蔵茂 暉大

ファイナンシャルプランナー
長野県で生まれる。
大学時代は東北地方で過ごし、旅行会社への就職を夢見て独学で国家資格である「旅行業務取扱主任者」を取得するが銀行員だった父親の影響もあり大手地方銀行に就職。
旅行業界の知識も生かし現職では全国に顧客を持つ。

この執筆者の過去のコラム一覧

2017/09/10

自由と自己責任

先日、イギリス ロンドンに行って来た。その時に感じたことをまずお話したいと思う。

実は今回のコラムの一部は、実際ロンドン滞在中に感じたことを書かせて頂いた。
自由であることと、それによって発生する自己責任というリスクというのがある。今回ロンドンの街を歩いていて気づいたことがある。ロンドンは初めての訪問ではなかったのだが、意識して歩いてみたので気づいたのかもしれない。

赤信号を無視して皆が渡ってしまうアジアの国々での光景は、皆さんも見たことがあるかもしれない。
まさかロンドンも、と思ったのだが、ロンドンも赤信号を渡ってしまう方々たくさんいる。観光客ではなく、地元ロンドンの方々である。

実は、イギリスの文化が濃く伝わっている香港でも、赤信号で歩行者が渡ってしまう事象はあとを絶たない。しかし香港のこの現象は、他のアジアの国とは意味が違う。
日本では、自動車と人は道路では人が優先というのは皆さんご存知かと思う。
香港では、自動車が優先であるために、信号がない場所で人と車が接触した場合には人に責任がおよぶケースは多い。
だから人々は、もし信号を赤信号で渡って車と接触した場合、当然、人が責任を負わされるが、そのリスクが人にあることを理解して赤信号を渡っているのだ。

恐らく香港に文化を伝えたイギリスも、同じ意識なのだろうと思う。

あらゆる場所で感じられる自己責任

同じ事例を、世界最大の国際線航空ターミナルであるヒースロー空港を見て感じた。
羽田空港国際線ターミナル、また成田空港では、出発時刻2時間以上前から出発のゲート番号が決まり、さらに出発時刻直前になっても搭乗客が現れない場合、航空会社の責任でその客を探す。
乗客が責任を取らず、航空会社任せになっている。時にはそれで出発が遅れてしまう場合もある。

一方、ロンドンヒースロー空港では、搭乗時刻迫って来ないと搭乗ゲート番号が発表されない。
搭乗客は出発直前まで、自分の飛行機が出発するゲートはどこなのか、自分自身でパネルを時々確認していなければならない。
しかも、その状況で搭乗口にたどり着かない客がいても、航空会社は呼び出しもしない。すべて自己責任なのだ。

もうひとつ、日本と違うところがある。ヒースロー空港でイギリスに入国する場合、到着する飛行機のエコノミークラスの乗客と、ファーストクラス・ビジネスクラスの乗客は、入国審査で並ぶ列が違う。より高いお金を払った乗客は、空港で並ばなくてよいということになる。

また、もうひとつ。これは日本にもあるが、ヒースロー空港から海外に出発する際、ファーストクラスの乗客または年間基準以上飛行機に頻繁に乗る乗客は、セキュリティチェックも優先通路を通ってチェックを受けられるため並ぶ必要がない
空港で待たされたくなかったら、より高いお金を払いなさいということなのだろう。

以前コラムでお話した通り、高いお金を払える=収入が高い。 収入=世の中への貢献度だから、結局この優先通路を通ることができる方は、世の中に貢献度が大きいからその見返りを得ているということになる。
これを不公平で悪いことと教えてしまうかもしれない一面が、日本の教育のにはあると思う。

資産形成 投資等の自己責任とは

自己責任についていろいろ考えて来たが、資産形成や投資等にも同じことが言えると思う。
まず一つお伝えしたいのは、よく日本人は貯蓄ばかりしていて、他の世界の国々はみんな株式等の投資の比率が日本とは比べ物にならないくらい大きいと言われている点だ。

実は、日本よりも金融先進地であるイギリス社会でも、年金、保険、債券、貯蓄等の安全資産で運用されている方が圧倒的に多い。
それどころか、株式よりもはるかにリスクの高い詐欺的投資商品にお金をいれてしまうケースは、日本人の方がかなり多い。
日本人は「貯蓄から投資へ」というキャッチフレーズに、安易に惑わされてはならないだろう。
日本人に必要なのは利回りに惑わされずに、本当の正しい情報を得る努力をし、自分自身の努力で得た情報によって運用先を決め 、決して人任せにしないということであろう。

 

明るい兆しもある。

実は最近、日本でも家族信託という制度が少しづつ普及してきた。これは、自分自身の資産の使い道を自分自身の責任において決めるという、とても素晴らしい制度だ。信託は投資信託と違うもので、欧米ではかなり普及している。
今回は信託について詳しく述べることはしないが、これから日本社会が人任せの社会から、きちんとした自己責任社会に変わって行くきっかけになるといいと思う。

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