(株)大洋不動産

相続マインズ福岡

小峰 裕子

平成元年より不動産業に従事。不動産におけるすべての判断はオーナーご家族の幸せや将来設計に多大な影響を及ぼすことを実感する。1999年にCFP®資格取得、2000年にNPO法人相続アドバイザー協議会養成講座1期生として研修を受け、相続に強い不動産の専門家として不動産管理運営の相談業務を中心に、セミナー講師や不動産相続のサポート業務を行っている。
大洋不動産常務取締役・相続マインズ福岡代表
CFP®(1級ファイナンシャルプラン技能士)
CPM®(米国公認不動産経営管理士)

この執筆者の過去のコラム一覧

2026/03/10

家賃値上げと賃貸借契約

独走状態?福岡の地価上昇率

早くも3月、まもなく公示地価のニュースが話題となることでしょう。
公示地価はその名の通り公的な価格のことで、1月1日時点の調査価格を毎年3月に国土交通省が発表します。
その変動は不動産関係に大きな影響を及ぼすため、しっかり目を通しておきたいですね。
ちなみに昨年、福岡は全国トップクラスの勢いを維持しました。

募集家賃上昇率は全国1位

福岡市の人口はこの10年で約12万人増加しました。(2015年約153万人→2025年165万人)
これ、地方都市が1つ増えたぐらいの規模感です。

なかでも10~20代の割合が政令指定としては最も高く、進学や就職を機に九州全域から若者が集まる状況が続いています。
その影響で昨年福岡市の募集家賃上昇率は全国1位、他に類を見ないスピードで上がりました。比較的値頃感のあった東区や西区にも波及する勢いです。

2026年は家賃見直しの好機!?

そこで急増しているのが、オーナー様からの「既存の入居者方々の家賃を値上げできないだろうか」というお声です。
修繕や設備交換など運営にかかる費用に加え、固定資産税・都市計画税といった税コストも6~7年で2倍近くに上昇しています。悲鳴を上げたくなるのも無理はありません。

特に2000年より以前の家賃はこの加速度的とも言えるインフレが反映されていないため、相場より割安な状態になっているケースが多く見られます。昨今はインフレ基調が定着しつつあり、家賃見直しの好機とみる専門家も多いようです。

容易ではない家賃値上げ

借地借家法第32条第1項では、経済事情の変動や近隣同種の建物と比較して家賃が不相当になった場合、事実を示した上で値上げを「請求」することを認めています。(借賃増減請求権)
ただ「請求」であるため借主は必ずしも応じる必要はなく、納得できない場合は拒否することができます。

更新の時に値上げは可能か?

賃貸借契約の形態は、9割以上が「普通借家契約」となっていますが、これには「自動更新型」と「合意更新型」の二通りの方式があります。

「自動更新型」とは、契約期間が満了しても特別な手続きを行わずそのまま契約が継続する仕組みをいいます。
一方の「合意更新型」は、オーナー様と借主が改めて契約内容を確認し、更新契約書に署名する手続きが必要になります。
この更新型であれば、家賃値上げに応じなければ「更新しない」ということが出来るのでしょうか?答えはNOです。
そもそも普通借家契約は、借主の生活を長く安定させることを目的とした賃貸契約の形式です。
前述の通り借主の合意が得られなければ、一方的な値上げは出来ないのです。
オーナー様にしてみれば、更新時は家賃値上げ請求のタイミング…的な効果でしょうか。

存在感増す定期借家契約

不動産情報サービスのアットホーム㈱が公表したデータによれば、首都圏では徐々に「定期借家契約」が増えつつあるようです。
定期借家契約とは、2000年3月から施行された新たな賃貸借契約の方式です。
あらかじめ契約期間を決め、期間が満了しても更新はありません。
ただし貸主借主の双方の合意があれば「再契約」は可能です。言い換えれば新たに提示した家賃に借主が合意しなければ、再契約せず契約は終わります。
そのため滞納や長期占有での家賃固定リスクを回避しやすく、東京23区の大型ファミリー向きマンションでは約3割が定期借家(アットホーム)と存在感を増しつつあります。

ただこの定期借家契約、日本ではそれほど普及してはいません。
なぜならオーナー様の都合で契約期間が定められるため、安心して長く住めないというデメリットがあるからです。
そのため家賃が割安に設定されたり、敷金にも制限が見られることがあります。
また大手法人は社内規定で不可として、定期借家契約をほぼ認めていません。

私たち大洋不動産では、全戸定期借家契約の賃貸マンションも数棟ありますが、その場合は立地やターゲット層など慎重に見極め、採用しているのが実情です。

非弁行為にご注意を

家賃の値上げ請求において留意すべきは、弁護士法72条に違反する非弁行為です。
刑事リスクを負う可能性ばかりか、社会的信用も失ってしまいます。

 

賃貸経営の収入源の大半を占める家賃。
それでも入居者の方々からすれば、家賃の家計に占める割合はやはり大きいものです。
直面するインフラの波ですが、貸主借主お互い様の関係が続くことが何よりの基本だと考えています。

※インフレ想定に中東情勢の影響は考慮していません。ご了承ください。

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