2022/02/10
人とのつながりと健康について
今回は人とのつながりと健康の関係についてお伝えしたいと思います。
新型コロナウイルス感染症の影響が数年におよび、ステイホームの影響などあって家族以外の人と接する機会が減ったとお感じの方は多いのではないでしょうか。
内閣府が令和2年6月に公開した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」においても、「今回の感染拡大前に比べて社会とのつながりの重要性をより意識するようになった」と答えた人が39.3%いたということと、感染拡大前から感染症影響下において「社会とのつながりの満足度」を比較すると29%減少したことが報告されています。
孤食が与える死亡率への影響
一方で、人とのつながりが健康に与える影響が、ここのところ注目されています。
一つは、独居と同居、孤食(一人で食事を食べるか)と共食(誰かと食事を食べるか)が死亡率にどのように影響するかを調べた研究です(Tani Y, et al. J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci, 2018, 73, 1330-1334)。
その結果として、独居でも死亡率は上昇しないものの、男性の場合は独居か同居かに関わらず孤食だと死亡率が上がるというものでした。
運動と要介護発生率の興味深い結果
別の研究(Kanamori S, et al. Pros One. 2012;7:e51061.)では、運動サークルに参加しているかどうかと、実際に運動しているかどうかによって4つのグループに分けて、それぞれのグループの4年後の要介護発生率を調べています。
この結果、運動サークルに参加し実際運動してる群が最も要介護発生率は低く、運動サークルに参加せず運動もしていない群が最も要介護発生率が高かったという結果は、皆さんとっても当たり前の結果だと思います。
一方で、残りの二群に関して、運動サークルに参加せず運動している群よりもサークルに参加しているが運動はしていない群のほうが要介護発生率は低かったという結果がとても興味深いです。
つまり、一人で黙々と運動をしているよりも、運動サークルに行って運動せずにおしゃべりしている方が要介護発生率が低かったという結果です。
様々な分野で研究される「人とのつながり」
認知症についても、福岡県久山町の研究(Shibata M et al. J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci. 2020;gbaa196.)で、65歳以上の高齢者における認知症の発生率と孤独の関係を調べたところ、孤独感を感じる人は認知症発症リスクが1.5倍で、友人との交流頻度がほとんどない人では情緒的孤独感がある人はない人と比べて認知症の発症リスクが5.3倍という結果でした。
人のつながりと健康についてはフランスの社会学者エミール・デュケームが1987年に発表された自殺論の中でも指摘していて、さまざまな分野で研究されるようになっています。
複数の論文を分析し研究のレベルとしてもっともエビデンスレベルが高いメタアナリシスという手法を用いた研究(Holt-Lunstad J, et al. Plos Med. 2010;7:e1000316.)でも、喫煙や飲酒、運動習慣の少なさ、肥満などといった一般的によく知られる不健康の因子よりも、社会的つながりの方が寿命に影響するという結果が示されています。
健康に過ごすための5つの処方
そこで最近、社会的処方という考えが注目されています。
社会的処方とは、薬と同じように社会とのつながりを処方するものです。
社会的処方は人々が健康に過ごすための5つの方法を助けることが目的とされていて、
①人から施されるだけでなく自らが支援する側にも立てる
②他の人たちとつながることができる
③学び続けるものを持っている
④身体的・精神的に活動的である
⑤周囲で起きていることに注目している
が挙げられています。
詳しくは、西智弘先生の書籍「社会的処方」学芸出版社2020に詳しく書いてありますので、もし人のつながりと健康に興味を持たれたらご一読をお勧めします。
コロナ禍で人とのつながりが疎遠になりがちだからこそ、その重要性に注目していきたいと思います。
今回は人とのつながりと健康の関係についてお伝えしたいと思います。
新型コロナウイルス感染症の影響が数年におよび、ステイホームの影響などあって家族以外の人と接する機会が減ったとお感じの方は多いのではないでしょうか。
内閣府が令和2年6月に公開した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」においても、「今回の感染拡大前に比べて社会とのつながりの重要性をより意識するようになった」と答えた人が39.3%いたということと、感染拡大前から感染症影響下において「社会とのつながりの満足度」を比較すると29%減少したことが報告されています。
孤食が与える死亡率への影響
一方で、人とのつながりが健康に与える影響が、ここのところ注目されています。
一つは、独居と同居、孤食(一人で食事を食べるか)と共食(誰かと食事を食べるか)が死亡率にどのように影響するかを調べた研究です(Tani Y, et al. J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci, 2018, 73, 1330-1334)。
その結果として、独居でも死亡率は上昇しないものの、男性の場合は独居か同居かに関わらず孤食だと死亡率が上がるというものでした。
運動と要介護発生率の興味深い結果
別の研究(Kanamori S, et al. Pros One. 2012;7:e51061.)では、運動サークルに参加しているかどうかと、実際に運動しているかどうかによって4つのグループに分けて、それぞれのグループの4年後の要介護発生率を調べています。
この結果、運動サークルに参加し実際運動してる群が最も要介護発生率は低く、運動サークルに参加せず運動もしていない群が最も要介護発生率が高かったという結果は、皆さんとっても当たり前の結果だと思います。
一方で、残りの二群に関して、運動サークルに参加せず運動している群よりもサークルに参加しているが運動はしていない群のほうが要介護発生率は低かったという結果がとても興味深いです。
つまり、一人で黙々と運動をしているよりも、運動サークルに行って運動せずにおしゃべりしている方が要介護発生率が低かったという結果です。
様々な分野で研究される「人とのつながり」
認知症についても、福岡県久山町の研究(Shibata M et al. J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci. 2020;gbaa196.)で、65歳以上の高齢者における認知症の発生率と孤独の関係を調べたところ、孤独感を感じる人は認知症発症リスクが1.5倍で、友人との交流頻度がほとんどない人では情緒的孤独感がある人はない人と比べて認知症の発症リスクが5.3倍という結果でした。
人のつながりと健康についてはフランスの社会学者エミール・デュケームが1987年に発表された自殺論の中でも指摘していて、さまざまな分野で研究されるようになっています。
複数の論文を分析し研究のレベルとしてもっともエビデンスレベルが高いメタアナリシスという手法を用いた研究(Holt-Lunstad J, et al. Plos Med. 2010;7:e1000316.)でも、喫煙や飲酒、運動習慣の少なさ、肥満などといった一般的によく知られる不健康の因子よりも、社会的つながりの方が寿命に影響するという結果が示されています。
健康に過ごすための5つの処方
そこで最近、社会的処方という考えが注目されています。
社会的処方とは、薬と同じように社会とのつながりを処方するものです。
社会的処方は人々が健康に過ごすための5つの方法を助けることが目的とされていて、
①人から施されるだけでなく自らが支援する側にも立てる
②他の人たちとつながることができる
③学び続けるものを持っている
④身体的・精神的に活動的である
⑤周囲で起きていることに注目している
が挙げられています。
詳しくは、西智弘先生の書籍「社会的処方」学芸出版社2020に詳しく書いてありますので、もし人のつながりと健康に興味を持たれたらご一読をお勧めします。
コロナ禍で人とのつながりが疎遠になりがちだからこそ、その重要性に注目していきたいと思います。
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