2018/01/10
被相続人の預貯金に対する遺産分割協議
Q 先日、父が亡くなりました。
母は既に他界しており、相続人は長男の私と妹2人の合計3人です。父は遺言は残しておりませんでした。
父が所有していた自宅の土地建物は、父と同居していた長女が相続することに誰も異存はありませんでしたが、父には金融機関に対するかなりの預貯金があり、これをどのように分けるかで揉めています。
被相続人の預貯金は遺産分割協議の対象ではなく、遺産分割協議をしなくとも、法定相続分の割合で当然に分割されるのだと聞いたことがあります。
そうであれば、預貯金について兄妹間で揉めることもないと思うのですが、預貯金については遺産分割協議をしなくても当然に自分の相続分の割合の預金を受け取ることができると考えてよいのでしょうか。
1 相続法の原則
民法は、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」(民法第898条) と定めています。
そして、「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。」 (民法第899条) としています。つまり、被相続人が死亡した場合、被相続人の遺産は、原則として、各相続人が有する相続分の割合による共有となるわけです。
共有の状態では、 各相続人は全員一致の合意(「遺産分割協議」といいます。)が成立しない限り、その財産を処分することができませんので、遺産分割協議を行い、それぞれの相続財産がどの相続人に帰属するかを協議により決定することになります。
遺産分割は、共同相続人が遺産分割協議をして、遺産の分割内容を合意により決定するのが原則です(民法907条1項)。
2 預貯金債権の従来の判例の扱い
それでは、被相続人の遺産である預貯金についても、遺産分割協議により、各預金を誰が相続するかを決めるのでしょうか。
遺産分割協議は、分割の協議をしなければ分けることの出来ない財産について行われるものなのです。
例えば、自宅の土地・建物は、これを分割するといっても、どの部分を誰に取得させるかは、遺産の分割協議をしない限り、決めることができません。
これに対して、金銭債権のように、分割が可能な債権(これを「可分債権」といいます。) については、これまでの判例では、「相続財産中の可分債権は法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する」 (最高裁昭和29年4月8日判決)とされていました。
このため、銀行の普通預金や定期預金、郵便局の通常貯金は、当然分割とされており、遺産分割協議をすることなく、被相続人が死亡した時点で当然に各相続人に分割され相続されていると解されてきました。
3 預貯金債権に対する最高裁の判例変更
ところが、最高裁は平成28年12月19日に、これまでの預貯金は当然分割であるとする判例を変更し、預貯金債権等の可分債権は当然分割ではなく、遺産分割協議の対象財産であるとする新判断を示しました。
従って、現在では、遺産分割協議にあたり、預貯金は当然分割財産ではなくなり、必ず遺産分割協議をすることが必要となりました。
実務上の扱いが大きく異なる部分ですので、この点に注意をする必要があります。
Q 先日、父が亡くなりました。
母は既に他界しており、相続人は長男の私と妹2人の合計3人です。父は遺言は残しておりませんでした。
父が所有していた自宅の土地建物は、父と同居していた長女が相続することに誰も異存はありませんでしたが、父には金融機関に対するかなりの預貯金があり、これをどのように分けるかで揉めています。
被相続人の預貯金は遺産分割協議の対象ではなく、遺産分割協議をしなくとも、法定相続分の割合で当然に分割されるのだと聞いたことがあります。
そうであれば、預貯金について兄妹間で揉めることもないと思うのですが、預貯金については遺産分割協議をしなくても当然に自分の相続分の割合の預金を受け取ることができると考えてよいのでしょうか。
1 相続法の原則
民法は、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」(民法第898条) と定めています。
そして、「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。」 (民法第899条) としています。つまり、被相続人が死亡した場合、被相続人の遺産は、原則として、各相続人が有する相続分の割合による共有となるわけです。
共有の状態では、 各相続人は全員一致の合意(「遺産分割協議」といいます。)が成立しない限り、その財産を処分することができませんので、遺産分割協議を行い、それぞれの相続財産がどの相続人に帰属するかを協議により決定することになります。
遺産分割は、共同相続人が遺産分割協議をして、遺産の分割内容を合意により決定するのが原則です(民法907条1項)。
2 預貯金債権の従来の判例の扱い
それでは、被相続人の遺産である預貯金についても、遺産分割協議により、各預金を誰が相続するかを決めるのでしょうか。
遺産分割協議は、分割の協議をしなければ分けることの出来ない財産について行われるものなのです。
例えば、自宅の土地・建物は、これを分割するといっても、どの部分を誰に取得させるかは、遺産の分割協議をしない限り、決めることができません。
これに対して、金銭債権のように、分割が可能な債権(これを「可分債権」といいます。) については、これまでの判例では、「相続財産中の可分債権は法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する」 (最高裁昭和29年4月8日判決)とされていました。
このため、銀行の普通預金や定期預金、郵便局の通常貯金は、当然分割とされており、遺産分割協議をすることなく、被相続人が死亡した時点で当然に各相続人に分割され相続されていると解されてきました。
3 預貯金債権に対する最高裁の判例変更
ところが、最高裁は平成28年12月19日に、これまでの預貯金は当然分割であるとする判例を変更し、預貯金債権等の可分債権は当然分割ではなく、遺産分割協議の対象財産であるとする新判断を示しました。
従って、現在では、遺産分割協議にあたり、預貯金は当然分割財産ではなくなり、必ず遺産分割協議をすることが必要となりました。
実務上の扱いが大きく異なる部分ですので、この点に注意をする必要があります。
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