(株)大洋不動産

相続マインズ福岡

小峰 裕子

平成元年より不動産業に従事。不動産におけるすべての判断はオーナーご家族の幸せや将来設計に多大な影響を及ぼすことを実感する。1999年にCFP®資格取得、2000年にNPO法人相続アドバイザー協議会養成講座1期生として研修を受け、相続に強い不動産の専門家として不動産管理運営の相談業務を中心に、セミナー講師や不動産相続のサポート業務を行っている。
大洋不動産常務取締役・相続マインズ福岡代表
CFP®(1級ファイナンシャルプラン技能士)
CPM®(米国公認不動産経営管理士)

この執筆者の過去のコラム一覧

2020/08/10

遺言を書いて届けてみた!~法務局の遺言書保管制度スタート~

遺言は、大きく分けるとふた通りのやり方があります。
ひとつは公証役場で作成する公正証書遺言、もうひとつは自分で全文手書きで作成する自筆証書遺言です。この自筆証書遺言ですが、今年の7月10日から法務局で保管してくれる制度がスタートしています。

まず遺言を書いてみた

自筆証書遺言は手軽に書けますが、本人死亡後に発見されなかったり一部相続人による改ざんなども指摘されていました。こうした問題を解決するために、法務局で保管する制度がつくられました。
費用は3,900円。早速、私も遺言を書いて制度を利用してみることにしました。

遺言の内容は、難しく考えずシンプルなものにしておきました。
極論を言えば「私は私が所有する財産を○○(昭和○年○月○日生)に相続させる」。これも十分有効な遺言です。
あとは日付と住所を書いて署名捺印をするだけです。
ちなみに内容を変えたくなったときは、新しく書けば基本的に古い遺言は取り消されます。

死亡時に通知して欲しい人や遺言執行者の指定も

遺言の内容が決まったら、保管してもらうための準備です。
あらかじめ申請書を作成しておきますが、申請書は法務省のHPからダウンロードできます。http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
5枚ありますが、文字はパソコンから入力することも出来ます。


申請書では、死亡時に通知して欲しい人や遺言執行者の指定もできます。
遺言執行者は、死亡時に未成年や破産者でなければ誰でもなれます。私自身も遺言作成のお手伝いの際は、遺言執行者についてお伝えするようにしています。
煩雑な相続手続きに手間を取られずにすむようにという、お子様達への時間のプレゼントですね。

 

ちなみにHPからは、他に遺言書の書式もダウンロードもできますので、それを利用しました。
なお捺印は認印でも大丈夫ですが、本籍の記載がある住民票の添付が必要です。

当日は待ち時間を覚悟しておく

申請書類と遺言書の準備ができたら、次は法務局を訪れる日時の予約です。これもHPの専用ページだと24時間365日可能で便利です。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00010.html
持ち時間は1時間20分ずつで区切られていて私は14:00~15:20の時間帯を予約しました。

当日、すぐに入室し申請書類に不備がないかの遺言書保管官のチェックを受けます。
マスクを外して本人確認も受けます。顔写真付証明書ということで、運転免許証を持参。マイナンバーカードでも良いので、作っておくと便利です。
ここまで数分で終わりましたが、次の遺言書チェックはいったん退出、携帯に連絡が入るまで、1時間近く要しました。知り合いはもっとかかったと言います。

相続を知られたくない相続人がいるなら公正証書遺言

さて、先ほどの保管官から保管証を受け取り無事に手続きが終わりました。
実際私が死んだら、自筆証書遺言の場合、相続人は速やかに家庭裁判所の検認手続きの申請(相続人に遺言の存在と内容を知らせ、検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続)をしなければなりません。時間と手間がかかるんです。
これ、保管制度を利用すれば検認は不要ですから、すぐに遺言内容に沿って預貯金の引き出しなど手続きを始めることが出来るというメリットがあります。

ただ相続人のひとりが保管してある遺言の内容の証明書交付を受けたら、他の相続人にも通知が行きます。
つまり、私が死んだことを知られたら面倒な相続人がいるなら、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言が良いということになります。

まだ早いと思っている方、縁起でもないという方へ

士業の先生方は、より確かな公正証書遺言の作成をすすめることが多いかもしれません。ただ、それほど財産があるわけでもなく争うこともないと思えば、自筆証書遺言で十分なケースも多いのではないでしょうか。
遺言はお子さま達への財産承継への羅針盤となります。
何もないよりあったほうが絶対いいと思う立場から、まずご自分で遺言を書いてみることをおすすめめします。

法務局に保管してもらう手続きを踏めば、遺言の法律的な要件は満たします。
ただしです。内容までは審査されませんから、万全な効果を得られるかは要注意です。
すこしでも不安があればご相談ください。申請の手続きまでお手伝いさせて頂きます。

まだ早いと思っている方、遺言は頭が元気な時にしか書けません。
縁起でもないという方、遺言は「遺書」ではありません。
「死ぬこと」と「遺言を書くこと」は全く別なことです。難しく考えず書いてみましょう。
その大切さと安心感に、きっと気が付かれると思います。

すべての著作権は(株)大洋不動産に帰属しています。無断転載は固くお断りいたします。