蔵茂 暉大

ファイナンシャルプランナー
長野県で生まれる。
大学時代は東北地方で過ごし、旅行会社への就職を夢見て独学で国家資格である「旅行業務取扱主任者」を取得するが銀行員だった父親の影響もあり大手地方銀行に就職。
旅行業界の知識も生かし現職では全国に顧客を持つ。

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2021/04/10

新しい一万円札の顔 渋沢栄一さんはご存知ですか?

令和6年(2024年)に発行される新一万円札は、最近少しずつ話題になって来ているが、そこには渋沢栄一さんという人物と東京駅が刻まれるそうだ。

この渋沢栄一という人物を皆様はどのくらいご存知だろうか?

彼は近代日本経済の父と称されるがそれは何故なのか見ていきたいと思う。

天保11年(1840年)に彼は埼玉県深谷市に生まれた。
私は埼玉県在住で深谷市にも近いところで生活しているので、最近放映のドラマでも話題になっていることから良く名前を聞いている。
しかし、あまり詳しくどんな人物なのか知識がなく、この機会に是非知っておきたいと思い、情報を取り寄せてみた。

500社ほどの会社設立に関わる

まず驚くのは、彼は現在の株式上場している会社中心に約500社ほどの会社を設立していることだ。
銀行にも多く携わっており、例えば第一国立銀行、 現在のみずほ銀行なども彼が設立育成に関わっている。

社会インフラの整備にも貢献

また、日本の鉄道は世界にも類を見ないレベルの高さを誇っているが、その基礎となる日本国有鉄道(国鉄)の前、つまり日本の鉄道が国有化される前の民間鉄道会社の71社は渋沢さんが関与して設立されたという。

渋沢さんは、慶応3年(1867年)のパリ万博に徳川慶喜の名代として派遣され、パリ滞在中に鉄道や上下水道など社会インフラを見てまわる。
そこで学んだ渋沢さんは日本の近代化を進めるためには金融と社会インフラを整備することが必要と考えたようだ。

その後わずか30年余りで鉄道網が全国に広がったのだが、日清戦争前後から鉄道の国有化を求める声が軍部から沸き上がって来た。
だが、渋沢は国有化には猛反対していたようだ。理由は官営になると採算を度外視してしまうことが往々にしてあり、経営に悪影響があるからだという。

実際国有化された鉄道の経営悪化が問題となり、再び全国で会社が分割され民営化されたのが現在のJR各社であるのは皆さんの記憶に新しいだろう。
その他富岡製糸場などをはじめ、後に日本経済を発展させる原動力となる全国の製糸業にも大きな影響を与えている。

お金だけではダメ

経済発展に大きな貢献をした渋沢栄一さんだが、私はその活躍を皆さんに知って頂きたいのは当然なのだが、もっと知って頂きたいことがある。

彼は経済を発展させることに大きな功績を残したが、その過程で道徳もとても大切だと説いている。
第一次世界大戦の後の好景氣、そして、その後のバブル崩壊を目の当たりにした渋沢さんは「論語と算盤」を説き始めた。

「モラルのない経済活動を行っていると、一時的にうまくいったとしても、信用を無くしてしまい、長続きしません」と彼は語り、両方が必要でどちらかが欠けても上手く行かないのだという。
また、利益を上げて豊かにならないと道徳心は育たないし、豊かになるからこそ道徳行為ができるのだとも説いている。

渋沢栄一さんの時代と現在は状況が似ている

彼が活躍した時代は、まさに世の中が混沌とし、新しい時代が生まれる前のいろいろな問題が起こっていた。
時代背景は現在と同じような混乱の時代だったと思う。

現在は、これから風の時代と言われ、私は「金持ち」よりも「人持ち」が豊かな人生を手に入れる秘訣ではないかと思っているが、渋沢さんも現在と同じような時代に生きて、危機感を持っていたからこそ「論語と算盤」という考え方が必要だと考えたに違いない。
そこで述べられている数々の言葉は、同じ時代を背景に生きる私達は大いに参考にすべきではないだろうか?

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