ファイナンシャルプランナー

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久保 逸郎

老後のお金の不安を解消する、ライフプランと資産運用&資産管理の専門家
「90歳まで安心のライフプラン」を合言葉にして、豊かな人生の実現に向けたライフプラン作りの支援を行っている。
独立から約15年にわたり相談業務を中心に実務派ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて年間100回近い講演や、マネー雑誌やコラム等の原稿執筆を行うなど幅広く活動中。

この執筆者の過去のコラム一覧

2025/11/10

『金(ゴールド)」が上がり続ける理由─ドルの信用低下と“資産の避難先”としての存在』

最近、ニュースなどで「金(ゴールド)の価格が史上最高値を更新」といった話題を目にする機会が増えています。
2025年10月には1トロイオンス=4,356ドルを突破し、年初から66%も上昇しました。
なぜこれほどまでに金が買われているのでしょうか。

ドルの信頼が揺らぎ、世界が“分散”を始めた

一つ目の理由は、アメリカの通貨=米ドルの信頼が少しずつ揺らいでいることです。
アメリカは長年にわたって巨額の財政赤字を抱え、国の借金が増え続けています。
その影響で「ドルの価値が下がるかもしれない」と考える国や投資家が増え、「ドルだけに頼るのは危険だ」という認識が広がっています。

その結果、各国の中央銀行は外貨準備の中に「金」を増やす動きを強めています。
ピクテ・ジャパンの調査によると、世界の中央銀行の外貨準備に占める金の割合は、2005年の約14%から、2025年には23.5%と2000年以降で最高水準になりました。

金が米ドルに次ぐ存在へ~外貨準備の新たな潮流

いまや金は、ドルに次ぐ“準備資産”としての地位を確立しているのです。

新興国が動かす「脱ドル」の流れ

とくにこの流れを加速させたのが、2022年のロシアによるウクライナ侵攻です。
経済制裁によってロシアが保有していたドル建て資産が凍結されたことは、他の国にとって「ドルを持っていると制裁を受けるリスクがある」という現実を突きつけました。
この出来事をきっかけに、中国やインド、ブラジルなどの新興国が“ドル離れ”を進め、金を外貨準備として買い増すようになりました。

金が米ドルに次ぐ存在へ~外貨準備の新たな潮流

こうした国々にとって、金は「どこの国にも属さない無国籍通貨」です。
特定の国の政策や政治情勢に左右されにくく、国際社会での独立性を保つための“保険”のような存在といえます。

インフレと通貨安が進む中、金の価値が再評価

もう一つの背景は、世界的なインフレと通貨の価値下落です。
コロナ禍以降、各国政府は景気を支えるために大規模な財政支出を行い、結果的にお金の量が増えました。
お金が増えすぎると価値が下がる~つまりインフレが進みやすくなります。
そんな時、金は発行量が限られているため、“価値が減りにくい資産”として注目されるのです。

国際社会の分断、地政学リスクの高まり、主要国の債務拡大といった要因が続く限り、金への長期的な需要は続くのではないでしょうか?

「安全資産」としての金の役割

金は株式や債券とは違った値動きをするため、資産を守るための“分散投資先”としても注目されています。
もちろん短期的には価格が上下することもありますが、ポートフォリオに少し組み入れておくことで、全体のリスクを抑える効果が期待できます。
つまり、「儲けるための資産」というよりも、“資産を守るための資産”というのが金の本質です。

終わりに~「ドルの次」に備える時代へ

これまで世界の経済は「ドル中心」で動いてきました。
しかし、国際秩序の変化や各国の思惑が交錯するなかで、金は“ドルの次”の存在として、再び脚光を浴びています。
不動産を持つように、「長く価値を持つものに資産を移す」という考え方が、世界的に広がっているのです。

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