2021/03/10
「相続空き家」何もしないは禁物に
相続登記「義務化」へ
3月5日、所有者が不明な土地について、民法と不動産登記法の改正案が閣議決定されました。
今国会で成立すれば、2023度にも施行される予定です。
所有者が不明というのは、相続の際に親の家や土地を「誰が相続した」という所有者名義変更をしないまま長年ほったらかしにするなどした結果です。
相続登記をするにもお金がかかりますよね。もらってうれしい財産なら、話し合いなり裁判なりで争ってでも何とか決着、自分名義に登記をするでしょう。しかし、そうはならない不動産があるのです。
荒れ放題の相続空き家、ご近所で見かけませんか?
その土地の接道はわずか20センチ
数年前のこと、売却を依頼された土地の裏手に、とてつもなく荒れ果てた空き家が建っていました。
売却を依頼された土地(A地とします)は場所も良く、すぐ買い手はつきそうでしたが、問題は空き家が建つ土地(B地とします)の接道状況です。道路に20センチほどしか面していません。
建築基準法では、土地は前面道路に2メートル以上接していなければ建物が建てられない、としています。20センチでは建物が建てられないどころか、もしA地に建物が建てば空き家の解体工事ばかりか人の出入りすらできない、いわゆる「死に地」になってしまいます。
奥の法面は竹やぶの崖です。今のタイミングで一緒に売るのが一番です。
「死に地」にしたくない
相続人のお一人と会うことが出来ました。
お話を伺うと、相続人は全部で5人、皆さん高齢で連絡を取り合うこともないということがわかりました。A地と一緒に売却しないとどうにもならないということは承知していらっしゃいますが、「A地と同じ値段でないと売らない」と言って譲りません。
B地単独での商品価値は、むごいかもしれませんが値がつけば御の字という土地です。依頼者の方と話し合い、結局ご依頼はお断りしました。
A地単独での売却はもちろん可能ですが、B地を「死に地」に追いやるような仕事は私には出来ません。土地に関わる仕事をする端くれですが、天罰が下るように思えてなりません。
ほどなくA地に新しい家が建ちましたが、B地はもう荒れ放題です。
相続でもらって嬉しい不動産にする
B地の相続人の方々は、相続でもらっても困って、そのままにしていたのだろうと思います。売却のタイミングや条件はともかく、もらって嬉しいものではなかったのは確かでしょう。
今回の改正案では、その改善につながる方策が示されています。具体的に見てみましょう。
もらって嬉しい不動産 その①
所有者と不動産登記名義人が一致している
改正案には「相続登記の義務化」が盛り込まれています。相続開始から3年以内に登記することや、違反すると10万円以下の過料などの措置がとられます。
たとえば、遺産分けの話し合いがまとまらないなどの理由で、相続登記をしていないケースもあると思いますが、相続開始から10年を過ぎると「原則法定相続割合で分ける」ことになりますから要注意です。もらって嬉しい不動産でなくても、持たされることになります。
売却など何をするにも全員の合意が必要ですが、それだけに共有ではなく誰がどう相続するか決めて、登記をしておくことが肝要ではないでしょうか。
もらって嬉しい不動産 その②
隣接地との境界が確定している
相続登記義務化の法案には、相続人が不要と判断した土地を国が引き取る「土地所有権の国庫帰属制度」という仕組みが新設されます。
審査基準として「境界が確定している」ことが条件のひとつとされており、これ、境界でもめるような土地を残さないのは親の務めと言っても良いと思います。
それには境界について知っている人が、生きているうちに済ませておくことが肝心です。万が一お隣さんが認知症だと、進む話もストップしてしまいます。
土地の商品化とは資産価値を確定すること
いかがですか?
