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久保 逸郎

老後のお金の不安を解消する、ライフプランと資産運用&資産管理の専門家
「90歳まで安心のライフプラン」を合言葉にして、豊かな人生の実現に向けたライフプラン作りの支援を行っている。
独立から約15年にわたり相談業務を中心に実務派ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて年間100回近い講演や、マネー雑誌やコラム等の原稿執筆を行うなど幅広く活動中。

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2023/02/10

「損をしたくない」という気持ちが強過ぎる人は要注意!!

行動経済学の研究で、人間は「得をしたい」という感情よりも、「損をしたくない」という気持ちのほうが強いことがわかっています。
ある研究によれば2.5倍も「損をしたくない」という気持ちが勝っているとのこと。
そのため投資で利益を得ることよりも、「損をしたくないから止めておこう」と考えるのは、ある意味自然なことでもあります。

しかし、この「損をしたくない」という気持ちが強過ぎると、さまざまな点で問題が生じてきます。
とくに投資においては、この「損をしたくない」という気持ちが裏目に出てしまうことが多いものです。

そこで今回は「損をしたくない」という気持ちが強過ぎる場合の問題点について解説してみます。

①インフレに負けてしまう

2022年12月の消費者物価指数は前年同月比4.0%の上昇となりました。
生鮮食品を除くコアインフレ率は前年同月比4.0%の上昇、生鮮食品及びエネルギーを除くコアコアインフレ率も前年同月比3.0%で、政府と日本銀行が示しているインフレターゲットの2%を上回る水準です。

その一方で、マイナス金利政策が続いているため預貯金の金利はほぼゼロで、物価上昇率が金利を上回る実質金利マイナスの状態が続いています。
このようなタイミングで預貯金にお金を預けていると、額面は減らないかもしれませんが、価値は確実に下がっていくことになります。

このような「実質金利」を基準にして考えることは、ずっとインフレと戦ってきた海外の人達の間では当たり前のことで、大切な資産を守るために投資を行うというのも一般世帯まで広がっている考え方です。

しかし、日本では「損をしたくない」という気持ちから投資を敬遠し、インフレから資産を守る投資は全く行っていないという人がまだまだ多い状況。
長かったデフレの時代が、資産保全で最も優先されるのは「インフレに負けないようにする」ということを忘れさせてしまったのでしょう。

②長期投資ができない

「損をしたくない」という気持ちが強い人は、せっかく投資をしても利益確定を急いでしまう傾向があるため、長期投資を実践することが難しい傾向があります。

基本的に短期で株価がどうように動くのかを当てるのは困難なことで、「買い時」と「売り時」を見計らって当てにいくような投資は上手くいくものではありません(そのような投資が楽しいのは理解できますけどね)。


データ出所:JPモルガン・アセット・マネジメント「歴史から学ぶ、継続投資の有効性2020年7月」

上記のグラフで分かるように、過去S&P500で大幅上昇が起きた日は、大幅下落の直後であることがほとんど。
仮に1988年にS&P500に1万ドルを投資していたとすれば、2020年までに約20倍に増えていることになりますが、しかし、上記のグラフの大幅上昇した40日を逃していたとすると、約2.4倍の上昇にとどまってしまいます。

この差は大きいですよね。

従って投資で成功するにはとにかく持ち続けて、突然やってくる追い風を待つような姿勢が必要なのですが、「損をしたくない」という気持ちが強く、長期投資が出来ない人は、そのような追い風のメリットを享受できる可能性が低くなってしまうのです。

③損失確定をすることが苦手

先述の通りで、損失確定を嫌うがために保有している銘柄を長期間にわたって塩漬け状態にしてしまう傾向があります。
そのため別資産での貴重な投資機会を逃してしまうことが往々にして起きるものです。

④コストばかりに目が行き、本当に良い商品を手に入れられない

「損をしたくない」「もったいない」という気持ちが強い人は「手数料が安ければ、利益が出なくても損はしないだろう」と考えがちで、そのため「手数料が安い」「損をしない」商品を求める傾向があります。

近年のパッシブ投資(ETF、インデックスファンド)志向の人に、このような人は多いでしょう。

その一方で、投資上手な人は「利益が出る可能性が高い」商品を求める傾向が強いもので、コストに見合うパフォーマンスを出しているかどうかで冷静に判断します。
そして本当に良い商品は一定のコストがかかるということを、しっかりと理解しています。

⑤乗り遅れたくないと思いがち

「損をしたくない」という感情が強い人は、周囲の人達が投資で上手くいっているのを見ると、ついつい「自分も乗り遅れたくない」というように考えてしまいます。

そのため後から参入してしまうため、結果的に高値掴みをしてしまう傾向があります。割高なタイミングでの参入は投資効率を著しく悪化させるため、成果が出にくくなってしまいます。

個人投資家が自らの判断で投資を行うと、大変芳しくない投資成果になることが多いのは、このような自ら感情面で失敗してしまうことが多いためです。

スポーツに例えるなら自滅というやつですね。

とくに今回の「損をしたくない」という損失回避性は成果に与える影響が大きいため、注意をしてもらいたいと思います。

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