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久保 逸郎

老後のお金の不安を解消する、ライフプランと資産運用&資産管理の専門家
「90歳まで安心のライフプラン」を合言葉にして、豊かな人生の実現に向けたライフプラン作りの支援を行っている。
独立から約15年にわたり相談業務を中心に実務派ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて年間100回近い講演や、マネー雑誌やコラム等の原稿執筆を行うなど幅広く活動中。

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2026/05/10

米国株一極集中からの脱却―新興国市場の「目覚め」と2026年の投資戦略

はじめに:世界的な「資金の流れ」に異変あり

2020年代の前半、世界の株式市場はまさに「米国株一強」の時代でした。
GAFAMに代表される巨大IT企業やAIブームを背景に、多くの個人投資家がS&P500や全世界株式(オール・カントリー)を通じて米国市場に資金を投じてきたことでしょう。

しかし、2025年から2026年初頭にかけて、マーケットの深層では過去5年間見られなかった「主役の交代」が静かに、かつ決定的な形で進行しています。
その象徴が、新興国株式市場の躍進です。

3月末データが証明する「5年ぶりの逆転劇」

最新のパフォーマンス比較(2024年12月末を10,000として指数化)を見ると、その差は一目瞭然です。

<先進国株と新興国株のパフォーマンス比較 2025年1月~2026年3月>

2025年を通じて、新興国株(MSCI EM)は先進国株(MSCI Kokusai)を大きくアウトパフォームしました。
具体的には、2025年の年間騰落率で先進国株の+19.5%に対し、新興国株は+30.6%と、実に2020年以来5年ぶりに優劣が逆転したのです。

2026年に入り、イラン問題を受けて、3月にかけて一時的な調整局面も見られますが、新興国株が描くトレンドラインは依然として力強さを保っています。
これは単なる一時的なリバウンドではなく、構造的な「トレンド転換」の兆しと捉えるべきでしょう。

なぜ今、新興国なのか? 「三重苦」からの解放

これまで新興国市場は、①米国の高金利、②強いドル、③中国経済の不透明感という「三重苦」に喘いできました。
しかし、2025年以降、この状況に変化が生じています。

特に大きな影響を与えているのが「ドル安」への転換です。
米国の利下げ観測や財政赤字の拡大を背景にドルインデックスが下落したことで、以下の2つのメカニズムが働き始めました。

債務負担の軽減: ドル建てで借入を行う新興国企業にとって、ドル安は実質的な返済負担を減らし、企業収益を劇的に改善させます。

資金の還流: ドルの価値が目減りする局面では、投資資金は米国を飛び出し、より高い成長期待があり、かつ割安な新興国市場へと流れ込みます

2026年の展望:成長率の「格差」が投資妙味を生む

実体経済に目を向けると、先進国と新興国の勢いの差はさらに鮮明になります。
2026年の予測では、先進国の成長率が1%台後半に落ち着く一方、新興国経済全体では4%を超える成長が見込まれています。

その牽引役は、もはや資源輸出だけではありません。
サプライチェーン再編の恩恵を受けるASEAN諸国や、巨大な内需を武器とするインドの存在が際立っています。

インド経済の真実:2026年、日本を抜いて世界第4位へ

新興国投資の筆頭候補であるインドについて、国際通貨基金(IMF)は、2026年に名目GDPで日本を抜き、世界第4位に浮上すると予測しています。
2030年にはドイツをも抜き、世界第3位となることが確定的です。

一部では「生成AIの普及がインドのIT業務を奪う」という懸念もありますが、それは短絡的です。
インドの強みは、AIというツールを使いこなし、新たなサービスを構築できる高度なエンジニア層が世界で最も厚いことにあります。
人口ボーナスを背景とした「黄金期」は、向こう数十年続くと考えられます。

日本人に必要な「気づき」:米国株一極集中のリスクを回避せよ

現在、多くの日本人が抱えている最大のリスクは「米国への過度な依存」です。
米国株の予想PER(株価収益率)が20倍前後の非常に高い水準にあるのに対し、新興国株は依然として10倍~12倍程度と、圧倒的に割安な放置状態にあります。

「米国が風邪を引けば世界が風邪を引く」時代は終わりつつあります。
独自の成長サイクルを持つ新興国をポートフォリオに組み入れることは、もはや「サテライト(脇役)」ではなく、資産の安定性を高めるための「コア(主役)」の戦略となりつつあるのです。

 

投資において最も避けるべきは「皆が買っている時に買い、皆が忘れている時に見送ること」です。

・5年ぶりのトレンド転換が明確になった

・ドル安・米金利低下という追い風が吹いている

・インドに代表される構造的な高成長が続いている

これらの要因を考慮すれば、2026年の主役が新興国市場になる可能性は極めて高いと言えます。
新NISAやiDeCoでの積立設定を含め、ご自身のポートフォリオにこの力強い成長の果実を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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