2022/01/10
遺言作成と遺言執行者の選任
Q 私には前妻との間に長女が、後妻との間の2人の子がいます。
後妻は2年前に他界し、私も86歳になりましたので、そろそろ遺言を作成しようと思います。
3人の子には平等に財産を分けたいとは思いますが、遺産の中に自宅の土地建物と私が経営してきたアパート1棟の土地建物と預貯金等があり、自宅やアパートを現物で3人の子に取得させることができません。
このため、遺言を作成してそれぞれの遺産を誰に取得させるかを決めようと思っています。
遺言を作成する際に、遺言執行者を選任することができると聞きましたが、遺言執行者は選任した方がよいのでしょうか。
また、遺言執行者はどのようなことをしてくれるのでしょうか。
1 遺言執行者
遺言執行者とは、「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」(改正民法第1012条項1項)ものとされています。
具体的には「遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効果を生じる。」(改正民法第1015条)と定められています。
要するに、遺言執行者とは、被相続人が遺言書で示した意思を、そのとおりに実現する権利(相続人に直接に効力を生じるので、相続人は遺言執行者の行ったことに従わざるを得ないことになります。)を有すると同時に、その義務を負っている者を指します。
遺言執行者は、遺言者自らが、遺言書において指定することができます。
遺言書以外では遺言執行者を指定することは認められておりません。
遺言執行者は、相続人以外の弁護士、税理士、司法書士その他の第三者を指定することもできますし、相続人のうち特定の者を指定することも可能です。
例えば、ご長男やご長女に一定の財産を相続させる旨の遺言を作成し、ご長男やご長女をその遺言の遺言執行者に指定することもできます。
遺言書の具体的内容は様々なものが含まれ、遺言の執行行為が必要なものと、必要でないものとがあります。
例えば、遺言による子の認知や、遺言による相続人の排除(相続人となるべき者が、被相続人に対し虐待や侮辱その他の著しい非行がある場合に家庭裁判所に対し、その者を相続から排除し、相続人資格を剥奪する手続)の申立ての場合には具体的な申し立て等の執行行為が必要になります。
2 遺言執行者の必要性
これに対し、相続させる旨の遺言(特定の相続人に対し、一定の財産(自宅の土地建物や預貯金、有価証券等)を取得させることを内容とする遺言)は、この遺言により直ちに自宅の土地建物や預貯金、有価証券等は、その相続人に権利が移転しますので格別の執行行為は必要はありません。
しかし、実際には、自宅の土地建物をその相続人の名義に移転登記をしたり、預貯金や有価証券等については、その名義をその相続人に書き換えたりする手続きは必要です。
民法(相続法)の改正前は、「特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言をしたときは、当該特定の相続人は、被相続人の死亡とともに当該不動産の所有権を取得し、単独で所有権移転登記手続きを行う事ができるのであるから、遺言執行者は、遺言の執行として当該登記手続をする義務を負わない(最判平成7年1月24日)」と解されており、預貯金についても格別の対抗要件は不要とされていましたが、改正民法では、相続させる旨の遺言の場合でも、登記、登録等の対抗要件を具備しなければ、自分の法定相続分を超える部分については第三者に対抗(自分が遺言で遺産を相続したことを主張)することができないことになりました。
これに伴い、改正民法では、遺言の執行者は、相続させる旨の遺言の場合には、対抗要件を備えるために必要な行為(登記、登録等)をする権限が授与されています。
また、預貯金債権については、遺言執行者は、「その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。」と定めていますので、遺言執行者を活用することも一考に値すると思われます。
Q 私には前妻との間に長女が、後妻との間の2人の子がいます。
後妻は2年前に他界し、私も86歳になりましたので、そろそろ遺言を作成しようと思います。
3人の子には平等に財産を分けたいとは思いますが、遺産の中に自宅の土地建物と私が経営してきたアパート1棟の土地建物と預貯金等があり、自宅やアパートを現物で3人の子に取得させることができません。
このため、遺言を作成してそれぞれの遺産を誰に取得させるかを決めようと思っています。
遺言を作成する際に、遺言執行者を選任することができると聞きましたが、遺言執行者は選任した方がよいのでしょうか。
また、遺言執行者はどのようなことをしてくれるのでしょうか。
1 遺言執行者
遺言執行者とは、「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」(改正民法第1012条項1項)ものとされています。
具体的には「遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効果を生じる。」(改正民法第1015条)と定められています。
要するに、遺言執行者とは、被相続人が遺言書で示した意思を、そのとおりに実現する権利(相続人に直接に効力を生じるので、相続人は遺言執行者の行ったことに従わざるを得ないことになります。)を有すると同時に、その義務を負っている者を指します。
遺言執行者は、遺言者自らが、遺言書において指定することができます。
遺言書以外では遺言執行者を指定することは認められておりません。
遺言執行者は、相続人以外の弁護士、税理士、司法書士その他の第三者を指定することもできますし、相続人のうち特定の者を指定することも可能です。
例えば、ご長男やご長女に一定の財産を相続させる旨の遺言を作成し、ご長男やご長女をその遺言の遺言執行者に指定することもできます。
遺言書の具体的内容は様々なものが含まれ、遺言の執行行為が必要なものと、必要でないものとがあります。
例えば、遺言による子の認知や、遺言による相続人の排除(相続人となるべき者が、被相続人に対し虐待や侮辱その他の著しい非行がある場合に家庭裁判所に対し、その者を相続から排除し、相続人資格を剥奪する手続)の申立ての場合には具体的な申し立て等の執行行為が必要になります。
2 遺言執行者の必要性
これに対し、相続させる旨の遺言(特定の相続人に対し、一定の財産(自宅の土地建物や預貯金、有価証券等)を取得させることを内容とする遺言)は、この遺言により直ちに自宅の土地建物や預貯金、有価証券等は、その相続人に権利が移転しますので格別の執行行為は必要はありません。
しかし、実際には、自宅の土地建物をその相続人の名義に移転登記をしたり、預貯金や有価証券等については、その名義をその相続人に書き換えたりする手続きは必要です。
民法(相続法)の改正前は、「特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言をしたときは、当該特定の相続人は、被相続人の死亡とともに当該不動産の所有権を取得し、単独で所有権移転登記手続きを行う事ができるのであるから、遺言執行者は、遺言の執行として当該登記手続をする義務を負わない(最判平成7年1月24日)」と解されており、預貯金についても格別の対抗要件は不要とされていましたが、改正民法では、相続させる旨の遺言の場合でも、登記、登録等の対抗要件を具備しなければ、自分の法定相続分を超える部分については第三者に対抗(自分が遺言で遺産を相続したことを主張)することができないことになりました。
これに伴い、改正民法では、遺言の執行者は、相続させる旨の遺言の場合には、対抗要件を備えるために必要な行為(登記、登録等)をする権限が授与されています。
また、預貯金債権については、遺言執行者は、「その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。」と定めていますので、遺言執行者を活用することも一考に値すると思われます。
すべての著作権は(株)大洋不動産に帰属しています。無断転載は固くお断りいたします。