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久保 逸郎

老後のお金の不安を解消する、ライフプランと資産運用&資産管理の専門家
「90歳まで安心のライフプラン」を合言葉にして、豊かな人生の実現に向けたライフプラン作りの支援を行っている。
独立から約15年にわたり相談業務を中心に実務派ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて年間100回近い講演や、マネー雑誌やコラム等の原稿執筆を行うなど幅広く活動中。

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2023/08/10

投資に関する情報をSNSやコミュニティアプリ、YouTubeなどで集めないほうがいい理由

日本ではあまり調査が行われておらず、公表される機会がほとんど無いのが現状ですが、個人投資家の運用成績はプロに比べて大きく劣ることが分かっています。
その大きな要因の一つが情報量と質の差です。

投資情報には偏りがある?

投資のプロの世界にいる人達は専門性を持ち、AI等も駆使しながら世界中の投資に役立つ情報を一年中分析しているのに対して、個人投資家の多くはインターネット上の記事やYouTubeなどの動画配信サービス、またはSNS などの情報に頼っている傾向があります。

特に若い人はSNSやコミュニティアプリなどへの依存度が高いようで、例えば東京証券取引所等の取引市場を運営しているJPX(日本取引所グループ)が運営する東証マネ部というサイトが20代から40代を対象にして行った調査では、下記のような結果になったそうです。

「一般的なSNSやコミュニティアプリを投資目的で利用している」 38%
「投資に特化したSNSやコミュニティアプリを投資目的で利用している」 18%

約6割の人が投資に関する情報を SNS やコミュニティアプリで行っているのは驚きですね。
そのようなサービスの利便性はある程度理解できますが、人間は自分にとって都合の良い情報を集める傾向があり、その一方で、自分にとって都合が悪い情報を遠ざけてしまう傾向があります。

さらにインターネットを通じて集める情報や動画配信サービスの場合には、 AI が個人の好みに合わせて検索結果の上位表示を決めているため、個人が得られる情報に相当な偏りが出てしまいます。

また、検索結果で上位表示されている情報は、多数に見られることを目指して、大衆向けに作られた情報が多いという現実があります。
大衆に支持される情報は、どうしても短期的に、そして簡単に収益が得られるというような情報が多くなってしまうため、そのような情報を安易に信じてしまわないように注意しなくてはいけません。

発信者は誰か、専門性を持った人物なのかを注視して

どうしてもSNSや動画配信サービスなどの情報に頼らなくてはいけない場合は、その情報が誰から発信されているのか、また、その発信者が専門性を持った人物なのかどうか、情報発信者の経歴等を確認し、また、出所がしっかりとした情報に限って利用するように心掛けたほうがいいでしょう。

経済学の分野では「多数派はいつも損をする」といわれています。
また、有名な投資格言に「大衆は常に間違う」というものがありますね。
大衆が集まっていて、同調圧力が強いインターネットの世界を中心に情報を集めてしまうと、多数派同調バイアスの罠に引っ掛かってしまう可能性が高くなってしまいます。

多数派同調バイアスとは
多数派同調バイアスは自分自身の考えとは違っていたとしても多数派の考え方に合わせようとする心理学的な傾向。

とくに日本人は子供の頃から協調性を重視した教育を受けて育っているため、多数派同調バイアスが強いとされています。
「人の行く裏に道あり花の山」「麦わら帽子は冬に買え」などの有名な投資格言が伝えているように、多数派とは逆の行動を出来る勇気を持っている人はそれほど多くありません。

また、行動経済学の研究で、人は往々にして世の中の多数派と同じ行動を取る傾向があることが知られています。
ハーディング(herding)とは英語で「(動物の)群れ」という意味です。

ハーディング現象
行動経済学において、個人が大多数の人(集団)と同じ行動を取ることで、安心を得ようとする群集心理が生み出す傾向

データに基づいて合理的に物事の判断をしたり、自身の行動を決定するよりも、大多数の人と同じ行動をとることのほうが安心で、ついつい周りに同調したり、他人の行動に追随してしまう傾向があるのです。
このようなハーディング現象によって、自分の持っている情報を無視してでも非合理的な行動に同調してしまう結果、集団として間違った方向性にいってしまうことがあります。
それがバブル相場を発生させてしまうのです。

リーマン・ショックの引き金になったサブプライムローン問題などは、このハーディング現象の典型的な例だとされています。

共感が大きなリスク要因に

大衆の欲望は大変強いため、マーケット環境が良い時には「まだまだ上がる」「みんながこのタイミングで投資している」と楽観に傾倒し、リスクを軽視し、ついつい多数と同じ行動をしてしまいがち。
このようにSNS等で大事にされる「共感」が大きなリスク要因になってしまうのです。

それではどうやってマーケットに関する情報を取ったらいいのかというと、やはり日頃から質が高い情報に触れて、情報を見極める力を身に付けることが大切です。

質が高い情報を得る手段としては、最初に新聞を挙げておきます。
金融や経済に特化していて、投資に役立つという観点では、日本経済新聞や日経ヴェリタス誌などがあります。
また、運用会社のコラムやレポートなども参考にしたほうがいいでしょう。

但し、運用会社の情報を参考する時にも注意をしていただきたいことがあります。
それは運用会社にもポジションがあるということ。
国内証券系・メガバンク系・外資系の運用会社で仕事をした経験を持つ私が感じていることですが、とくに日本国内を拠点とする証券系運用会社はグループ内の販売会社の影響力が高く、どちらかというと楽観に傾倒し過ぎている部分があります。
そのため外資系・独立系運用会社なども含めて幅広く情報を集めるようにしたいものです。

中長期の視点でマーケット全体の方向感を確認するには、国際通貨基金(IMF)や世界銀行、それに各国の中央銀行から発信されている情報にもしっかりと目を通したほうがいいでしょう。
投資商品の短期的な値動きは、必ずしもマクロ経済の動きとは一致しないものですが、長期的には「価格は価値に収斂する」ものであるため、マクロ経済の動きを把握していくことは重要です。

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