2020/04/10
遺言書保管法の施行と相続対策
Q 私は76歳になります。
私の妻は3年前に亡くなっており、相続するのは私の3人の子ですが、長男も次男も結婚した後は家を出て、仕事も忙しそうです。
私としては、長年にわたり私と亡妻と同居し世話をしてくれた長女に遺産の大部分を相続させたいと考えています。
そこで、そろそろ遺言を残しておきたいと考えていますが、せっかく遺言書を作成しても、私の死後、誰も遺言に気が付かない場合には日の目をみないことになってしまいますし、遺言書に気づいたとしても、長男や次男が、この遺言は私の意思に基づいたものではないと長女に言ったりすると、長女が大変な思いをするのではないかと心配です。
かといって、公正証書による遺言は証人が2人も必要だと聞いていますし、費用も高額だと聞いたことがあります。
私一人で、安心して遺言を作成する方法はないのでしょうか。
1「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(遺言書保管法)の制定
民法(相続法)の改正に伴い、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(遺言書保管法)が制定され、法務局が遺言者から遺言書を預かり保管する制度が始まります。
遺言書保管法は、令和2年7月10日に施行されます。
ただし、遺言書保管法により保管の対象となる遺言は、自筆証書遺言のみで、しかも無封の自筆証書遺言に限ります。
公正証書遺言、秘密証書遺言は保管の対象ではありません。
遺言書保管制度を利用する場合には、遺言者自らが法務局に出頭して自筆証書遺言の保管申請をすることになります。これにより、法務局が、その遺言は遺言者本人が持参し保管申請をした事実を確認することになります。
ただし、法務局は遺言の内容について検査するわけではありませんので、遺言書が有効であることが確定するわけではありませんが、当該遺言書が遺言者自らの意思により作成され、保管申請されたものであることは明らかになります。
なお、費用については下記のとおりです。
2 遺言書保管制度を利用するメリット
(1)検認が不要になる
公正証書遺言以外の遺言書は、これ見つけても直ちに開封することができません。
家庭裁判所に検認の申立てを行い、検認手続きを経ることが必要とされていますが、遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言は、家庭裁判所による検認手続きを経る必要がなくなります。
(2)遺言書保管事実証明書の交付
遺言書保管制度を利用した場合、遺言者である被相続人が死亡した後は、誰でも法務局に被相続人の遺言を保管しているか否かを問い合わせることができ、遺言書が保管されている場合には遺言書に記載された作成年月日、遺言書が保管されている遺言書保管所の名称及び保管番号を証明した書面(「遺言書保管事実証明書」といいます。)の交付を請求することができます。
これによって、仮に相続人が自宅内で遺言書をみつけることができなかったとしても、法務局に問い合わせることに因り、遺言書の存在を明らかにすることが可能になりました。
(3)遺言書情報証明書の交付
さらに、相続人は法務局に遺言書の内容を確認するため、遺言書情報証明書の交付を申請することが認められています。
遺言書情報証明書を取得すれば、預金債権を相続させるとされた相続人は、遺言書情報証明書に基づいて、金融機関に対し、被相続人名義の預金の払い戻しを請求することも可能になります。
被相続人が後継者と金融機関に対し、遺言書保管制度を利用して自筆証書遺言を作成していることを伝えておくことにより、相続人は被相続人の相続開始後、検認手続きを経ることなく、速やかに法務局から遺言書情報証明書を取得して、金融機関に預金の払い戻し請求をすることに因り、早期に金融資産を取得することが可能になり、相続後に資金を必要とする相続人の要請に応えることが可能になります。
以 上
Q 私は76歳になります。
私の妻は3年前に亡くなっており、相続するのは私の3人の子ですが、長男も次男も結婚した後は家を出て、仕事も忙しそうです。
私としては、長年にわたり私と亡妻と同居し世話をしてくれた長女に遺産の大部分を相続させたいと考えています。
そこで、そろそろ遺言を残しておきたいと考えていますが、せっかく遺言書を作成しても、私の死後、誰も遺言に気が付かない場合には日の目をみないことになってしまいますし、遺言書に気づいたとしても、長男や次男が、この遺言は私の意思に基づいたものではないと長女に言ったりすると、長女が大変な思いをするのではないかと心配です。
かといって、公正証書による遺言は証人が2人も必要だと聞いていますし、費用も高額だと聞いたことがあります。
私一人で、安心して遺言を作成する方法はないのでしょうか。
1「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(遺言書保管法)の制定
民法(相続法)の改正に伴い、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(遺言書保管法)が制定され、法務局が遺言者から遺言書を預かり保管する制度が始まります。
遺言書保管法は、令和2年7月10日に施行されます。
ただし、遺言書保管法により保管の対象となる遺言は、自筆証書遺言のみで、しかも無封の自筆証書遺言に限ります。
公正証書遺言、秘密証書遺言は保管の対象ではありません。
遺言書保管制度を利用する場合には、遺言者自らが法務局に出頭して自筆証書遺言の保管申請をすることになります。これにより、法務局が、その遺言は遺言者本人が持参し保管申請をした事実を確認することになります。
ただし、法務局は遺言の内容について検査するわけではありませんので、遺言書が有効であることが確定するわけではありませんが、当該遺言書が遺言者自らの意思により作成され、保管申請されたものであることは明らかになります。
なお、費用については下記のとおりです。
2 遺言書保管制度を利用するメリット
(1)検認が不要になる
公正証書遺言以外の遺言書は、これ見つけても直ちに開封することができません。
家庭裁判所に検認の申立てを行い、検認手続きを経ることが必要とされていますが、遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言は、家庭裁判所による検認手続きを経る必要がなくなります。
(2)遺言書保管事実証明書の交付
遺言書保管制度を利用した場合、遺言者である被相続人が死亡した後は、誰でも法務局に被相続人の遺言を保管しているか否かを問い合わせることができ、遺言書が保管されている場合には遺言書に記載された作成年月日、遺言書が保管されている遺言書保管所の名称及び保管番号を証明した書面(「遺言書保管事実証明書」といいます。)の交付を請求することができます。
これによって、仮に相続人が自宅内で遺言書をみつけることができなかったとしても、法務局に問い合わせることに因り、遺言書の存在を明らかにすることが可能になりました。
(3)遺言書情報証明書の交付
さらに、相続人は法務局に遺言書の内容を確認するため、遺言書情報証明書の交付を申請することが認められています。
遺言書情報証明書を取得すれば、預金債権を相続させるとされた相続人は、遺言書情報証明書に基づいて、金融機関に対し、被相続人名義の預金の払い戻しを請求することも可能になります。
被相続人が後継者と金融機関に対し、遺言書保管制度を利用して自筆証書遺言を作成していることを伝えておくことにより、相続人は被相続人の相続開始後、検認手続きを経ることなく、速やかに法務局から遺言書情報証明書を取得して、金融機関に預金の払い戻し請求をすることに因り、早期に金融資産を取得することが可能になり、相続後に資金を必要とする相続人の要請に応えることが可能になります。
以 上
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