久保 逸郎

ファイナンシャルプランナー

FPオフィス クライアントサイド

久保 逸郎

老後のお金の不安を解消する、ライフプランと資産運用&資産管理の専門家
「90歳まで安心のライフプラン」を合言葉にして、豊かな人生の実現に向けたライフプラン作りの支援を行っている。
独立から約15年にわたり相談業務を中心に実務派ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて年間100回近い講演や、マネー雑誌やコラム等の原稿執筆を行うなど幅広く活動中。

この執筆者の過去のコラム一覧

2020/10/10

withコロナ時代のREIT投資戦略

国内の公募追加型株式投信(ETF を除く)の純資産総額の内、約1割をREITファンドが占めています。
国内の投資家にとってREITというのは、それだけ影響が大きい資産クラスですが、今年2月~3月にかけてはコロナショックで瞬間的に大きく暴落しました。
その後も株式に比べて出遅れた回復になっているため、今後の動向が気になっている方も多いのではないでしょうか。

今後のREIT市場の見通しですが、大変判断が難しい状況です。
それは「REIT」と一言で表しても、それぞれ全く用途が異なっており、特徴が異なっているためです。REITと言っても一括りに考えてしまってはいけません。

それでは主要セクター別の今後の動向についてはどうでしょうか。

オフィス

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、多くの企業が仕事のやり方を抜本的に見直しています。日本国内を例に挙げると、7月6日に富士通がグループ会社社員約8万人に対して、在宅勤務を標準とする働き方に移行すると発表しました。
また、日立も2021年4月から社員約3万3000人の約7割を対象に、週2~3日を在宅勤務にすると発表しています。

それではREITの中心であるオフィス需要は、在宅勤務・テレワークの広がりに伴い、特に都市部を中心にオフィス需要が減少していくと思われます。
企業にとっては、賃料が高い都市部のオフィス面積を小さくすることで、オフィスコストを大幅に削減できるメリットは大変大きいものですからね。

一方で、従業員にとっても新型コロナウイルスへの感染リスクを気にしながら通勤する必要がないため、安心感がありますし、時間の使い方や居住場所の選択肢が広がります。
このように企業と従業員の双方にとってメリットがあるため、オフィス需要の減少が加速して、都市部のオフィス物件の空室率が大幅に上昇していくのではないでしょうか。

小売り

足元の小売セクターは、コロナ禍における外出自粛要請でテナントの客数が減り、経営状況の悪化が深刻です。これはそのまま稼働率の悪化や賃料減額に直結してしまうため、REITの収益を押し下げる要因になってきます。

また、小売セクターの動向については、短期的な部分と長期的な部分で分けて考える必要があります。
短期的には新型コロナウイルスの感染拡大次第という面が強く、どの程度のレベルで営業活動を再開して、それを維持できるのかといった点が注目材料です。そのため新型コロナウイルスの感染者数の推移を注意深く見守っていく必要があるでしょう。

一方、長期的な視点で考えれば、特に賃料減額の影響は長期間に及ぶ可能性が高いため、目先の稼働率よりもテナント賃料の動きに注意を払っていく必要があると思われます。個人的にはこちらの影響のほうが心配ですね。

住宅セクター

一般的に個人が転居する頻度は企業のオフィス移転の頻度に比べて少なく、また、都市部の住宅は底堅い需要があるため、賃料下落リスクは比較的小さいとされていますが、しかし、コロナ禍においてはこのような常識は通用しないかもしれません。

企業が今後在宅勤務・テレワークを増やしていった場合、従業員は都心にあるオフィスに毎日通勤する必要がなくなるため、わざわざ賃料が高い都市部に住むよりも、広いスペースで生活できる郊外や地方に住みたいというニーズが高まってくるのではないでしょうか。

実際にそのような動きがもう起こり始めていますし、新型コロナウイルスはそれだけ私たちの価値観を大きく変えようとしています。
オンライン会議システムを用いて仕事をする機会が増えるため、狭くてもいいから仕事に集中できる環境が欲しいというニーズが高まっており、比較的若いファミリー世代を中心に、住宅需要は都市部から郊外・地方に少しずつシフトしていくように思われます。

このような動きは、長期的に住宅型REITの賃料下落に繋がってくる可能性があります。

物流セクター

REITの中でとくに成長性が高いと見られているのが、倉庫などの物流セクターです。
新型コロナウイルスの感染拡大で巣ごもり消費が拡大し、インターネット通販の需要が増しています。

それに伴い商品を保管する倉庫の需要が高まっており、日本国内の物流系REITを例にすると、既に稼働率が100%近くに達しています。
後の需要増加も見込めることから賃料下落圧力もほぼないと言っていい状況です。

ホテルセクター

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ホテルセクターは大変厳しい状況が続いています。
今年3月の大幅調整からある程度回復してきたセクターが多い中、ホテルセクターの戻りは小幅にとどまっています。
今後もコロナ禍が落ち着いてくるまでは、ホテルセクターの厳しい状況は続くと思われるため、短期的な回復は望みにくいですね。

とくに日本国内においては東京五輪開催に向けてインバウンド需要が高まるとの期待から、都市部を中心に過剰供給の状態にあったため、ホテルセクターの回復には相当な期間がかかるのではないでしょうか。
GoToトラベルキャンペーンで一時的な回復は期待できると思いますが、しばらくはインバウンド需要の回復期待が持てないことから、一部にはホテルからの業態転換を迫られるところも出てくるでしょう。

新型コロナウイルスの影響でセクター毎に大きく環境が異なる状況では、パッシブ戦略を取るよりも、個別のREITを厳選して保有するか、またはアクティブファンドを活用したほうが良いかもしれませんね。
過去に高い配当利回りを求めた結果として、ポートフォリオのREITのウエイトが高くなってしまっている場合には、ウエイトを下げるようにしたほうがいいかもしれません。

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