院長/認知症サポート医

医療法人すずらん会たろうクリニック

内田 直樹

医療法人すずらん会たろうクリニック(福岡市東区)院長、精神科医。1978年長崎県南島原市生まれ。2003年琉球大学医学部医学科卒業。福岡大学病院、福岡県立太宰府病院勤務を経て、2010年より福岡大学医学部精神医学教室講師。福岡大学病院で医局長、外来医長を務めた後、2015年より現職。
日本在宅医療連合学会評議員、日本老年精神医学会専門医・指導医、認知症の人と家族の会福岡支部顧問、福岡市在宅医療医会理事、NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク理事、など。精神保健指定医。「認知症の人に寄り添う在宅医療」他、著書・寄稿多数。福岡県福岡市東区名島1-1-31/TEL 092-410-3333

この執筆者の過去のコラム一覧

2024/02/10

第13回 認知症基本法について

2023年6月14日、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が成立しました。
この法律は、2019年に一度自民党・公明党によって法案が提出されましたが成立に至らず、2021年に成立した超党派議連によって内容の見直しが進められていたものです。

基本的人権について明記されたことは大きい

この基本法の目的としては、「認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、認知症施策を総合的かつ計画的に推進」するとされており、さらに、「認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会(=共生社会)の実現を推進」するとされています。

基本理念として、7つが挙げられていますが、「 ① 全ての認知症の人が、基本的人権を享有する個人として、自らの意思によって日常生活及び社会生活を営むことができる。」として、認知症の人の基本的人権について明記されたのは当たり前のようで大きなことのように思います。

注目したい各自治体による施策

また、「国・地方公共団体等の責務等」として、「政府は、認知症施策推進基本計画を策定(認知症の人及び家族等により構成される関係者会議の意見を聴く)。都道府県・市町村は、それぞれ都道府県計画・市町村計画を策定(認知症の人及び家族等の意見を聴く。)(努力義務)」ともされています。

それぞれの自治体が、どういった施策を計画・実施していくのか注目が集まるところです。

あらたなサービスや商品を生み出し誰もが生きやすい共生社会へ

これらを背景に、8つの基本的施策として
①【認知症の人に関する国民の理解の増進等】
②【認知症の人の生活におけるバリアフリー化の推進】
③【認知症の人の社会参加の機会の確保等】
④【認知症の人の意思決定の支援及び権利利益の保護】
⑤【保健医療サービス及び福祉サービスの提供体制の整備等】
⑥【相談体制の整備等】
⑦【研究等の推進等】
⑧【認知症の予防等】 があげられています。

2019年に公開された認知症施策推進大綱において、当初「予防と共生」とされていた時から比較すると、共生を中心とした考えで認知症の人および家族と共に考える内容となりました。
この共生の考え方は、これまでお伝えしてきた認知症フレンドリーともつながる考え方になります。

様々な業種の方がこのコラムを読んでくださっていると思いますが、現在の皆さんの顧客が認知症となっても顧客であり続けられること、さらに、あらたに認知症の人を顧客とすることをイメージしていただくことが、認知症の人を含めた共生社会を作ることにつながると考えます。

ぜひ、2024年は認知症の人についても考える年とされてください。

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