ファイナンシャルプランナー

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久保 逸郎

老後のお金の不安を解消する、ライフプランと資産運用&資産管理の専門家
「90歳まで安心のライフプラン」を合言葉にして、豊かな人生の実現に向けたライフプラン作りの支援を行っている。
独立から約15年にわたり相談業務を中心に実務派ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて年間100回近い講演や、マネー雑誌やコラム等の原稿執筆を行うなど幅広く活動中。

この執筆者の過去のコラム一覧

2020/02/10

国民の資産形成手段の柱として、NISA、つみたてNISAを期間延長

2019年12月12日に与党(自由民主党・公明党)は「令和2年度税制改正大綱」を決定しました。
この大綱によれば、経済成長に必要な成長資金の供給を促すとともに、人生100年時代にふさわしい家計の安定的な資産形成を支援していく観点から、NISA(以下、一般NISA)とつみたてNISAともに投資できる期間を5年延長し、一般NISAは2028年末まで、つみたてNISAは2042年末まで投資できるようにするそうです。

一般NISAについては、一部から「富裕層優遇ではないか」という声が上がっていたこともあって、制度を廃止してつみたてNISAに一本化する可能性もあると考えていたので、少々驚きの内容でした。
また、ジュニアNISAについては、利用実績が乏しいことから延長せず、新規の口座開設を2023年までということになりました。

〈一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの制度概要と改正案〉

一般NISAは2階建ての制度に見直し

今回の改正案の主なポイントです。
①一般NISAの利用者にも積立投資を促す
現行120万円の非課税枠を、「1階部分」の20万円と、「2階部分」の102万円に分け、「1階部分」の投資対象商品についてはつみたてNISAと同様に限ることになります。また、「2階部分」の投資対象商品は、現行の一般NISAから整理銘柄の株式や高レバレッジ投資信託などを除くとされています。
その上で「1階部分」で積立投資を行った場合に限り、「2階部分」の非課税枠が利用できるようになるとのこと。

②つみたてNISAは2042年まで
つみたてNISAは現行法の2037年末までから、5年延長され、2042年末までに。これで2023年末までにつみたてNISAで投資を開始すれば、「20年間の積立投資」を行えることになります。

③ジュニアNISAの払い出し制限解除
ジュニアNISAは18歳までの払い出し制限があることが制度普及のネックになっていました。
そのため日本証券業協会などは中学校や高校などの学費にも充てられるよう、払い出し制限の柔軟化を求めてきましたが、今回の改正案で2024年から既存口座の払い出し制限が解除されることになります。
現時点では払い出しの細かいルールまでは明確になっていませんが、今回の改正で払い出し制限されることでジュニアNISAの使い勝手はよくなりそうですね。

積立投資を広く普及させることを図る制度改正

今回の改正案ですが、金融庁の「長期の積立投資」を広く普及させて、国民の自助努力による資産形成を促したい意図が強く表れている印象です。
また、一般NISAの「1階部分」の投資対象商品を、つみたてNISAと同様に限っていることは、既存の銀行・証券会社に対してさらなる低コスト化を求めていることも感じます。
ただでさえ超低金利環境やインターネット取引の増加などで経営環境が厳しくなっている銀行・証券業界ですが、今後の経営環境はさらに厳しいものになりそうです。

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