(株)大洋不動産

相続マインズ福岡

小峰 裕子

平成元年より不動産業に従事。不動産におけるすべての判断はオーナーご家族の幸せや将来設計に多大な影響を及ぼすことを実感する。1999年にCFP®資格取得、2000年にNPO法人相続アドバイザー協議会養成講座1期生として研修を受け、相続に強い不動産の専門家として不動産管理運営の相談業務を中心に、セミナー講師や不動産相続のサポート業務を行っている。
大洋不動産常務取締役・相続マインズ福岡代表
CFP®(1級ファイナンシャルプラン技能士)
CPM®(米国公認不動産経営管理士)

この執筆者の過去のコラム一覧

2022/09/10

相続対策で注目される「不動産小口化商品」を知ろう

さて、ちょっと古い話ですが今年はじめのマグロの初競り、最高値は1,688万円でした。数年前は3億円以上の値が付いていましたが、コロナで需要が落ちてしまい値下がりしたことが話題になりましたね。ただ、それでも我々庶民がポンと買うことなんてできません。
しかし切り身なら?!
そうです。「買いやすいし分けやすい」それが今回取り上げる不動産小口化商品です。

不動産小口化商品とは、1995年に施行された「不動産特定共同事業法」に基づいた金融商品です。
その後、改正を重ねてより少額で投資できるようになる一方で、参入条件が緩和。不動産小口化商品を組成・販売する不動産会社も増えました。

実はこれ、商品によっては相続対策や節税に効果があるとされ、ちょっとしたブームになっているんですね

「不動産小口化商品」の基本

不動産の小口化商品は大きく2つに分けることができます。
それは匿名組合型と任意組合型です。

匿名組合型は現在最も多く販売されている商品で、一口1万円からと少額であるため金融資産の運用先として気軽に購入している方が多いといわれています。

優先劣後の仕組みを取っているため安全性は比較的高い反面、収益の分配率は低いといえます。対象不動産の運用期間は数ヶ月から数年程度で、短期間で償還されるのが特徴です。
分配金は雑所得に分類、また相続時の評価は時価となるため相続対策には不向きです。

一方の任意組合型は、複数の投資家と事業者が任意組合を組成して1つの不動産を共有する形式ですが、実際は事業者(任意組合理事長)が代表して運営管理をし、利益は共有持分に応じて投資家へ分配されます。
また不動産は任意組合が所有しますが、組合は法人格がないため登記は理事長名義です。
投資額は一口100万円~500万円、5~10年と中長期で償還する商品が多いです。

税制のメリットはそのまま、借入もなく分散投資も可能に

任意組合型の効用は、小口といえども実質は不動産の持分を所有しているのと同様であるため、不動産の税制が活用できる点にあります。
分配金は不動産所得ですし、対象不動産の売却時に利益が出れば譲渡所得です。

また相続や贈与については相続税評価額で評価され、実際の出資した金額より低い評価になる点も実物不動産と全く同じ扱いであるにも関わらず借入の必要がないため、不動産オーナーの間で人気が高まる一方なんですね。

さらに、小規模なビルを1棟取得するよりも、小口化商品なら同じ予算で複数投資することが可能になるためリスク分散にもなりますし、お子さんやお孫さんへの生前贈与や遺産分割対策にも使うことができます。
販売を始めた都内の不動産管理会社に勤める知人の話では、即完売という状態のようです。

中身はいろいろ~管理・運営の良し悪しが商品選びのポイント

ただ不動産の運用益を分配する仕組みへの投資ですから、当然デメリットも同じように存在します。
利回りは確定したものではありませんし、不動産市況の変動リスク等もあり、元本割れの可能性もあります。

対象不動産は賃貸住宅とは限らず、オフィスビルや商業施設など様々です。
その多くは中古か新築物件ですが、ホテルやドミトリー(格安宿泊施設)などリノベーション物件を対象とする商品も販売されています。

こうしてみると、「立地」「空室リスク」「客付け力」「適切迅速なリフォーム」など資産価値を下げずリスクの低減を図るという点では、不動産小口化商品といえども管理・運営の中身は実物不動産そのままであることがわかります。
つまり、商品選びのポイントは、オーナー様が普段から選択していらっしゃるように、物件はもちろん不動産の管理・運営会社を選択するのと同じ点が多いという事実が浮かび上がってくるのです。

そうした点をよく検証せず、利回りや節税に気を取られて購入することは避けるべきです。

不動産小口化商品の中途売却~流動性の有無は販売元の実績をみて

相続対策を考えたい方には良いことずくめのような商品でも、リスクゼロではありえません。
流動性の有無が問題になる可能性もあります。
今後は地価上昇や建築費高騰の影響も出てくるため、新しい商品がどれだけ組成されるか、その中身も含めて注目する必要があるといえそうです。

「しあわせ倍増をプランする」。大洋不動産では相続の不安や疑問をゆっくり聴かせて頂き、問題に気が付いたら適切な専門家と連携して対策を考え、効果やリスクをわかりやすくご説明しています。
お気軽にご相談頂ければ幸いです。

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