税理士

あんしん税理士法人

鹿田 幸子

福岡県出身。大学卒業後、大阪の会計事務所にて勤務。帰福後は、福岡の大手会計事務所に勤務し、幅広い業務に携わる。2007年税理士登録。2013年 12月安藤税理士事務所入所。2016年12月法人成(あんしん税理士法人)。社員税理士となる。かかりつけ医のような税理士を目指し日々研鑽中。
資格:税理士

この執筆者の過去のコラム一覧

2022/07/10

“源泉所得税の改正のあらまし”について

(1)概要

毎年4月に国税庁が「源泉所得税の改正のあらまし」という A4版の小冊子を作成し、各税務署から管轄下の事業者に郵送されてきます。
今年も郵送されてきましたが、多くの方は封筒ごと捨ててしまうか、開封しないまま何年も大事に保管しておくか、のようです。

冊子の薄さに比べて文字が多いので、読むのに時間も気力も足りない、というところかと思いますがしかし、目を通してみると、とても身近な事や、重要なことに触れている内容の記載も多いです。
そこで、今年度の「源泉所得税の改正のあらまし」について、特に関わる人が多い事項について振り返っておこうと思います。

(2)改正の内容の抜粋

Ⅰ 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除

適用期限が延長されるなど、所要の措置が講じられました。

① 住宅借入金等を有する場合の所得税の特別控除について
適用期限が令和7年12月31日まで、4年間延長される(改正前は令和3年12月31日まででした)とともに、認定住宅等の取得の場合、控除率が0.7%になり、控除期間が13年になる、などという措置が講じられました。
■借入限度額も、居住年が令和何年なのか、で異なります。
■この改正は令和4年1月1日以後、居住の用に供した場合に適用されます。
認定住宅等以外の場合についても、借入限度額と控除期間が居住年により異なります。

② 適用対象者の所得要件
2,000万円以下に引き下げられました。(改正前は 3,000万円以下でした。)
住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除については他にも改正点がありますので、これから住宅を取得する方は念入りに調べてから取得する必要があります。

Ⅱ 社会保険料及び小規模企業共済掛金控除

適用を受ける際に「給与所得者の保険料控除申告書」に添付等をすることとされている「控除証明書」に関して、次の措置が講じられました。
■年末調整の際に、一定の場合には、給与の支払いを受ける者が社会保険料等にかかる「控除証明書」を書面提出によらず、証明書の発行者から受け取った電子データで提出することができることとされました。
■この改正は、令和4年10月1日以降に「給与所得者の保険料控除申告書」を提出する場合について適用されます。


Ⅲ 非居住者である扶養親族に係る扶養控除

適用について、次の措置が講じられました。
■この改正は令和5年分以後の所得税について適用されます。
改正前は、非居住者である扶養親族は、その者が16歳以上で、居住者から生活費等の送金を受けていたら、居住者の所得税計算において扶養控除を適用できていますが、来年から適用基準が厳しくなります。
■具体的には、年齢が30歳以上70歳未満の非居住者で、障がい者や留学生、年に38万円以上の送金を受けている人のいずれにも該当しない人は、扶養控除の適用対象外となります。

これは、驚くほど多数の扶養親族が海外にいて、扶養控除が高額のため、所得税などをほとんど払わなくて済む居住者の方が結構数いたため徐々に厳しくなっています。中には「本当に扶養しているのか?」「そもそも扶養とは?」と考え込んでしまうくらいのケースがあったようです。
日本は今後、人口がどんどん減っていくこともあり外国の居住者が増えるでしょうから、誰もがある程度納得できる制度に整ってきている、というところでしょう。

このように、毎年興味深いことが記載されている小冊子ですので、次にお手元に届いたら、目を通していただくことをおすすめいたします。

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