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久保 逸郎

老後のお金の不安を解消する、ライフプランと資産運用&資産管理の専門家
「90歳まで安心のライフプラン」を合言葉にして、豊かな人生の実現に向けたライフプラン作りの支援を行っている。
独立から約15年にわたり相談業務を中心に実務派ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて年間100回近い講演や、マネー雑誌やコラム等の原稿執筆を行うなど幅広く活動中。

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2023/11/10

投資のエキスパートが教える、新NISA口座を開設する金融機関の選び方

2024年から新しいNISA制度(以下、新NISA)がスタートします。
制度の概要等は至るところで見ることができるため、ここでは専門家の視点で新NISAを開設する金融機関を決める際の注意点について解説します。

どこの金融機関で新NISA口座を開設するか

NISAについては国内にある全ての金融機関から1つを選択し、取引をします。
しかしながら新NISA制度の成長枠部分では個別株に投資を行うことが可能であるため、基本的には銀行でNISA口座を開設するのは避けたほうがいいと思います。

生涯にわたって絶対に個別株投資をしないという方以外は、証券会社のほうで新NISA口座を開設しておいたほうがいいでしょう。
将来的に何かのキッカケで応援したい企業や、投資をしたい企業などが出てくるかもしれませんからね。投資信託も銀行に比べて選択肢が多いため、基本的には新NISAは証券会社で開設する方向で考えましょう。

担当者のスキルにばらつきが大きい点に注意

銀行や証券会社の担当者は、数字目標を抱えて営業活動を行っているため、顧客の利益を度外視して回転売買(短期的な売買を推奨する行為)を積極的に勧める営業員もいます。
そのような担当者とのお付き合いは避けたほうがいいと思います。

口座開設から投資商品の選択、売買タイミングまで全て自己完結が出来るという人は 取引コストが安いインターネットの証券会社(通称:ネット証券)を活用するのも一つの方法です。

但し、「大衆は常に間違う」という有名な投資格言にあるように、専門的な訓練を受けていない個人投資家が成果を上げることはそう簡単ではありません。
近年は異常に相場環境が良く、個人でも十分に勝負できると考える投資家も増えましたが、世界は今インフレに苦しんでいて、これまでと同じような投資環境は続かないと考えておくべきです。

ネット証券のアドバイザー(IFA)

ネットの証券会社には独立した立場のアドバイザー(Independent Financial Advisor、以下IFA)を付けられる証券会社も存在します。
市中の金融機関(銀行・証券会社)に比べ、比較的低コストで取引出来て、担当IFAからアドバイスをもらうことが可能なため便利な仕組みだと思います。

しかしIFAも質が様々で、銀行や証券会社の担当者以上に回転売買を促す者もいたりします。
また、これまで保険商品等しか扱った経験が無いような素人同然のIFAも かなり増えています。
そのためIFAの過去の職歴等をしっかりと確認して、本当にアドバイス力を有しているのかどうか、また投資に関する考え方が共感できるものであるかどうかを確認する必要があります。

スキルと経験を兼ね備えた良質なアドバイザー

これはファイナンシャルプランナー(FP)にアドバイスを求める場合も同様です。
過去に金融機関で働いたこともないようなFPに、投資のことを相談して本当に大丈夫なのでしょうか?
またFP等の場合は、資格取得のテキスト自体が投資を理論的に学ぶものになっていません。そのためほとんどのFPが投資についてはかじった程度の知識しか持ち合わせていません。
それに保険系FPは変額保険や外貨建て保険を扱うための投資教育程度しか受けていない人が大半で、ほぼ素人と変わりません。

FPとして20年以上活動してきている私のイメージでは、 スキルと経験を兼ね備えた良質なアドバイザーはせいぜい数百人程度しかいない印象。
こうなってしまった背景には、金融機関の職員は会社から与えられた数字目標を追いかけなければいけませんし、そもそも顧客の利益を後回しにして会社の収益を増やすことを優先してきた歴史があります。

賢い人ほど積極的に専門家の意見を求めている

米国の状況を例に出すと、ITバブルの崩壊、 リーマン・ショックの2度の大きな危機を経て、専門家に投資アドバイスをもらった方がいいということに気づいたのか、近年はフィー(相談料、年間で預り資産残高の0.5~1%程度)を払って投資アドバイザーを付けることが一般的になっています。

日本の金融は米国に比べて「約20年程度遅れている」と言われていますが、これから日本でも同じことが起きる可能性が高いと考えられており、欧米のようなプラットフォームの準備が進められています。

新NISA口座を開設する金融機関を決める際には、少なくともキャッシュバックや金利優遇、ポイント還元などの目先の利益に釣られないようにしてください。

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