日本の認知症医療の第一人者であり、認知症の評価スケールの開発者としても知られる長谷川和夫先生は、ご自身が認知症と診断された後に「ボクはやっと認知症のことがわかった」と記しました。
このことは、認知症を本当に理解するためには医学的な知識や客観的な観察だけでは不十分であり、その人自身が体験する内面の世界に耳を傾けることが重要であると示唆しています。

そこで今回は、認知症当事者によって書かれた2冊の書籍を紹介します。

読めば当事者が「元気になる」

1冊目は丹野智文さんによる「認知症の私が、今を楽しく生きる理由」です。

39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された丹野さんは、認知症と診断された直後は「人生の終わり」を意識せざるをえず、引きこもった生活となっていました。

しかしその後、認知症当事者との出会いをきっかけに社会とつながる道を選び、職場の理解や支援もあって全国で講演活動を行い自らの体験を全国に発信し続けるようになっています。
本作では、認知症の不安を補う具体的な工夫や、認知症の人の近くにいる家族や支援者に伝えたいこと、さらには認知症当事者同士によるピアサポートの力について書かれており、絶望した診断直後からいかにして「今を楽しく生きる」ことができるようになっているのかが記されています。

「やさしく、たくましい」著者の想い

もう一冊は、山中しのぶさんによる「ひとりじゃないき」です。

山中さんは、今年一般社団法人日本認知症本人ワーキングループの代表理事となった方です。
山中さんも、認知症と診断された直後は受け入れられず落ち込んだ日々を過ごしていました。
変わるきっかけとなったのが丹野智文さんとの出会いであり、その後はご自身でデイサービスを立ち上げ、認知症になっても「ひとりじゃない」と思える居場所づくりを行なわれています。

これらの経緯について本書の中で詳しく記されており、明るい山中さんのお人柄が表れた一冊となっています。

一足先に認知症になった方達から学べること

スペースの都合で詳しい内容までお伝えすることはできませんが、樋口直美さんによる「誤作動する脳」「私の脳の中で起こったこと」や、さとうみきさんによる「認知症の私から、10代のあなたへ」、藤田和子さんによる「認知症になってからも自分らしく！」もそれぞれ自信を持ってお勧めします。