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久保 逸郎

老後のお金の不安を解消する、ライフプランと資産運用&資産管理の専門家
「90歳まで安心のライフプラン」を合言葉にして、豊かな人生の実現に向けたライフプラン作りの支援を行っている。
独立から約15年にわたり相談業務を中心に実務派ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて年間100回近い講演や、マネー雑誌やコラム等の原稿執筆を行うなど幅広く活動中。

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2018/08/10

長生きリスクに備えるには、トンチン年金よりも公的年金の繰り下げ需給

長寿化と公的年金

超高齢化社会では90歳を超えて生きることも珍しくなっています。
今後さらに長寿化が進んでいくことも予想されているおり、長生きに備えて老後資金を準備しておきたいと考える人が年々増えています。
このように長生きした際の老後資金を準備したい場合、トンチン年金などの保険商品ではなく、まずは国民年金や厚生年金の繰下げ受給を活用して、終身年金である公的年金の受給額を増やすことから考えたいものです。

国民年金や厚生年金の繰下げ受給とは、年金を65歳から受け取らないで、66歳から70歳までの間で申し出た時から年金を繰下げて請求できる制度です。
受給開始は66歳以降1ヶ月単位で繰り下げることができ、「繰下げ期間の月数×0.7%」の増額率で年金が増額されます。
つまり1年繰下げることで8.4%、5年の繰り下げで42%も増額されるのです。
そのため仮に公的年金の受給を5年遅らせたとても、その分は約12年で元が取れることになります。

保険料(掛金)の取り扱いに着目すると

最近は生存保険(トンチン年金)なども話題になっていますが、例えば日本生命のグランエイジの場合、50歳で加入して、70歳で年金受け取りを始めた場合に男性は90歳まで生きないと元は取れません。ちなみに男性で90歳まで生きる人は約4人に1人しかいません。
とくに女性の場合は95歳まで生きていないと元は取れない計算になるので、たしかに平均寿命を大きく超えて長生きをすることには備えられる商品ではあるとはいえ、収益性の面では公的年金の繰り下げのほうの魅力が大きいといえるのではないでしょうか。

また、トンチン年金は個人年金保険控除や一般生命保険料控除を利用することができるものの、個人型確定拠出年金のように支払った掛金が全額所得控除の対象になるわけでもありません。これはトンチン年金に限ったことではありませんが、昨今の超低金利の状況から貯蓄性の保険商品には全く魅力を感じません。
個人的にもリーマンショック以降、例えば退職金の運用手段や、老後に向けた資産形成の手段として、外貨建ての保険商品を含めて、保険商品を相談者に勧めたことはありません。

退職金運用と公的年金で長生きに備える

仮に60歳で退職金を受け取った場合、その資金を投資信託などで長生きに備えて運用してもいいと思います。
その場合は、20年以上の投資期間が取れることが考えられるため、世界経済の成長の恩恵を得やすい米国株式や新興国株式のように、今後の成長が期待できる資産をポートフォリオに組み入れたほうがよいと思いますが、その場合もできるだけ特定の国や業種等に集中しているファンドではなく、投資対象が分散されているファンドを選ぶようにしましょう。
今後のマーケット環境としては「景気後退局面入り」「インフレの継続」に陥る可能性が高まっているため、一度に多くのお金を投資するのではなく、投資タイミングを分散ながら時間をかけて投資額を増やしていくことも重要なポイントになります。
定時定額購入による積立投資を活用するとよいかもしれませんね。

このように長生きリスクに対する備えを考えられる場合には、まずは退職金や確定拠出年金などの資金から70歳までの生活費を捻出して、国民年金や厚生年金の繰下げ受給を行うことを基本線に考えましょう。
とくに公的年金の繰下げ受給には男女による差は設けられていないため、寿命が長い女性にとってはとくに有利といえます。

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