(株)大洋不動産

相続マインズ福岡

小峰 裕子

平成元年より不動産業に従事。不動産におけるすべての判断はオーナーご家族の幸せや将来設計に多大な影響を及ぼすことを実感する。1999年にCFP®資格取得、2000年にNPO法人相続アドバイザー協議会養成講座1期生として研修を受け、相続に強い不動産の専門家として不動産管理運営の相談業務を中心に、セミナー講師や不動産相続のサポート業務を行っている。
大洋不動産常務取締役・相続マインズ福岡代表
CFP®(1級ファイナンシャルプラン技能士)
CPM®(米国公認不動産経営管理士)

この執筆者の過去のコラム一覧

2018/08/10

空室対策とプラスの循環の作り方

「満室になったら考えるよ」。賃貸不動産のオーナーが良く口にする言葉です。
なぜでしょう。
入るより先に、手元のお金が出ていくからです。
人は得することより、まず損をしないことに敏感であるように思います。入居者が決まるかどうか分からない時点で設備を良くしたりすることは、自分にとって不利なことのように感じてしまうのです。
本当に不利なことなのでしょうか。ある事例をご紹介します。

「満室になったら考える」が、もたらしたこと

埼玉県にお住まいの林正昭さんは、数年前に福岡市内のアパートを相続しました。
築25年の鉄骨2階建て、8世帯の2DK賃貸アパートです。相続したときから空いているお部屋も含めて3戸が空室、もう2年以上そのままです。
知り合いの建築事務所を通じてご相談があり、早速カギを郵送してもらってお部屋を見せて頂きました。
内装工事済みと聞いていましたが、埃っぽくて何となく臭いもこもっています。不思議なもので、長期空室を抱えた物件はエントランスにチラシが散らかっていたり雑然としていたりしますが、こちらもそうでした。
林さんはとりあえず家賃が入っているのでうっかりしていたようですが、偶然にも塗装工事をお願いした建築事務所から写真付きの報告書を受け取りました。それで、久しぶりに目にしたアパートの惨状に気がついたというわけです。

まず建築士を伴い、建物全体の調査をしました。
おそらく相続前でしょう。屋根の防水工事など、主要な部分はメンテナンスが施されていました。
ただ数年後には再度大規模修繕の必要があると思われ、今のうちに収益の改善が必要であること、さらに空室が出てしまうと空室率が50%を割る緊急事態に陥ってしまう可能性を指摘させてもらいました。
場所は主要駅から少し離れるものの、天神~博多双方徒歩圏内の古い町並みが残るエリアです。
単なる原状回復工事ではなく、家賃アップの可能性も視野に少し思い切ったリフォームの提案をさせて頂くことにしました。
水回りを新しくするだけでもかなり印象が変わります。
建築会社には工事着手を3室同時にすることを条件に、1室約30万円で見積もりを出してもらいました。

家賃収入と預金金利

合計90万円の投資です。管理手数料や光熱費などの経費を引いた純収入が、年間250万円ほどの林さんにとって、不安が先に立つのも無理はありません。
そこで次のように不動産の価値について話をさせて頂きました。

純収入÷利回り=不動産の価値

土地をお持ちの地主オーナーにはわかりにくいかもしれません。
利回りというのは、銀行の預金と同じと考えてみてください。
今、300万円を定期すると預金金利は0.01%ですが、バブルの頃のは6%、郵便局の定額貯金は8%もありました。今では信じられませんが…。
つまり、林さんのアパートを購入して8%の利回りを稼ぎたい人が現れたとすると

250万円÷8%=3,125万円

3,125万円で購入した人は、林さんのアパートに3,125万円投資したことによって8%の利回りを得られることになります。

不動産の価値を落とさない

例えば林さんが90万円投資したことによって、満室になったとします。
家賃は1室5万円で入居に至ったと考えますと、家賃収入は年間180万円増えて430万円です。すると不動産の価値はどうでしょうか。

430万円÷8%=5,375万円

90万円の投資が2,250万円もの価値の増加につながるのです。
家賃は5,000円アップを目論んでいましたが、実際は2,000円の値上げに止まりました。
それでも90万円という投資の結果が何を招くのか、そのことに気がついた林さんが「やりましょう!小峰さん!」と即答されたのは言うまでもありません。
ちなみに敷金ゼロ物件でしたが、広告料を捻出するため1ヶ月に改めて頂きました。
収入は増やし支出を減らすという基本原則には忠実に、その分を良い支出、つまり「投資」に回すというプラスの循環を味方に付けることが大切です。

新築の時はフルスペックだったあなたの賃貸不動産も、時を経て社会的に要求される水準からやがて見劣りするようになります。
設計企画段階からその時のための戦略を考えておくだけでなく、投資という選択を退けないでいて欲しいと思います。
ただしその不動産の立地と空室率にはご注意を。
すでに緊急事態に陥ってしまっているようなら、投資は火に油。家賃を下げてでも、まずキャッシュフローを高めるべきです。

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