医学博士

広橋整形外科医院

廣橋 昭幸

昭和35年生まれ 久留米大学医学部卒業。久留米大学整形外科医局に在籍し、関連病院・大学病院で勤務後、公立八女総合病院整形外科医長。久留米大学整形外科講師を経て、平成17年より実家である福岡市中央区谷「広橋整形外科医院」で診療。こどもから高齢者までを対象に地域医療に携わっています。

医学博士 日本専門医機構・整形外科専門医・日本整形外科学会・スポーツ認定医、脊椎脊髄認定医、リハビリテーション認定医、リウマチ認定医

〒810-0031
福岡市中央区谷1丁目16-38
広橋整形外科医院
TEL 092-712-1454

この執筆者の過去のコラム一覧

2019/12/10

冬の肌の乾燥とかゆみ

記念すべき第20回目は、ちょっと専門外ですが、この時期、気になる「かゆみ」

冬になると、すねや腰のあたりの「かゆみ」に悩ませられます。
このかゆみの多くは肌の「乾燥」が原因と言われています。特に60歳以上の75%が「かゆみ」に悩んでいると言われていますが、最近では年齢を問わず増える傾向があるようです。

皮膚掻痒症と肌の乾燥

皮膚掻痒症とは、明らかな発疹がないのに掻痒感(かゆみ)が持続する状態をいいます。
皮膚掻痒症は乾燥肌がみられる高齢者に多いのですが、糖尿病や甲状腺、肝臓や胆嚢、腎臓、血液疾患に悪性腫瘍などの疾患や麻薬系の薬剤によって「かゆみ」が誘発されることもあります。
保湿剤を使っても「かゆみ」が治まらなかったり、かゆみが全身に広がるようであれば皮膚科を受診することを勧めます。

「かゆみ」のしくみ

「かゆみ」は刺激を受けて知覚神経が興奮すると、その刺激が脳に伝えられて生じます。健康な肌では知覚神経が皮膚の下までしか伸びていませんが、バリア機能が低下した乾燥肌では皮膚の角層の直下まで伸びているため、外部からの刺激を受けやすく容易に「かゆみ」が生じます。
さらに刺激を受けた神経は神経伝達物質を放出します。
ヒスタミンという物質が放出されて、この物質が神経を刺激して「かゆみ」が生じます。
このような悪循環が乾燥肌では起きています。
また、肌がかゆいと爪でかいてしまいますが、その行動が角層の細胞を刺激して化学物質(サイトカイン)が放出されて神経を刺激し、さらに「かゆみ」を悪化させます。
しかし、適切な対策を行えば知覚神経は元の長さに戻り「かゆみ」は改善されます。

対策は・・・

かゆみが悪化すると湿疹化して治りにくい皮膚炎なる場合もあるため、早い時期から治療に加え、外気や室内の乾燥、入浴後の急激な乾燥など日常生活での注意やスキンケアが必要です。
保湿剤は入浴後すぐ、まだ肌がしっとりしているうちに塗ることが効果的です。
一回に塗る量の目安は人差し指の第一関節から指先までにのせた量 (One-Finger-Tip-Unit=FTU)で、成人の手のひら2枚分になります。
すり込むとかえって刺激になるので、手のひらでやさしく塗った後、かろうじて光る程度、もしくはティッシュペーパーが張り付く程度に塗布します。

◎よく使う保湿剤
ヘパリン類似物質軟膏・ローション
尿素含有軟膏
ワセリン軟膏
炎症が強い場合はステロイド軟膏を併用する場合もあります。
◎入浴
熱い湯に長く入ると、皮脂膜や角質の間の脂質が湯に溶け出し、皮膚の保湿機能が低下します。 38〜40℃くらいのぬるめの湯にして長湯は控えましょう。
刺激性の低い洗浄剤を用いて、軟らかい布、スポンジにつけ軽く汚れを洗い落とし、すすぎはしっかり行いましょう。

◎環境
暖房器具を過剰に使用し、部屋を暖めすぎると空気が乾燥するため注意が必要です。
適度な湿度(50〜60%)に保つため、加湿器などを利用しましょう。
電気毛布は布団を温めるだけに使用し、寝るときにはスイッチを切りましょう。
◎食生活
アルコール、香辛料、刺激物は血液循環がよくなりかゆみを増強します。
かゆみを誘発する物質を含む食品(たけのこ、ほうれん草、さといも、などあくの強い食品)、また、かゆみを起こす物質を出す食品(トマト、いちご、チョコレート)は控えます。
◎衣類
下着やパジャマは、チクチクするウール、ナイロン製品は皮膚を刺激しかゆみを誘発します。

冬のかゆみは、まったく嫌な物です。少しでも参考になれば幸いです。
では、またお会いしましょう。

すべての著作権は(株)大洋不動産に帰属しています。無断転載は固くお断りいたします。