税理士

あんしん税理士法人

鹿田 幸子

福岡県出身。大学卒業後、大阪の会計事務所にて勤務。帰福後は、福岡の大手会計事務所に勤務し、幅広い業務に携わる。2007年税理士登録。2013年 12月安藤税理士事務所入所。2016年12月法人成(あんしん税理士法人)。社員税理士となる。かかりつけ医のような税理士を目指し日々研鑽中。
資格:税理士

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2020/01/10

居住用賃貸建物の取得について(令和2年度税制改正大綱より)

昨年12 月12 日に、年末恒例の税制改正大綱が発表されました。
今後の流れとしては、通常は3 月までに国会で成立・公布、概ね4 月から施行となります。
今回は、税制改正大綱発表の少し前からの報道が様々な形で成されていたため、「不動産オーナーの方でしたら誰もが気になっていらっしゃったのでは」と思われる税制改正について簡単に確認いたします。

(1)改正にいたった背景

居住用建物として貸し付ける建物を取得した場合には、非課税売上である居住用家賃収入に対応する課税仕入れという事になるため、その居住用建物を取得する際に支払っている消費税については、仕入税額控除できない(=還付を受けることができない)です。

しかし、居住用賃貸住宅用の建物を取得する際に支払っている消費税を還付してもらうために、最近、頻繁に使われている手法に「金の売買を何回も行う事によって課税売上を高額にし、結果として、消費税の還付を受ける」というものがありました。


私も「1 年で何回取引したら良いですか?」と試算を依頼されたことがあります。
その時は、金を売買する頻度が高くなったので、「サラリーマンとして本業がある自分には無理です」と言われ、金取引はされなかったですが。
私も「金の売買は不動産とは全く関係ないですが・・・」と思いつつの試算でした。

(2)改正の概要

以下、税制改正大綱より
 ~居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度等の適正化~
住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産(*)に該当するもの(以下「居住用賃貸建物」という)の課税仕入れについては、仕入税額控除の適用を認めない事とす。

ただし、居住用賃貸建物のうち、住宅の貸付の用に供しないことが明らかな部分については、引き続き仕入税額控除制度の対象とする。
*高額特定資産とは、一の取引単位につき、課税仕入れに係る支払対価の額が1000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産を言う


つまり、従前の様々な報道で言われてきたように「金取引手法の封じ込め」等という表現は一切無く、要するに「居住用賃貸建物の課税仕入れについては仕入れ税額控除の適用を認めません」という事になりました。
わかりやすいですね。
もちろん、途中で居住用以外の建物になった場合等には調整の計算ができるようになっています。

 

原則として令和2 年10 月1 日以後に仕入を行った居住用賃貸建物に適用されます。

(3)最近の税制改正の方向性

今回の上記の改正もそうですが、令和1 年には、保険を利用した節税対策に対して、かなりメスが入りました。
印象としては「節税し過ぎている」と思われる手法に対しての規制をされているのかな、といったところです。
今後の税制改正の行方にも要注目です。

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