久保 逸郎

ファイナンシャルプランナー

FPオフィス クライアントサイド

久保 逸郎

老後のお金の不安を解消する、ライフプランと資産運用&資産管理の専門家
「90歳まで安心のライフプラン」を合言葉にして、豊かな人生の実現に向けたライフプラン作りの支援を行っている。
独立から約15年にわたり相談業務を中心に実務派ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて年間100回近い講演や、マネー雑誌やコラム等の原稿執筆を行うなど幅広く活動中。

この執筆者の過去のコラム一覧

2020/06/10

根拠がない上昇相場はいつまで続くか?

2020年5月25日に安倍総理が会見し、全国での非常事態宣言が解除されることを発表しました。
今後については3密を避ける新たな生活様式を取り入れつつも、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済の立て直しを図っていくことになります。

それでは今回の新型コロナウイルスによる経済へのダメージはどの程度のものなのでしょうか?
南米などの新興国では、これから感染拡大していくことが予想されるため、あくまでも現時点での数字になりますが、確認をしておきたいと思います。

世界全体の成長率がマイナスに

国際通貨基金 (IMF)が2020年4月14日に発表した最新の世界経済見通しでは、2020年の世界全体の成長率はマイナス3.0%と予想されています。
今年1月時点の予想ではプラス3.3%と見込んでいたので、6.3%もの大幅な下方修正したことになります。
成長率がマイナスになるのは、リーマンショック後の2009年のマイナス0.1%以来で、1929年以降に世界を深刻な不況に陥れた大恐慌以降では、最悪の景気後退になる可能性が非常に高いとの危機感を示しています。

各国の状況はというと、これまで経済が堅調で、世界経済の牽引役になってきた米国の経済成長率は2019年のプラス2.3%から、2020年はマイナス5.9%まで急落すると予想されており、これは第二次世界大戦後の1946年以来との大変な落ち込みです。
また、世界第二位の経済大国である中国は、2020年の経済成長率は1.2%でかろうじてプラス圏はキープするものの、1月の予想からは4.8%も引き下げられ、こちらも大幅な減速が見込まれています。
現時点(2020年5月25日現在)で米国に次いで死者が多い欧州は、やはり新型コロナウイルスの影響は大変大きくなっており、2020年の経済成長率はドイツがマイナス7.0%、フランスはマイナス7.2%、イタリアはマイナス9.1%、スペインはマイナス8%と大変厳しい見通しになっています。
そして日本ですが、2020年の経済成長率はマイナス5.2%で、欧米に比べてマイナス幅は小さく感じますが、2021年の成長率は3.0%にとどまることが見込まれており、欧米に比べてやや弱い回復になることが見込まれています。

景気回復を予想するも不確実性が存在

IMF は回復の時期について、 新型コロナウイルスによる日米欧の経済への影響は4~6月期が最悪期で、景気は2020年後半から持ち直すと見ているようです。
2021年には回復が軌道に乗り、世界全体の成長率は5.8%まで高まると予想しています。
リーマンショックの翌年の2009年は経済成長率マイナス0.1%まで落ち込んだものの、翌2010年はプラス5.4%のプラス成長になったように、今回も落ち込みが大きかった分だけ、数字的には大きな回復が見込まれています。

ただこの予測も IMF によれば、基本シナリオといえるもので、今後の状況次第では相当な不確実性が存在するとのこと。

新型コロナウイルスの世界的流行と拡散防止措置が長引く、新興市場国と発展途上国の経済がさらに深刻な打撃を受ける、金融環境のタイトな状態が続く、あるいは企業倒産や失業の長期化の結果、危機の爪痕が烙印のように消えずに影響が広範囲に残ることがあれば、成長率はさらに予想を下回る可能性が高いとされています。

そのため IMF は2020年に経済活動が再開する基本シナリオ①に加えて、②2020年中の感染拡大の封じ込めに失敗したケース、③新型コロナウイルスの感染拡大の封じ込めには成功するものの、2021年に再び流行するケース、④封じ込めにも失敗して2021年に再流行の4つに分けて経済見通しを分析しています。
封じ込めにも失敗して2021年に再流行という最悪のシナリオ④になった場合、2021年の世界経済は基本シナリオより8%も縮小するとのこと。
つまりは今後の新型コロナウイルスの感染拡大次第で状況は変化するため、不確実な部分が多いということです。

根拠のない相場に踊らされない

各国の中央銀行による強烈な金融緩和や財政出動を追い風に、日経平均株価は20741円まで回復、米国の代表的な株式指数S&P500も2955ポイントまで戻すなど(2020年5月25日)、マーケットには回復してきた感が漂っていますが、現実的には企業利益は落ち込んでおり、また、来期の決算見通しを発表できない企業も多い状況です。
株価が収益(1株当たり利益)の何倍まで買われているかを見るPER(株価収益率)でみれば、日経平均株価のPERはもうすでに20倍を超えています。通常は14~16倍あたりで推移することが多いことからすると、いくら株式市場は先行指標という特性があるにしても、行き過ぎというか「根拠がない上昇相場」と言えるのではないでしょうか。

これから企業の業績予想の下方修正が相次ぐことが予想されます。それどころか信じられないような大企業の破綻が起きるかもしれません。
実際のところ外国人投資家は、日本株に対して冷静な見方をしており、2月から一貫して売り越しを続けています。それでは誰が株式を買っているのかというと、今回の株価上昇の要因は日本銀行によるETF買いや、公的年金によるものだと見られています。
また、経験の浅い個人投資家も株式を買っているみたいですね。

このような不透明な環境の中での、根拠のない相場に踊らされるのではなく、企業利益などをしっかりとウォッチしながら冷静に投資を行っていただきたいと思います。

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