」相場に振り回されることがないようにしていただきたいものです。
① マーケットは、時を経て、平均に回帰する。
株価が一方向に行き過ぎた時、再び長期トレンドに戻る傾向があります。行き過ぎ(バブル状態)は長くは続くものではありません。
② 一方向への行き過ぎや過剰は、逆方向への行き過ぎや過剰を生む。
リーマン・ショック後の上昇相場はすでに戦後最長の期間になっています。この行き過ぎはいずれどこかのタイミングで大きな調整を生むと考えたほうがいいのではないでしょうか?
③ マーケットに「今回は違う」はない。行き過ぎや過剰は、永続しない。
多くの投資家が「今回ばかりは違う」とついつい考えてしまうのですが、行き過ぎ(バブル状態)は長くは続くものではありません。
④ 指数的な上昇や下落を見せるマーケットは、思ったよりも長続きする。しかし、それが「横ばい」で終わることはない。
人気セクターはある程度、高い株価を維持できますが、その分調整が起こった時の下落は大きくなります。
⑤ 大衆は、ほとんどを「高値掴み」する。安値では、ほとんど拾えない。
銀行や証券会社が米国株や日本株を推奨していることもあり、ピークを過ぎたこの時期に、ディフェンシブ銘柄でもない一般的な株式を買い増した個人投資家は多いようです。
この「高値掴み」の傾向は、とくに日本人投資家に多い傾向ですので注意してください。
⑥ 「恐れ」や「強欲」、それらに基づく判断は、長期の視点に立つ判断に勝りがちである。
今回のような上昇相場のタイミングで、とくに「乗り遅れたら損」みたいな感情的な判断をしてしまう方は危険です。
ちなみに世界的に有名な投資家ウォーレン・バフェット氏は「いまはリスク回避。暴落時に備える」として、彼が率いるファンドは過去最高規模の現金(キャッシュ・ポジション)を積み上げているそうです。
⑦ マーケットは、全体が上がるときが最も強固であり、一部しか上がらなくなった時が最も脆弱である。
市場全体が幅広く買われて力強い相場のモメンタムは止めることは難しいものですが、その一方で、一部の銘柄だけが買われる相場は弱いということ。
ちなみに足元の株価上昇を分析すると、成長株が買われているわけではなく、割安株が買われている傾向が見られます。
⑧ 弱気相場には、3つの局面がある。すなわち、急落、短期的な反発、ファンダメンタルズに沿った長期の下落局面、の3つである。
今は「短期的な反発」なのかな?
⑨ マーケットの専門家が異口同音に同じことを言い出すときは、別のことが生じるときである。
とくにマーケットの専門家が揃って「これから上がる」と言って、過度に楽観視している時は危険です。
最近銀行や証券会社の米国株や日本株などの株式セミナーが盛況なようですね。
私のような「景気後退に備えて保守的なポートフォリオを組みましょう」という講師は、どちらかというと少数派のようです。
⑩ 強気相場は、弱気相場よりも楽しいものである。
その通りですね。
だからついついリスクを取り過ぎてしまう投資家が多いのです。
また、趣味で行う運用は「楽しい運用」で構いませんが、老後資金などの大切なお金の運用は、リスクコントロール重視の地味で着実な「楽しくない運用」を心掛ける必要があります。
(参考:JPモルガン・アセット・マネジメント「Guide to the Markets」)
なお、10の相場ルールと一緒に、足元のマーケット環境を踏まえて私自身が今お伝えしたいことをコメント形式で付け加えておきました。
参考にしてみてください。
11月4日(2019年)のニューヨーク株式市場は、米中の貿易摩擦緩和への期待感などから、NYダウ平均株価は2万7,517ドル余りまで上げ、取引時間中としては過去最高値を更新しました。
最高値更新は7月中旬以来、およそ3カ月半ぶりになります。
大変好調といっていいマーケットですが、あまりにも市場は楽観視し過ぎなのではないでしょうか?
