江口 正夫

弁護士

江口 正夫

1952 年生まれ、広島県出身。東京大学法学部卒業。弁護士(東京弁護士会所属)。最高裁判所司法研修所弁護教官室所付、日本弁護士連合会代議員、東京弁護士会常議員、民事訴訟法改正問題特別委員会副委員長、NHK文化センター専任講師、不動産流通促進協議会講師、東京商工会議所講師等を歴任。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会理事。

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この執筆者の過去のコラム一覧

2020/01/10

相続のための遺言書の作り方

Q 私には、長年連れ添ってくれた妻と2人の子がいます。
2人の子はいずれも40代となり、社会の中堅として働いておりますし、生活もそれなりに安定していると思っています。そこで、心配しているのは妻のことです。
妻は、私の体調を気にかけ、いつも私を支えてくれました。
そこで、私としては私が亡くなった後は、妻が老後の生活の心配がないように、私の遺産は全て妻に相続させたいと考えています。
2人の子には、私の気持ちを伝え、妻が亡くなった後、2人で平等に分け合ってほしいとの考えを伝えたいと思っています。

遺言書を残したいのですが、遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言と秘密証書遺言というものがあると聞きました。
どこが違うのでしょうか。また、一番多く使われている遺言書はどれなのでしょうか。


1 わが国における遺産書の方式

残されるご家族のために遺言書を作成しておくことは、相続人にとっては大変有り難いことです。
遺言書は、被相続人が、遺産分けに対する基本的な考え方を示すことができますので、相続人が遺言書に従って遺産分けをすることができるからです。

もっとも、遺言書は民法という法律で方式が決まっています。
それが、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3方式です。

2 自筆証書遺言

自筆証書は最も簡便に遺言書を作成することができます。証人も不要ですし、格別の費用もかかりません。
自筆証書遺言は、全文自筆で作成し、日付と署名捺印をすれば完成です。
従来は、遺言書の本文だけではなく、財産目録まで全て自筆で作成することが要件でしたが、平成31年1月13日から、民法が改正され、自筆証書は遺言書本文は自筆で作成する必要がありますが、財産目録はパソコンで作成したものや、不動産の登記事項証明書や預貯金証書のコピーでもよいとされています。
ただし、自筆でない財産目録は、そのページ毎に遺言者が署名し押印することが要件です。


自筆証書遺言は自分一人で作成でき、証人は不要です。
誰にも遺言を作成したことを知られることもありませんし、格別の費用もかかりません。
ただし、自分一人で作成するため、方式の不備などで無効とされたり、後日に相続人間で、これは被相続人の自筆ではないから無効であるなどの遺言の有効性を巡って争いを生じる必要があります。
また、誰にも知られないということは紛失してしまうと日の目を見ないことになってしまいますし、自筆証書遺言は、家庭裁判所に検認の申し立てをせずに勝手に開封することは禁止されています。

なお、民法(相続法)の改正に伴い、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(遺言書保管法)が制定され、令和2年7月10日に施行されます。
遺言書保管法は、法務局が遺言者から遺言書(無封の自筆証書遺言に限ります)を預かり保管する制度です。
遺言書保管制度を利用すると、検認が不要となり遺言者である被相続人が死亡した後、相続人は法務局に遺言書情報証明書の交付を申請し、遺言の実現をすることが可能です。

3 公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場の公証人に作成を委嘱します。
このため、公証役場に遺言書を保管してもらうためには、まず、証人2人を準備した上で公正証書遺言の作成を委嘱しなければなりません。

また、公正証書遺言は遺言の対象財産の額に応じ、手数料を納付する必要があります。
公正証書遺言は、遺産の額が5000万円を超え1億円以下の場合に4万3000円
1億円を超え3億円以下の場合は4万3000円に、超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下の場合は9万5000円に、超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合は24万9000円に、超過額5000万円までごとに8000円を加算した額となりますが、遺言書加算として、全体の財産が1億円以下のときは、上記によって算出された手数料額に、1万1000円が加算されます。

費用も手間もかかりますが、自筆証書遺言と比べると、法律の専門家である公証人が関与するため、遺言書が無効と主張されることが少ないこと、公証役場が遺言書原本を保管しますので紛失という事態がないこと、家庭裁判所の検認を経る必要がないというメリットがあります。

公正証書遺言は平成30年に11万件強、公正証書以外の遺言の検認数が平成30年に1万8000件弱という状況で、遺言書は公正証書遺言が多数を占めています。

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