税理士

あんしん税理士法人

鹿田 幸子

福岡県出身。大学卒業後、大阪の会計事務所にて勤務。帰福後は、福岡の大手会計事務所に勤務し、幅広い業務に携わる。2007年税理士登録。2013年 12月安藤税理士事務所入所。2016年12月法人成(あんしん税理士法人)。社員税理士となる。かかりつけ医のような税理士を目指し日々研鑽中。
資格:税理士

この執筆者の過去のコラム一覧

2020/03/10

所有者不明土地対策について(令和2 年度税制改正大綱より)

昨年12 月12 日に、年末恒例の税制改正大綱が発表されました。
その中から、前回は、「居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度の見直し」について確認いたしました。

今回は、前々から巷で問題になっていました「所有者がわからない土地等にかかる固定資産税への対応の制度化」について簡単に確認いたします。

(1) 制度化にいたった背景

近年、情報番組等でも何度も取り上げられてますが、最近、所有者不明の土地等が全国的に増えていて、公共事業の推進や生活環境面においていろいろな問題が発生しています。
また、固定資産税の課税の公平性という側面から見ても、所有者の特定は重要な課題です。

一説によると、日本の国土の20%ほどが所有者不明な土地とのことです。面積にすると、九州の本島の面積より大きいのだとか。この調子だと2040 年には700 万ヘクタールを超えると予想されていました。北海道本島の面積に迫る勢いでした。

これらの課題に迅速かつ適切に対応するために、固定資産税の課税の面では、次の制度が導入されることになりました。

(2) 制度の概要

以下、税制改正大綱より(一部簡略表示)

① 現に所有している者の申告の制度化

市町村長は、その市町村内の土地等について、登記簿等に所有者として登記等がされている個人が死亡している場合、当該土地等を現に所有している者(以下「現所有者」という)に、当該現所有者の氏名住所その他固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができる。(令和2 年4 月1 日以後の条例施行日以後に現所有者であることを知った者ついて適用する。)

② 使用者を所有者とみなす制度の拡大

市町村は、一定の調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合には、その使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができることとする。これにより、使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録しようとする場合には、その旨を当該使用者に通知するものとする。(令和3 年度以後の年度分の固定資産税について適用する)

以上です。
①については「罰則を設ける」という注意書きが付されています。
気になるのは、上記の適用があった場合、過年度分はどうなるのか?
まさか遡って課税しませんよね?というところですね。

(3) 所有者不明土地問題の行方

上記制度化によって、少なくとも市町村の課税面での損失は減っていくでしょう。
また、これも去年随分報道されていたことなのですが、相続不動産の登記の義務化法案も、早ければ今年の国会に提出されようとしています。
一時は700 万ヘクタールを超える面積になると予想されていた所有者不明土地等ですが、そうならない方向への法整備や仕組みが一日でも早く整うと良いなと思います。

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