下がり続ける世界経済成長予想
その理由は足元の経済状況は着実に減速し始めているためです。
国際通貨基金(IMF)が10月15日に発表した最新の世界経済見通し(WEO)では、成長率貿易摩擦で経済成長が減速する中、19年の世界経済成長率を3.0%と、7月時点の予測の3.2%から下方修正しました。
2019年の世界経済成長率予想は、これで5回連続引き下げられたことになります。
また、来年(2020年)の成長率予想も3.4%で、7月時点の3.5%から下方修正されました。
株式市場は先行指標といわれ、将来の経済状況が明るい見通しがあれば、実体経済よりも先に上昇する傾向がありますが、肝心の経済環境の見通しはけっして良くありません。
長短金利差がもたらす景気後退
むしろ世界経済の中心である米国が景気後退局面を迎える可能性が高まっている状況です。今春に長短金利差が逆転するという場面がありましたが、JPモルガン・アセット・マネジメントMARKET INSIGHTSによれば、このような長短金利差の逆転は過去50年で8回起きており、そのうち7回は景気後退に陥っているとのこと。
一般的に長短金利差が縮小すると、銀行の利ザヤが減って経営体力が奪われるため、リスクを取れなくなった銀行がマネーの供給を減らすことで景気後退が起きてしまうといわれていますが、87.5%というのは相当高い確率ですよね。
本来このような先行不透明な局面では、投資家は過度な楽観視をするのではなく、慎重なスタンスを保つべきだと思います。
マーケットの10のルール
そこで今回はウォール街の元ストラテジストであるボブ・ファレル氏が考案した「マーケットの10のルール」をご紹介します。
この10のルールを頭に入れておくことで、今回のような「根拠なき熱狂」相場に振り回されることがないようにしていただきたいものです。
① マーケットは、時を経て、平均に回帰する。
株価が一方向に行き過ぎた時、再び長期トレンドに戻る傾向があります。行き過ぎ(バブル状態)は長くは続くものではありません。
② 一方向への行き過ぎや過剰は、逆方向への行き過ぎや過剰を生む。
リーマン・ショック後の上昇相場はすでに戦後最長の期間になっています。この行き過ぎはいずれどこかのタイミングで大きな調整を生むと考えたほうがいいのではないでしょうか?
③ マーケットに「今回は違う」はない。行き過ぎや過剰は、永続しない。
多くの投資家が「今回ばかりは違う」とついつい考えてしまうのですが、行き過ぎ(バブル状態)は長くは続くものではありません。
④ 指数的な上昇や下落を見せるマーケットは、思ったよりも長続きする。しかし、それが「横ばい」で終わることはない。
人気セクターはある程度、高い株価を維持できますが、その分調整が起こった時の下落は大きくなります。
⑤ 大衆は、ほとんどを「高値掴み」する。安値では、ほとんど拾えない。
銀行や証券会社が米国株や日本株を推奨していることもあり、ピークを過ぎたこの時期に、ディフェンシブ銘柄でもない一般的な株式を買い増した個人投資家は多いようです。
この「高値掴み」の傾向は、とくに日本人投資家に多い傾向ですので注意してください。
⑥ 「恐れ」や「強欲」、それらに基づく判断は、長期の視点に立つ判断に勝りがちである。
今回のような上昇相場のタイミングで、とくに「乗り遅れたら損」みたいな感情的な判断をしてしまう方は危険です。
ちなみに世界的に有名な投資家ウォーレン・バフェット氏は「いまはリスク回避。暴落時に備える」として、彼が率いるファンドは過去最高規模の現金(キャッシュ・ポジション)を積み上げているそうです。
⑦ マーケットは、全体が上がるときが最も強固であり、一部しか上がらなくなった時が最も脆弱である。
市場全体が幅広く買われて力強い相場のモメンタムは止めることは難しいものですが、その一方で、一部の銘柄だけが買われる相場は弱いということ。
ちなみに足元の株価上昇を分析すると、成長株が買われているわけではなく、割安株が買われている傾向が見られます。
⑧ 弱気相場には、3つの局面がある。すなわち、急落、短期的な反発、ファンダメンタルズに沿った長期の下落局面、の3つである。
今は「短期的な反発」なのかな?
⑨ マーケットの専門家が異口同音に同じことを言い出すときは、別のことが生じるときである。
とくにマーケットの専門家が揃って「これから上がる」と言って、過度に楽観視している時は危険です。
最近銀行や証券会社の米国株や日本株などの株式セミナーが盛況なようですね。
私のような「景気後退に備えて保守的なポートフォリオを組みましょう」という講師は、どちらかというと少数派のようです。
⑩ 強気相場は、弱気相場よりも楽しいものである。
その通りですね。
だからついついリスクを取り過ぎてしまう投資家が多いのです。
また、趣味で行う運用は「楽しい運用」で構いませんが、老後資金などの大切なお金の運用は、リスクコントロール重視の地味で着実な「楽しくない運用」を心掛ける必要があります。
(参考:JPモルガン・アセット・マネジメント「Guide to the Markets」)
なお、10の相場ルールと一緒に、足元のマーケット環境を踏まえて私自身が今お伝えしたいことをコメント形式で付け加えておきました。
参考にしてみてください。
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