税理士

あんしん税理士法人

鹿田 幸子

福岡県出身。大学卒業後、大阪の会計事務所にて勤務。帰福後は、福岡の大手会計事務所に勤務し、幅広い業務に携わる。2007年税理士登録。2013年 12月安藤税理士事務所入所。2016年12月法人成(あんしん税理士法人)。社員税理士となる。かかりつけ医のような税理士を目指し日々研鑽中。
資格:税理士

この執筆者の過去のコラム一覧

2021/10/10

適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)と不動産オーナーへの影響等

令和 3 年 10 月 1 日から、適格請求書発行事業者の登録申請手続きが始まります。
制度自体は令和 5 年 10 月 1 日からの開始予定となっています。

この制度は、現在、消費税は「どんなものに対してお金を払うのか」によって仕入税額控除できるかどうかが決められているのが、それに加えて「どの事業者に対して支払うのか」によって仕入税額控除できるかどうかが決まる、というものです。
益税(消費税の納税義務が無いのに、売上に消費税を上乗せして受け取って、その消費税分が利益として残る、ようなことです)をなくすために導入されることになった、と言われています。

<概要>~国税庁 HP より~

適格請求書保存方式とは、複数税率に対応したものとして開始される、仕入税額控除の方式です。
買い手が仕入税額控除を受けるためには、帳簿のほか、売り手から交付された「適格請求書」等の保存が必要となります。
そして「適格請求書」とは、売り手が買い手に対して正確な適用税率や消費税額を伝えるための手段であり、「登録番号」のほか一定の事項が記載された請求書や納品書等をいいます。

「適格請求書」を発行できるのは、事前に税務署に申請し、税務署から「登録番号」をもらった「適格請求書発行事業者」に限られます。
この登録が無い請求書等では仕入税額控除ができなくなります(100%できなくなるまでは経過措置があります)。
登録は消費税の課税事業者しか受けることができません。つまり、免税事業者や消費者などの、適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れは、原則として仕入税額控除の適用を受けることができなくなるのです。

不動産オーナーへの影響

不動産オーナーの方で、店舗や駐車場ばかりを賃貸されていて年間の課税収入が 1000万円を超えるような方は、現時点で消費税の課税事業者であることが多いので粛々と適格請求書発行事業者になる手続きを進めていただいたら良いです。

そうではない、居住用マンション賃貸がメインで、1階や2階を店舗として賃貸しているので年間の課税収入は1,000万円未満です、という方の場合、これらの店舗の借主が支払う家賃は、今までは、事業用契約をしていたら支払先が免税事業者であっても、支払った家賃の中に消費税が含まれていることとして仕入税額控除ができていましたが、この制度が始まると、支払先であるオーナーが免税事業者ですと、仕入税額控除ができなくなります。

それぞれの事業者側から見ると、支払う家賃が仕入税額控除ができない、となると、既存の入居者からは、「消費税分の家賃を値下げして欲しい」ですとか、「課税事業者になって適格請求書発行事業者登録してほしい」といった要望が出てくることが考えられます。
新規の入居者を募集するにあたって、ほかの課税事業者オーナー物件との競争に負けてしまう事も考えられます。

以上のようなことから、早めに、関与されている税理士の方にご相談されることをお勧めいたします。「もし課税事業者になるとしたら年間でいくらくらい払うのか?」ですとか「簡易課税方式を選んだら納付する消費税額は減るのか?」など、試算していただくことをお勧めいたします。

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