弁護士

江口 正夫

1952 年生まれ、広島県出身。東京大学法学部卒業。弁護士(東京弁護士会所属)。最高裁判所司法研修所弁護教官室所付、日本弁護士連合会代議員、東京弁護士会常議員、民事訴訟法改正問題特別委員会副委員長、NHK文化センター専任講師、不動産流通促進協議会講師、東京商工会議所講師等を歴任。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会理事。

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2024/04/10

被相続人の遺産分けまでの手続きはどうやって行えばよいか?

 父が亡くなりました。
母は数年前に他界しており、自宅には私と姉の二人だけが住んでいます。
父親の財産といえば、自宅の土地建物と預金くらいだと思うのですが、生前に父からは何も聞かされていなかったので、よく分かりません。
父名義の土地建物と預金の名義を書き換えるには、私と姉で、土地建物と預金を、誰がいくらの割合で引き継ぐことを決めて、その結果を、不動産の登記所と銀行に連絡すればそれでよいのでしょうか。
それ以外に、何かしなければならないことはありますか?


相続開始後に最低限すべきこと

(1)準確定申告の準備

お父様がなくなられた後、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に「準確定申告」をする必要があります。
年の中途で人が死亡した場合は、相続人が、1月1日から死亡した日までに確定した所得金額および税額を計算して、申告と納税をしなければなりません。これを準確定申告といいます。

準確定申告は、各相続人等が連署により準確定申告書を提出することになりますが、他の相続人等の氏名を付記して各人が別々に提出することもできます。
この場合、準確定申告書を提出した相続人は、他の相続人に申告した内容を通知しなければならないことになっています。

(2)相続税申告の準備

相続または遺贈により取得した財産(被相続人の死亡前3年以内に被相続人から贈与により取得した財産を含みますが、令和6年1月1日以後の贈与により取得する財産にかかる相続罪に関しては3年が7年になります。)および相続時精算課税による贈与財産の合計額が「3000万円+(600万円×相続人の数)」を超える場合には、相続税の申告が必要になります。

相続税の申告は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内です。
たとえば令和6年3月6日に死亡し、その日にその事実を知った場合には、その年の3月7日から令和7年1月6日までに相続税の申告と納税を終える必要があります。

(3)遺産分割の準備

被相続人の遺産は、遺言があればそれに従い、遺言がない場合には、共同相続人全員が遺産分割協議をして、遺産分けの内容を決定します。
準確定申告と相続税の申告は上記の通り期限がありますが、遺産分割手続きは、特に法定の期限があるわけではありません。

ただし、相続開始後10年を経過した後は、原則として各相続人の法定相続分割合による分割以外に、生前贈与の有無や寄与分等の個別の事情に即した分割ができなくなります。

1)全員参加
遺産分割は、相続人全員の協議が必要です。
一部の相続人が参加していない場合は遺産分割協議が無効になってしまいます。

このため、相続人は自分と姉しかいないと思っている場合でも、相続人の確定作業が必要です。
相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や除籍謄本などを市区町村の戸籍か窓口等に請求して取得します。

2)行方不明者がいる場合
相続人の中に行方不明者がいる場合でも、遺産分割は全員で行う必要がありますので、
不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所の許可を受けて不在者財産管理人とともに遺産分割協議をする方法と、
不在者の生死が7年以上不明の場合は家庭裁判所に失踪宣告を申立て、行方不明者の生存が最後に確認されたときから7年経過したときに死亡したものとみなされますので、当該相続人が死亡したものとして遺産分割協議を行う方法とがあります。

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