2021/10/10
遺言書作成の要否
Q 私には妻と二人の子がいます。
私は70歳ですが妻は64歳、二人の子は、長男が42歳で結婚した後、他県でサラリーマンをしており、既に自宅を購入しています。その際、私は長男に自宅購入資金として400万円を用立てています。
次男は38歳になりますが、結婚して嫁と一緒に私達夫婦と同居してくれています。
私の財産は自宅の土地建物(評価額が約6,000万円)のほかには預貯金(約600万円)があるくらいです。借金はありません。
私としては、私が亡くなった後の妻の生活が心配です。
さいわいなことに次男夫婦が同居してくれていますので、自宅の土地建物を次男が相続してくれれば安心だと思っていますが、長男がそれに同意してくれるかは、何とも言えません。
私の死亡後に、相続で家族が揉めないようにと思っているのですが、良い方法はありますでしょうか。
1 ご相談者が死亡された後の遺産の法律関係
まず、ご相談者が、何も手を打つことなく死亡されると、どのような事態になるかということを正確に認識しておく必要があると思います。
そのことを定めているのが民法という法律です。
民法898条は「相続人が数人ある時は、相続財産は、その共有に属する。」と定め、同899条は「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。」と定めています。
つまり、相談者がお亡くなりになると、自宅の土地建物は奥様がその法定相続分である2分の1、長男と次男の方がそれぞれ法定相続分である4分の1の割合で、600万円の預金も奥様が2分の1の300万円、長男と次男の方がそれぞれ4分の1の各150万円の割合で共同所有していることになります。
この共同所有になっている財産を、奥様と二人のお子様のうち、誰が取得するかを決めていくことになります。
2 遺産分割協議
共同所有となっている遺産を、現実的に誰が取得するのかを決めるのが遺産分割協議といわれるものです。
ここで気をつけなければならないのは、遺産分割協議は多数決では成立しないということです。遺産分割協議は相続人の全員一致でなければ成立しません。
仮に、奥様と次男の方が、自宅の土地建物はこれまで居住してきた奥様と次男が取得したいとの希望を述べても、長男が、この家は自分にも想い出があるので、長男が取得したいと言って、話し合いがまとまらなければ、奥様と次男が自宅の土地建物を取得することはできません。
話し合いが成立しなければ、家庭裁判所に遺産分割の調停や審判(家庭裁判所が遺産の分配内容を決定する手続)を申し立てることになりますが、御長男は全遺産(合計6,600万円)の4分の1の割合の相続分(1,650万円)を有しています。
仮に奥様と次男が自宅の土地建物を取得すると、法律上は、長男には法定相続分に相当する1,650万円の資産を渡さなければなりません。
しかし、自宅の土地建物以外には600円の預金しかありませんから、預金は全て長男に取得させた上に1,050万円は自己の固有財産から工面しなければなりませんが、これには相当の無理が生じます。
長男が、自分は600万円の預金だけでいいと言ってくれれば、問題はないのですが、そうでない場合には立ち往生することになってしまいます。
3 遺言の作成
これらは、自宅の土地建物や預貯金が共同所有になってしまうために生じるのですが、相談者の死亡と同時に、遺産である土地建物や預貯金を共有状態にしない方法があります。
それが「遺言」です。
たとえば、自宅の土地建物については奥様の名義にすると今後の奥様の相続の際にまた相続税がかかることを考慮して次男に相続させると遺言し、600万円の預貯金は長男に相続させると記載しておけば、その通りになります。
その際、長男には自宅購入の際に400万円を用立てたこと、次男はご相談者夫婦と同居して長年にわたり面倒を見てくれたことに報いたいので、是非了承してほしいと遺言に記載しておくことも可能です。
Q 私には妻と二人の子がいます。
私は70歳ですが妻は64歳、二人の子は、長男が42歳で結婚した後、他県でサラリーマンをしており、既に自宅を購入しています。その際、私は長男に自宅購入資金として400万円を用立てています。
次男は38歳になりますが、結婚して嫁と一緒に私達夫婦と同居してくれています。
私の財産は自宅の土地建物(評価額が約6,000万円)のほかには預貯金(約600万円)があるくらいです。借金はありません。
私としては、私が亡くなった後の妻の生活が心配です。
さいわいなことに次男夫婦が同居してくれていますので、自宅の土地建物を次男が相続してくれれば安心だと思っていますが、長男がそれに同意してくれるかは、何とも言えません。
私の死亡後に、相続で家族が揉めないようにと思っているのですが、良い方法はありますでしょうか。
1 ご相談者が死亡された後の遺産の法律関係
まず、ご相談者が、何も手を打つことなく死亡されると、どのような事態になるかということを正確に認識しておく必要があると思います。
そのことを定めているのが民法という法律です。
民法898条は「相続人が数人ある時は、相続財産は、その共有に属する。」と定め、同899条は「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。」と定めています。
つまり、相談者がお亡くなりになると、自宅の土地建物は奥様がその法定相続分である2分の1、長男と次男の方がそれぞれ法定相続分である4分の1の割合で、600万円の預金も奥様が2分の1の300万円、長男と次男の方がそれぞれ4分の1の各150万円の割合で共同所有していることになります。
この共同所有になっている財産を、奥様と二人のお子様のうち、誰が取得するかを決めていくことになります。
2 遺産分割協議
共同所有となっている遺産を、現実的に誰が取得するのかを決めるのが遺産分割協議といわれるものです。
ここで気をつけなければならないのは、遺産分割協議は多数決では成立しないということです。遺産分割協議は相続人の全員一致でなければ成立しません。
仮に、奥様と次男の方が、自宅の土地建物はこれまで居住してきた奥様と次男が取得したいとの希望を述べても、長男が、この家は自分にも想い出があるので、長男が取得したいと言って、話し合いがまとまらなければ、奥様と次男が自宅の土地建物を取得することはできません。
話し合いが成立しなければ、家庭裁判所に遺産分割の調停や審判(家庭裁判所が遺産の分配内容を決定する手続)を申し立てることになりますが、御長男は全遺産(合計6,600万円)の4分の1の割合の相続分(1,650万円)を有しています。
仮に奥様と次男が自宅の土地建物を取得すると、法律上は、長男には法定相続分に相当する1,650万円の資産を渡さなければなりません。
しかし、自宅の土地建物以外には600円の預金しかありませんから、預金は全て長男に取得させた上に1,050万円は自己の固有財産から工面しなければなりませんが、これには相当の無理が生じます。
長男が、自分は600万円の預金だけでいいと言ってくれれば、問題はないのですが、そうでない場合には立ち往生することになってしまいます。
3 遺言の作成
これらは、自宅の土地建物や預貯金が共同所有になってしまうために生じるのですが、相談者の死亡と同時に、遺産である土地建物や預貯金を共有状態にしない方法があります。
それが「遺言」です。
たとえば、自宅の土地建物については奥様の名義にすると今後の奥様の相続の際にまた相続税がかかることを考慮して次男に相続させると遺言し、600万円の預貯金は長男に相続させると記載しておけば、その通りになります。
その際、長男には自宅購入の際に400万円を用立てたこと、次男はご相談者夫婦と同居して長年にわたり面倒を見てくれたことに報いたいので、是非了承してほしいと遺言に記載しておくことも可能です。
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