税理士

あんしん税理士法人

鹿田 幸子

福岡県出身。大学卒業後、大阪の会計事務所にて勤務。帰福後は、福岡の大手会計事務所に勤務し、幅広い業務に携わる。2007年税理士登録。2013年 12月安藤税理士事務所入所。2016年12月法人成(あんしん税理士法人)。社員税理士となる。かかりつけ医のような税理士を目指し日々研鑽中。
資格:税理士

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2025/07/10

税務調査へのAI 導入

所得税の確定申告が終わり、ほっと一息ついていた頃、新聞に「相続税もAI が調査へ」という記事が載っていました。
その後、税務業界紙にもたびたびその話題が載っていましたので、今回はその話題を取り上げたいと思います。

(1)令和6年6月までの所得税の税務調査

毎年、6月までの税務調査シーズンが終わると、「所得税及び消費税調査等の状況」という税務調査の結果を取りまとめた資料を国税庁が公表しています。
13ページ程度にコンパクトに纏めてあり読みやすいです。

その本文最初の「調査等の状況」という所に、しっかり明確に「選定にAI を活用するなど、効率的に調査を行った結果、申告漏れ所得金額の総額及び追徴税額の総額は過去最高を記録」と太い文字で記載されています。
前年度までには無かった記載です。

所得税の「調査等」の件数は、前年度が63万8千件で、当年度は60万5千件とのことで、そのうち、申告漏れ等の非違があった件数は前年度が33万8千件で、当年度が31万1千件とのことですから、調査等の件数自体は減っています。
しかし、申告漏れ所得金額は、前年度が9041億円で、当年度が9964億円、追徴税額は前年度が1368億円で、当年度が1398億円(過去最高額)ですから、1件当たりの追徴税額は増えているわけです。
まさに「効率よく税金を徴収できた」という証左がここにありました。

報道によると、国税庁は「少し前から本格的にAI に申告漏れ事例を学習させ、申告書に不備があったり、きりの良い数字で申告していたり、現金収入が多い業種など、申告漏れの恐れがある納税者を重点的に調べる税務調査に取り組んだ結果、追徴税額が最高額だった」としています。

(2)今年の夏から実施する相続税の税務調査

報道によると「国税当局は今年夏から実施する相続税の税務調査などにAI を活用する」とのことです。
相続税の申告書や財産状況がわかる資料などをAI で分析し、申告漏れの可能性をスコア化して調査対象者の選定を行うそうです。
国税庁によると、AI での分析対象となるのは2023年に発生した相続事案が中心となる、とのことです。

具体的には、税務署に関係各所から集まってくる、申告書、財産債務調書、生命保険の支払調書、金売却の支払調書などをAI で分析したり、過去の相続税の申告漏れ事案から、不正や申告ミスの傾向を見つけAI 分析データとして活用し、分析結果に基づき、申告漏れリスクを、亡くなられた人ごとにスコア化し、スコアが高いと優先順位も高くなる、という事でした。
分析作業は国税庁が行い、最終的には各地の国税局や税務署が対象者を選定します。

 

雑感

所得税の調査実績を鑑みると、相続税調査でも効率よく税金を徴収されることになるのでしょう。
ただ、調査がより透明・公平になり、調査官が本当にあやしい案件調査に邁進できると、払うべき税金が正しく徴収されるでしょうから、それ自体は私たち国民にとって、とても良い事だと思います。

納税者側としては、元々払うべきである税金が漏れないように、生前から資産の整理に努めたり、ご家族とコミュニケーションを取ったり、元気でいるうちからエンディングノートを書いたりと、やれることはできる限りやっておきたいものです。

先日始まったドラマでは主人公の39歳の独身女性が終活を始めていましたが、私も終活の一環として、書きかけのエンディングノートを完成させようと思ったところです。
資産や負債を漏れなく記入できる以外にも、家族との素敵な思い出、介護の在り方、亡くなった後の事など、様々な事を記入できます。
相続準備以外にも利点がありますので皆さんもお書きになってはいかがでしょうか。

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