もらって嬉しい不動産とは、必要なら売却したり国に引き取ってもらったりできること、つまり商品として価値ある不動産にしておくことに他ありません。今回の改正はその最低限の道筋を法案によって義務づけるものですし、結果としてもらって嬉しい不動産という資産にしておくことは「相続空き家」にさせない、しないために大切な事だと思っています。
いずれにしても、親の家を長く放置すれば思わぬ負担を強いられかねないようです。
不動産と相続のプランニングというのは短期間でできることではありません。「どうしようか」と早めに親と、またお子さんと話し合うきっかけにしていただければ幸いです。
相続登記「義務化」へ
3月5日、所有者が不明な土地について、民法と不動産登記法の改正案が閣議決定されました。
今国会で成立すれば、2023度にも施行される予定です。
所有者が不明というのは、相続の際に親の家や土地を「誰が相続した」という所有者名義変更をしないまま長年ほったらかしにするなどした結果です。
相続登記をするにもお金がかかりますよね。もらってうれしい財産なら、話し合いなり裁判なりで争ってでも何とか決着、自分名義に登記をするでしょう。しかし、そうはならない不動産があるのです。
荒れ放題の相続空き家、ご近所で見かけませんか?
その土地の接道はわずか20センチ
数年前のこと、売却を依頼された土地の裏手に、とてつもなく荒れ果てた空き家が建っていました。
売却を依頼された土地(A地とします)は場所も良く、すぐ買い手はつきそうでしたが、問題は空き家が建つ土地(B地とします)の接道状況です。道路に20センチほどしか面していません。
建築基準法では、土地は前面道路に2メートル以上接していなければ建物が建てられない、としています。20センチでは建物が建てられないどころか、もしA地に建物が建てば空き家の解体工事ばかりか人の出入りすらできない、いわゆる「死に地」になってしまいます。
奥の法面は竹やぶの崖です。今のタイミングで一緒に売るのが一番です。
「死に地」にしたくない
相続人のお一人と会うことが出来ました。
お話を伺うと、相続人は全部で5人、皆さん高齢で連絡を取り合うこともないということがわかりました。A地と一緒に売却しないとどうにもならないということは承知していらっしゃいますが、「A地と同じ値段でないと売らない」と言って譲りません。
B地単独での商品価値は、むごいかもしれませんが値がつけば御の字という土地です。依頼者の方と話し合い、結局ご依頼はお断りしました。
A地単独での売却はもちろん可能ですが、B地を「死に地」に追いやるような仕事は私には出来ません。土地に関わる仕事をする端くれですが、天罰が下るように思えてなりません。
ほどなくA地に新しい家が建ちましたが、B地はもう荒れ放題です。
相続でもらって嬉しい不動産にする
B地の相続人の方々は、相続でもらっても困って、そのままにしていたのだろうと思います。売却のタイミングや条件はともかく、もらって嬉しいものではなかったのは確かでしょう。
今回の改正案では、その改善につながる方策が示されています。具体的に見てみましょう。
もらって嬉しい不動産 その①
所有者と不動産登記名義人が一致している
改正案には「相続登記の義務化」が盛り込まれています。相続開始から3年以内に登記することや、違反すると10万円以下の過料などの措置がとられます。
たとえば、遺産分けの話し合いがまとまらないなどの理由で、相続登記をしていないケースもあると思いますが、相続開始から10年を過ぎると「原則法定相続割合で分ける」ことになりますから要注意です。もらって嬉しい不動産でなくても、持たされることになります。
売却など何をするにも全員の合意が必要ですが、それだけに共有ではなく誰がどう相続するか決めて、登記をしておくことが肝要ではないでしょうか。
もらって嬉しい不動産 その②
隣接地との境界が確定している
相続登記義務化の法案には、相続人が不要と判断した土地を国が引き取る「土地所有権の国庫帰属制度」という仕組みが新設されます。
審査基準として「境界が確定している」ことが条件のひとつとされており、これ、境界でもめるような土地を残さないのは親の務めと言っても良いと思います。
それには境界について知っている人が、生きているうちに済ませておくことが肝心です。万が一お隣さんが認知症だと、進む話もストップしてしまいます。
土地の商品化とは資産価値を確定すること
いかがですか?
もらって嬉しい不動産とは、必要なら売却したり国に引き取ってもらったりできること、つまり商品として価値ある不動産にしておくことに他ありません。今回の改正はその最低限の道筋を法案によって義務づけるものですし、結果としてもらって嬉しい不動産という資産にしておくことは「相続空き家」にさせない、しないために大切な事だと思っています。
いずれにしても、親の家を長く放置すれば思わぬ負担を強いられかねないようです。
不動産と相続のプランニングというのは短期間でできることではありません。「どうしようか」と早めに親と、またお子さんと話し合うきっかけにしていただければ幸いです。
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