ファイナンシャルプランナー

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久保 逸郎

老後のお金の不安を解消する、ライフプランと資産運用&資産管理の専門家
「90歳まで安心のライフプラン」を合言葉にして、豊かな人生の実現に向けたライフプラン作りの支援を行っている。
独立から約15年にわたり相談業務を中心に実務派ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて年間100回近い講演や、マネー雑誌やコラム等の原稿執筆を行うなど幅広く活動中。

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2018/06/10

~スイス流~ 大切な資産を守る方法

老後のお金の不安解消アドバイザーの久保逸郎です。
日本銀行によるマイナス金利政策の影響で、日本国内では超低金利の状況が続いています。金融緩和の効果で追い風が吹いていた株式市場のほうも、今年2月以降不安定な状況が続いており、ピークアウトの様相が窺えます。
その一方で、インフレ率(消費者物価指数)は今年に入って世界的に上昇基調となっており、大切なお金の実質的な資産価値を守ることが大変難しくなりつつあります。

そこで今回は200年以上に渡って富裕層の資産管理を行ってきたスイスのプライベートバンクの資産保全の考え方をご紹介します。

グローバルの観点で資産を保全する

私達日本人が日頃から使っている通貨は円です。
超低金利の環境とはいえ預金金利はマイナスにはなっていませんから、預貯金にお金を置いておけば、基本的にそのお金(額面)が減ることはありません。
しかし、その円も世界的な視点で考えれば為替の影響を受けています。

仮に現在1米ドル110円すると、為替が円高に動いて1米ドル100円になれば、世界的にはその円の価値が10%上がったことになります。その反対に為替が円安の方向に動いて、1米ドル120円なった場合、その価値が約8%下がってしまいます。

日本の食料自給率はカロリーベースで約40%しかありません。エネルギーや資源に関しては、水以外の資源はほぼ全て輸入に頼っていると言っても過言ではありません。どうしても輸入に頼らなければいけないのが日本なので、為替が円安に振れてしまった場合、海外での食料やエネルギー・資源の購入にはより多くお金を払わないといけないことになります。

これはほんの一例ですが、同じように世界経済は結びついているので、大切なお金の価値を守るためにも、グローバルの観点は欠かすことができません。

グローバル分散投資を行う

下記の3つは投資を行う場合の3原則です。

①人口が伸びている地域に投資を行う

経済の規模を表す指標にGDP(国内総生産)があります。これは国内で新しく生産された商品やサービスの付加価値の総計を示していますが、人口×生産性の合計です。着実に人口が増えていく国のほうが、このGDPが伸びていきやすいものです。
この観点で考えると、これから世界的に例の無い急激な人口減少社会を迎える日本は厳しくなることが予想されますし、そのために政府が生産性を上げるための「働き方改革」に本腰を入れて取り組んでいます。
「働き方改革」は労働者を守ることを目的としたものではなく、労働生産性を上げることを目的としていることを、あえて付け加えておきたいと思います。

②イノベーションが起きている分野に投資を行う

イノベーションとは革新のことで、生産技術の変化や新しい市場や新製品の開発、新資源の獲得などのことをいいます。このイノベーションにより投資需要や消費需要が刺激され,経済の新たな好況局面が作り出されるため、イノベーションは経済発展の最も主導的な要因であるとされています。

90年代半ばのウインドウズ95の登場、2007年のiphone誕生以降のスマートフォンの爆発的普及はイノベーションの代表例で、最近のAI(人工知能)、それに電気や水素で動く自動車なども新しくイノベーションが起きている分野といえるでしょう。

③金融の投入量が増加している地域に投資を行う

中央銀行が行う金融政策の手段としては、主に金利の上げ下げと、市場に送り込む資金量調整の二つの手段がありますが、市場に送り込む資金量が増えている地域は株式や不動産などに投資を行うリスクマネーが増えるため、株価や資産価格の上昇を招きやすく、投資先として魅力があります。
そのためプライベートバンクを含む機関投資家は、それぞれの地域の中央銀行の政策に常に目を光らせています。

足元の日本の状況はというと、日本銀行は毎年80兆円の資金を市場に送り込む政策を止めたとは認めてないものの、実際の資金の投入量は減りつつあります。

割安な資産に投資を行う

バリュエーションとは投資の価値計算や事業の経済性評価のことを指します。

株価純資産倍率(PBR)や株価収益率(PER)、配当利回りなどを見ながら企業の利益・資産などの企業価値評価を行い、本来の企業価値と現在の株価を比較して、株価が相対的に割安か割高かを判断して、割安なタイミングで投資を行います。
このバリュエーションによる投資先の選定にはさまざまな情報を評価する専門知識や経験を必要としますので、一般の個人投資家の場合は「資産価格が高いタイミングでは購入しない」ことを大事にしていただければ大丈夫です。
とくに日本人の場合は、海外の投資家とは反対で、高値のタイミングで投資を行ってしまうことが多い傾向にありますので注意をしてください。

このように「グローバルの観点で資産を保全する」「グローバル分散投資を行う」「割安な資産に投資を行う」ことは、世界の富裕層が資産を預けているスイスのプライベートバンクの資産保全の鉄則です。
世界経済のピークアウトの時期を迎え、資産運用が難しくなってきた時期だからこそ、このような基本スタンスに立ち返っていただきたいと思います。

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